企業会計基準委員会は、企業会計基準第29号の改正案である企業会計基準公開草案第66号「収益認識に関する会計基準(案)」を、2019年10月30日に公表しました。
関連する、「収益認識に関する会計基準の適用指針」の改正案や、「四半期財務諸表に関する会計基準」・同適用指針、 「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」の改正案も、同時に公表しています。
「収益認識に関する会計基準」・同適用指針は、2018年3月に公表済みですが、注記事項の定めや収益認識の表示に関する一部の事項については、適用時までに検討するとされていました。その検討結果が、今回、基準・適用指針に反映されることになります。ただし、会計処理に関する改正も一部含まれています。
改正案の概要は以下のとおり。
1.表示
・顧客との契約から生じる収益の額を、企業の実態に応じて、適切な科目をもって損益計算書に表示するか、注記する。また、顧客との契約から生じる収益は、例えば、売上高、売上収益、営業収益等として表示する。
・契約資産と顧客との契約から生じた債権を貸借対照表に区分して表示するか、貸借対照表に区分して表示しない場合は、それぞれの残高を注記する。(現行基準では、区分表示せず、かつ、それぞれの残高を注記しないことができる。)
・契約資産、契約負債又は顧客との契約から生じた債権について、下記の例を挙げている。
(1) 契約資産…契約資産、工事未収入金等
(2) 契約負債…契約負債、前受金等
(3) 顧客との契約から生じた債権…売掛金、営業債権等
・顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合、顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)は、損益計算書において区分して表示する。
2.注記事項
・基本的な方針として、次の対応を行う。
(1) 包括的な定めとして、IFRS 第 15 号と同様の開示目的及び重要性の定めを本会計基準改正案に含める。また、原則として IFRS 第 15 号の注記事項のすべての項目を本会計基準改正案に含める。
(2) 企業の実態に応じて個々の注記事項の開示の要否を判断することを明確にし、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる項目については注記しないことができることを明確にする。
・顧客との契約から生じる収益に関して、次に定める項目を重要な会計方針として注記する。
(1) 企業の主要な事業における主な履行義務の内容
(2) 企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
・顧客との契約から生じる収益に関する情報を注記するにあたっての包括的な定めとして開示目的「顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示すること」を設ける。
・開示目的を達成するための収益認識に関する注記として、次の項目を示す。
(1) 収益の分解情報
(2) 収益を理解するための基礎となる情報
(3) 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報
・注記の記載方法等について、いくつかの方法を挙げている(注記事項の構成に従って記載しなくてもよいなど)。
・当期に認識した顧客との契約から生じる収益について、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解した情報の注記を求める(収益の分解情報)。
・顧客との契約が、財務諸表に表示している項目又は収益認識に関する注記における他の注記事項とどのように関連しているのかを示す基礎となる情報として、次の事項を注記する。
(1) 契約及び履行義務に関する情報
(2) 取引価格の算定に関する情報
(3) 履行義務への配分額の算定に関する情報
(4) 履行義務の充足時点に関する情報
(5) 本会計基準改正案の適用における重要な判断
・当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報として、「契約資産及び契約負債の残高等」及び「残存履行義務に配分した取引価格」を注記する。(一部、便法を認めている。)
・工事契約会計基準に定める次の注記を引き継ぐ。
(1) 当期の工事損失引当金繰入額
(2) 同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されることとなる場合、棚卸資産と工事損失引当金の相殺の有無と関連する影響額
3.会計処理
・契約資産に係る貸倒引当金の会計処理について、金融商品会計基準における債権の取扱いを適用する。また、外貨建ての契約資産に係る外貨換算について、企業会計審議会「外貨建取引等会計処理基準」の外貨建金銭債権債務の換算の取扱いを適用する。
2018 年会計基準の適用日を踏襲し、2021 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用となります(早期適用可)。
表示方法の変更が生じる場合には、会計基準又は法令等の改正による表示方法の変更として取り扱います。
「適用初年度の比較情報」について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができます(影響額の記載が必要)。また、改正会計基準等において定める注記事項を適用初年度の比較情報に注記しないことができます。
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