細野 康弘

経営財務の1月14日号に「小説 経営財務」の書評が出ていました。評者は、会計士協会の元役員でもある伊藤大義会計士です。
書評のかたちを借りて、評者の考え方が強く出ています。以下、その一部を紹介します。
ABC銀行消滅について
「主人公は、当局が手段を選ばず、ある意志を成就させようと、国益をないがしろにする状況を見て、その渦中において監査人がまったく無力であることを実感する様子が書かれている。」
「過去のメガバンクに対する金融検査が過酷に過ぎたことは、翌年度以降において、各行とも多額な貸倒引当金戻り益が発生したことでも推察できると思われる。」
月光証券会計不正スキャンダルについて
「・・・監査人として「制度会計のルール」に従わざるを得なかったにもかかわらず、会計ルールの内容を理解していない一部の監督官庁やマスコミ等に糾弾されて、それがセントラル監査法人解散のトリガーのひとつになったであろうことが書かれている。」
「ある事象について採用すべき会計処理は、まず、経営執行部が企業にとって最適なものを選択し、監査役等の内部機関がその当否を検証・承認する仕組みであるのにもかかわらず、マスコミ等における責任追及は、監査人だけに偏重する傾向が強すぎると思われる。」
「複雑な会計処理等の検討に際し、企業から会計基準の細かな要件等について質問を受け、理解の正確性を期すため意見交換することが多い。しかし、当該会計処理が後日問題となった場合、監査人が共犯であるが如き指摘を受けるケースがあるが、両者は峻別すべき問題である。」
「・・・今後は、小説で述べられた如き不幸な出来事が二度と惹起しないことを願うとともに、公共の利益擁護の視点から、マスコミ報道を含め、監督官庁等の関係者各位の熟慮の上にも熟慮された極めて慎重な対応と配慮を切に願うものである。」