会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

シャープ最終赤字2223億円 15年3月期、設備の減損かさむ(日経より)

シャープ最終赤字2223億円 15年3月期、設備の減損かさむ

シャープの2015年3月期の連結決算で、最終損益が2223億円の赤字となったという記事。

「液晶の主力生産拠点である亀山工場(三重県亀山市)などの設備の減損処理に加え、太陽電池の原料関連の市況悪化による評価損などの計上で2期ぶりの赤字に転落。」

この記事で「太陽電池の原料関連の市況悪化による評価損」というのはこちらの引当金のことでしょう。

買付契約評価引当金の計上に関するお知らせ(PDFファイル)

「エネルギーソリューション事業において、ソーラーパネルの原材料(ポリシリコン)に係る長期購入契約を締結しております。

今般、当該事業の収益性が低下したことから、契約上の購入価格と時価との差額について、54,655 百万円を売上原価処理し、買付契約評価引当金に計上いたしました。」

決算短信の会計方針の注記では、2015年3月期本決算から引当金を計上する理由らしきものが書かれています。

「・・・海外メーカーの参入による競争の激化、電力買取価格の低下に伴うソーラーパネルの販売価格の下落、及び大幅な為替変動の影響等の事業環境の悪化を受けて、今後の採算確保が困難な状況となりました。このため、当連結会計年度からポリシリコンの長期購入契約につき、買付契約評価引当金を計上しております。」

引当金新設の理由としては相当不十分だと思います。本当に3Q決算後に「今後の採算確保が困難な状況」になったのでしょうか。また、そもそも、該当する製品が採算割れにならなければ、不利な購入契約でも引当する必要はないのでしょうか。

日本基準ではこういう不利な購入契約に対する引当金の計上は必須ではないが、より適切な会計処理方法として新設したと考えれば、会計方針の変更になります。

この原材料の契約については以前当サイトでもふれました。

当サイトの関連記事

平成26年度(第121期)決算報告書(PDFファイル)

シャープは2,223億円の赤字から立ち直れるか? - 2014年度決算と中期経営計画の詳細(マイナビ)

優先株発行と減資については・・・

「財務基盤の再構築では、総額2,250億円の優先株発行により、資本増強を図る。みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行からそれぞれ1,000億円ずつの合計2,000億円の優先株出資を得るほか、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)から250億円の優先株出資を得る。これらで得た資金は、構造改革に伴い発生した資本の毀損を補うため、借入金の返済のほか、成長投資として液晶、健康・環境、ビジネスソリューション事業に充当する予定だという。なお、今回の優先株は現金での償還が可能な設計であり、「株式の希薄化に最大限配慮している」という。

さらに、資本金を5億円まで減資する。「今後の機動的な資本政策に備えるため」と説明する一方、「減資はあくまでも会計上の処理。資本金と剰余金の間で振り替え処理をしたものであり、減資そのもので1株あたりの純資産額が目減りしたり、企業価値が損なわれることはない」と説明した。」

第三者割当による種類株式の発行、定款の一部変更、資本金及び資本準備金の額の減少並びに剰余金の処分に関するお知らせ(PDFファイル)

みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に総額 200,000 百万円(A種種類株式)、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第壱号投資事業有限責任組合(JIS)総額 25,000 百万円(B種種類株式)を発行します。銀行引き受け分は、まるまる両銀行からの借入金を返済するのに使われ、JIS引き受け分は設備投資などに使われます。報道ではDESをやるといわれていましたが、形式的には、優先株発行と借入金返済は別取引となるのでしょう。

優先配当率は、A種が日本円TIBOR(6か月物)に 2.5%を加算した数値、B種が「剰余金の配当の基準日が平成 30 年3月末日以前に終了する事業年度に属する場合は 7.0%とし、平成 30 年4月1日以降に開始する事業年度に属する場合は 8.0%」です。(この条件の差は、A種の時価が発行価額を大幅に下回っていることを示しているのでは・・・)

この配当用の剰余金を確保するためにも、減資は必要なのでしょう。

シャープ、5億円に減資=5千人削減、金融支援仰ぐ-赤字2223億円・債務超過に(時事)

「単体決算では59億円の債務超過に陥った。」

決算短信の「継続企業の前提に関する重要事象等」では・・・

「・・・連結純資産が著しく減少し、シンジケートローン契約の財務制限条項に抵触する水準となりました。また、当該シンジケートローン契約の契約期限も平成 28 年3月末となっています。こうした状況により、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。」

「継続企業の前提に関する注記」は該当なしです。
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