会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

日本電解株式会社 今年初の上場企業倒産(帝国データバンクより)

日本電解株式会社 今年初の上場企業倒産

日本電解(東証グロース)が、11月27日に民事再生法の適用を申請したという記事。

2020年に子会社化した米国子会社の赤字が原因だったようです。

2022年3月期には年売上高約152億8100万円を計上していたそうですが...

「しかし、世界的な半導体不足や米国インフレ抑止法施行による国内製造バッテリーの輸出減少、スマートフォン需要の減退などから上述の米国子会社の赤字が常態化。また、輸出セル用銅箔の需要低迷や整流器故障による回路基板箔の販売減などに加え、銅価格の急騰による収益悪化により事業環境は悪化していた。その後、収益改善に尽力したが米国子会社での収益改善は叶わず、今年11月27日に同社の解散及び清算を決議。これに対する貸付金等の回収が困難となる見込みになったことから、今回の措置となった。」

負債は約147億6100万円です。

11月14日には半期報告書を提出済みでした(監査人は太陽)。

半期報告書(PDFファイル)

継続企業の注記がなされています。

(同社半期報告書より)

そのほか、この注記でふれている米国新工場と関係があるのかもしれませんが、貸借対照表では70億円超の建設仮勘定が気になります(3月末では100億円近く計上)。PLは50億円の赤字です。

民事再生申立てのプレスリリース。

民事再生手続開始の申立て並びに海外子会社の解散及び清算に関するお知らせ(2024 年 11 月 27 日)(PDFファイル)

「当社は、創業以来、一貫して電解銅箔の製造及び販売を行っており、電気自動車市場の拡大や 2021 年3月 31 日の米国子会社(DAI)の取得に伴い、2022 年3月期までは売上・利益を伸ばし、2022 年3月期には、連結で売上高約 206 億円、営業利益約 10 億円を計上するに至りました。

しかしながら、世界的な半導体不足米国インフレ抑制法(IRA 法)施行による国内製造バッテリーの輸出減少、スマートフォン需要の減退、新型コロナウイルスの影響や競争環境の激化に伴う 2021 年3月期以降の DAI の赤字の常態化等により、2023 年3月期における連結売上高は約 170 億円にまで減少し、また、米国オーガスタ工場の建設費用等の負担等もあり、2023 年3月期には約 18 億円の連結経常損失(当社単体:約4億円、DAI:約 13 億円)を計上するに至りました。

また、2024 年3月期においても、引き続き、IRA 法の影響による輸出セル用銅箔の需要低迷や DAI における整流器故障による回路基板箔の販売減もあり、連結売上高は約 166 億円、連結経常損失は約 13 億円(当社単体:約3億円、DAI:約 12 億円)となり、2期連続で経常赤字を計上するに至りました。

2025 年3月期においても、中間期で連結売上高は約 88 億円(前年同期比 2.7%増)となったものの、販売数量減や銅価格急騰による損益悪化、オーガスタ工場関連の減損損失等により、連結経常損失約 15 億円、連結純損失約 50 億円を計上することとなりました(通期の業績予想では、連結売上高は 190 億円、連結経常損失は約 17 億円、連結純損失約 53 億円となる見込みです。)。

さらに、2023 年3月期以降の業績悪化に加え、当社の負担において、DAI のカムデン工場の製造設備改造や米国におけるオーガスタ工場製箔設備に係る投資を進めたこともあり、当社のキャッシュフローも徐々に悪化することとなりました。

(以下省略)」

やはりこの米国子会社が足を引っ張ったようです(しかも、直近まで投資を続けていた?)

この解散を決めた米国子会社の状況は...

(補足)

倒産・注目企業情報 日本電解(株)(東京商工リサーチ)

1958(昭和33)年に大手メーカー3社の共同出資により設立された旧・日本電解(株)が前身。車載電池向け電解銅箔製造を行い、2021年6月に東証マザーズ(現・東証グロース)に上場した。電気自動車市場の拡大や2021年3月の米国子会社取得に伴い、2022年3月期には連結売上高約206億円、営業利益約10億円をあげていた。」

「この間、2024年1月に台湾の銅箔メーカーと資本業務提携契約を締結し、新株予約権発行による資金調達を目指していた。また、2024年6月、現筆頭株主と資本業務提携契約を締結し、同社から約10億円の出資を受けていた。

その後もスポンサー探索を進めたが、具体的な支援先はみつからなかった。こうしたなか、11月27日に米国子会社の解散及び清算を決議。解散によって貸付金の大部分が回収困難となることが見込まれ、多額の特別損失の追加計上から簿価債務超過に陥ることが予定され、自力再建を断念し今回の措置となった。」

台湾メーカーとの資本業務提携は、上記プレスリリースによれば、新株予約権の行使がなされず、資金調達できなかったそうです。また、約10億円の出資も、出資者に対する長納期設備代金の支払にあてられ、負債の削減には役だったものの、資金繰りにすぐに寄与するものではなかったようです。

2024年3月期有報で会社の沿革を見てみると...

以前は、日立化成工業の関係会社だったようです。2016年にMSD企業投資(帝国データバンクの記事によれば、三井物産、三井住友銀行、日本政策投資銀行が出資)の子会社となり、その後吸収合併されます。大企業の関係会社整理の一環で、現在の姿になったということでしょうか。5年程度で上場を果たしたわけですから、成功例のはずだったのでしょうが...

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事