「所有権がない」判決に惑わされるな
「ビットコインは所有権の対象とならない」という東京地裁の判決を取り上げた記事(やや宣伝記事的)。判決は「ビットコインは民法上の『有体物』に当たらないという判断をしただけ」とのことです。
「法律上、所有権の対象となる「物」とは、固体、液体、気体など、空間の一部を占める有形的な存在である「有体物」をいう。と規定されている(民法85条)。つまり、物理的な形がなければならない。ビットコインは、インターネット上で取引するデジタルの仮想通貨で、「ブロックチェーン」という取引履歴がすべて記録されるシステムと、暗号鍵を用いる仕組みによって構成されているため、データとしてしか存在しない。
ビット「コイン」という名前ではあるが、純金のコインとはまったく異なり、「有体物」の定義に当てはまらないことは素人目線で考えても明らか。つまり、ビットコインに所有権が認められる可能性は、最初から極めて乏しかったといえる。」
原告が「所有権」という主張をしたのは、「一般債権者の立場では、最終的に残った財産について債権額に応じて平等に分配されることが原則で、事実上回収が不可能となる」「そこで、ほかの債権者との関係が問題とならない、排他的な支配権である所有権を主張することで、破産手続の枠組みから逃れようとした」という事情があるからだそうです。ビットコインの財産としての価値が否定されたわけではありません。
「今回、思わぬことから裁判所がビットコインの性質論争に巻き込まれることになったが、「ビットコインに所有権は認められない」とした今回の判決は、ビットコインが財産として無価値であるとか、法的に一切保護されないと判断したものではないことは確かだ。」
この記事では、ビットコインの取引所側が、金融商品取引業者などを対象とする規制を参考に、自主的にコンプライアンス体制を整備すべきといっています。
「銀行であれば、事業者が破産した場合でも、預金保険制度などによってユーザーを公的に保護する仕組みがあるが、ビットコインは2009年に初めて現れたもので歴史が浅く、今のところ特別に規律する法律は存在しない。問題が発生した時は、今回のように一般的な民事法の枠組みにしたがって処理されることになるため、ユーザーとしては思わぬリスクを負う可能性が出てくる。
藤武弁護士は「ビットコイン事業で市場から信頼され、ユーザーに安心感を与えるためには、規制する法律がはっきりしない段階でも、コンプライアンス対応を意識したビジネスモデル構築を行うことが重要になる」と言う。
具体的には、取引所を営むのであれば、「金融商品取引法や商品先物取引法で取引所に課されている規制を確認し、東証などの市場の取引所がどのような自主規制を整備しているのかを参考にする必要がある」(同)。
証券会社のような仲介業を行うのであれば、「金融商品取引法で金融商品取引業者にどのような規制が課されているかを見るべき」(同)であり、「決済のプラットフォームを作り、それが資金決済法上の『資金移動業』に似ているならば、その規制を参考にして、事業資金とは分離された口座に、顧客から預かった資金を全額デポジットすることも考えなければならない」(同)。」
「価値記録の健全なビジネス環境と利用者保護体制の整備を進めることを目的」とした日本価値記録事業者協会(Japan Authority of Digital Assets)という業界団体も昨年設立されているそうです。
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