ビジョナリーホールディングス(東証スタンダード)が、2022年5月〜23年1月期の四半期報告書について、PwCあらた有限責任監査法人から結論不表明のレビュー報告書を受け取ったという記事。
「第三者委員会を設立し星崎尚彦前社長の利益相反行為を調査したが、影響額などを示す詳細情報を得られていない。
第三者委は前社長の利益相反行為について業務委託先など25社を調査。星崎氏が一部の取引先で「意思決定機関を支配している」とし、ビジョナリーが一部取引先から不合理な賃料増額や業務実態が確認できない費用を請求されている可能性を指摘した。
ただビジョナリーは取引先から必要な情報を入手できず、13日発表した決算短信で「重要な虚偽記載が存在する可能性がある」と記載。PwCあらたは「未発見の虚偽表示があるとすれば影響は広範囲である。結論を表明する十分な証拠がなく、重要な修正が必要か判断できなかった」としている。」
会社自体が、重要な虚偽記載の存在の可能性を認めている以上、監査人が意見(四半期なので正確には「結論」)を表明するのは難しいのでしょう。
有報等の訂正報告書を提出しているので、まず、そのプレスリリースを見てみます。
過年度の有価証券報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ(ビジョナリーホールディングス)(PDFファイル)
連結範囲・関連当事者の範囲や、疑義のある取引の会計処理・注記を訂正した場合の影響を確定できないということで、何も訂正していないようです。
「3.過年度の業績等への影響
今回の訂正は、2023 年5月 31 日付にて受領した第三者委員会による調査報告書において指摘を受けた事項につき、当社が訂正が必要と判断したものであります。過年度における経営成績及び財政状態等に影響を与えるものではありません。また、この訂正による過年度の決算短信の訂正はありません。
第三者委員会が調査対象とした会社については一部の会社を除き、当社前代表取締役の星﨑尚彦氏等により意思決定機関を支配していることが伺われ、連結子会社として取り扱うことが適切であると推測できるものの、星﨑氏及び第三者委員会が調査対象とした会社の代理人弁護士より、刑事訴追及び民事訴追の免責、開示資料の使用方法の制限や資料開示方法の限定(原本の閲覧のみ、複製不可)などの条件を付され、当社としてはこれら条件を到底受け入れることは出来ず、結果、会計情報等の提供を受けられていないことから、当社の連結の範囲の適切性等及び当社の財務報告に対する影響の有無を確定できていない旨が第三者委員会の調査報告書において報告されています。当該報告に基づき、第三者委員会が調査対象とした会社については、過年度の連結財務諸表の連結の範囲に含めるべきかを判断する情報及び根拠等が入手できていないことから、子会社又は関連会社の範囲に含める訂正を行っていません。また、関連当事者に該当するかを判断する情報及び根拠も入手できていないことから、関連当事者の範囲に含めておらず、追加の訂正も行っておりません。さらに、第三者委員会が調査対象とした会社のうち一部の会社と当社の取引において、賃料増額の不合理性及び定期処理業務料の金額の不透明性を指摘することができると思われる旨、並びに根拠が不明確な請求倍率で請求されている可能性や業務実態が確認できない費用を請求されている可能性がある及び実態にそぐわない請求をされている業務委託費が存在する旨が第三者委員会の調査報告書において報告されています。しかしながら、当該取引が当連結会計年度及びそれ以前の会計期間(会計期間を特定できない)にかかる虚偽表示に該当するかどうかを判断、及び影響が及んでいる対象となる会計期間の特定に必要な情報や根拠等が入手できなかったため、当連結会計年度において販売費及び一般管理費に含まれる業務委託費並びにその他流動負債に含まれる関連する未払金に係る修正を行っておりません。
したがって、以上の影響の有無やその金額が確定できる状況になく、過年度にかかる連結財務諸表項目及び金額並びに注記を訂正すべきか、及び訂正される場合における過年度の連結財務諸表項目及び金額並びに注記の影響の程度が判明していないことから、関連する連結財務諸表項目及び金額並びに注記に重要な虚偽記載が存在する可能性があります。」
提出された訂正報告書も一部見てみましたが、上記のような内容の「訂正報告書の提出理由」が書いてあるだけで、肝心の中身の訂正はほとんどありません。「重要な虚偽記載が存在する可能性」について注意喚起することが主目的だったようです。(訂正報告書に対する監査報告書も添付されていない模様)
遅れていた四半期報告書も提出しています。
2023年4月期 第3四半期報告書(ビジョナリーホールディングス)(PDFファイル)
四半期レビュー報告書の結論不表明についてのプレスリリース。
2023 年4月期第3四半期報告書に係る四半期レビュー報告書の結論の不表明に関するお知らせ(ビジョナリーホールディングス)(PDFファイル)
「結論の不表明の根拠」の後半より。
「調査対象会社の一部又は全部が会社の連結の範囲に含まれる場合における上記の四半期連結財務諸表に対する影響を算出することは困難であるため、当監査法人は、調査対象会社の一部又は全部が会社の連結の範囲に含まれた場合における上記の四半期連結財務諸表に対する影響が重要でないという判断をすることはできない。同様に、当連結会計年度の第3四半期連結累計期間に係る販売費及び一般管理費に含まれる調査対象会社に対する業務委託費 835,198 千円並びに過去の会計期間(会計期間を特定できない)に係る業務委託費に係る未発見の虚偽表示の金額を算出することは困難である。したがって、当監査法人は、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが上記の四半期連結財務諸表に及ぼす可能性のある影響は重要であると判断した。
また、会社が決定した連結の範囲や関連当事者の範囲が適切であるか否かに係る四半期レビュー手続、及び調査対象会社に対する当第3四半期連結累計期間に係る販売費及び一般管理費 835,198 千円並びに過去の会計期間(会計期間を特定できない)に係る販売費及び一般管理費(金額を特定できない)並びに上記の四半期連結財務諸表の注記における未発見の虚偽表示の特定及び金額の妥当性に係る四半期レビュー手続を実施できなかった。そのため、過去の会計期間(会計期間を特定できない)に係る連結財務諸表及び四半期連結財務諸表並びに上記の四半期連結財務諸表に未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが連結財務諸表全体及び四半期連結財務諸表全体に及ぼす可能性のある影響が、財務諸表の特定の構成要素、勘定又は項目に限定されないと判断した。また、上記の四半期連結財務諸表の注記において未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが及ぼす影響が利用者の財務諸表の理解に不可欠であると判断した。
したがって、当監査法人は、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが上記の四半期連結財務諸表に及ぼす可能性のある影響は広範であると判断した。
以上から、当監査法人は、上記の四半期連結財務諸表において未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが及ぼす可能性のある影響が重要かつ広範であると判断した。
その結果、当監査法人は、会社の上記の四半期連結財務諸表に対して、結論を表明する根拠となる十分かつ適切な証拠を入手することができず、四半期連結財務諸表に重要な修正が必要かどうかについて判断することができなかった。」
「重要な虚偽記載が存在する可能性」ありという注記がついていて、監査人のレビュー報告書も結論不表明というような四半期報告書でも、提出したという実績にはなるので、いったん上場廃止の危機はやり過ごせたのでしょう。これから、本決算をどうするのかを、検討するのでしょうが、本決算でも意見不表明だと、上場廃止の可能性が高まります。
それにしても、四半期レビュー報告書は、無限定でも、二重否定表現などで、非常に読みにくいものなのに、結論不表明ともなると、正確に読み取るのはほぼ不可能のように思えます。
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