国の事業の民間委託が拡大しているが、発注先が特定の先に偏っており、競争が働いていないという記事。デロイトトーマツもやり玉にあがっています。
「国の事業の民間委託先選びで競争が働かなくなってきた。日本経済新聞の調べでは、新型コロナウイルス対策を多く担った大手コンサルティング会社と広告代理店への2020年度の委託比率は21%と、前年度から10ポイント上昇。金額は4倍強となった。入札に1事業者しか応じない例が目立ち、単価が高い特定企業への依存が強まっている。」
日経が委託費のデータなどを調べたそうです。
「日経新聞は委託費の公表データや入札資料を分析した。コロナ禍で大型事業が続いた20年度の委託総額は5809億円と19年度の2.1倍に達していた。持続化給付金など巨額事業が押し上げた。本来は多くの企業が受注を競えば費用は抑制できるが実態は異なる。」
コロナ調査研究事業の事務局業務がすべて三菱総合研究所に委ねられた例などを挙げています。
発注先ではコンサルと広告会社への発注が増えているそうです。
「大型事業で存在感を高めているのがコンサルと広告代理店だ。その大手13企業グループへの委託を集計すると、20年度は前年度比4.2倍の計1234億円。委託全体の2割を超え、独立行政法人など公的機関と肩を並べた。
しかも1者応札が目立つ。20年度の一般競争入札や企画競争による委託の契約額上位10件を見ると、1者応札は4つ。先に見た三菱総研の案件、デロイトトーマツが担ったコロナの一時支援金事業が含まれる。デロイトトーマツの20年度の受託額は545億円と前年度の29倍になった。」
国の側にノウハウがないなどの問題点を指摘しています。人件費の単価も高いようです。
「ある中小コンサル代表は「大手の単価は中小の3倍程度。一等地に事務所がある要因も大きい」と話す。大型事業を増やし、大手に頼った結果、国費投入が膨らんでいる。単価について、デロイトトーマツや三菱総研など9社は「国の単価算定マニュアルに沿っている」などと答えた。」
「調達分野にもっと人材を投入すべき」という元官僚の学者のコメントなどもあります。
多重下請けの問題もあります。
「事業規模が大きいほど、多重の下請け構造が生まれやすい問題もある。持続化給付金の最初の契約769億円分は一般社団法人が受けたが、97%分を電通に再委託していたことが批判を浴びた。電通は全国で延べ500カ所以上に開設した申請サポート会場の運営などを外注。9次下請けまで約560事業者が関与していた。」
英国でも以前はコンサル会社がはびこっていたそうです。
「特定の業界や企業への依存を強める日本の現状は、先んじて民間活用を進めた英国もたどった道だ。学習院大の藤田由紀子教授(行政学)は「コンサル会社が多用され、高額な報酬が支払われた時期もあった」と指摘する。こうした反省から10年代に入って調達部門に専門人材を配置する取り組みが始まった。藤田教授は「日本も民間委託の活用状況をしっかり検証すべきだ」と強調する。」
デロイトトーマツなどはコストに応じた請求をしているだけで暴利をむさぼっているわけではないのでしょうが(ただし決算を公開していないので実態不明)、国側の体制が整っておらず、ビッグ4のノウハウが必要な作業と、そうではないローカル企業でもできそうな作業を切り分けて発注するなどができないのでしょう。
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