会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「金融・資本市場競争力強化プラン」の公表について

「金融・資本市場競争力強化…:金融庁

金融庁は、金融市場の競争力強化のための方策を盛り込んだ「金融・資本市場競争力強化プラン」を、2007年12月21日に公表しました。

大きく分けて4つのテーマを取り上げています。

Ⅰ 信頼と活力のある市場の構築
Ⅱ 金融サービス業の活力と競争を促すビジネス環境の整備
Ⅲ より良い規制環境(ベター・レギュレーション)の実現
Ⅳ 市場をめぐる周辺環境の整備

以下、会計や開示に関係する部分の抜粋です。

「Ⅰ 信頼と活力のある市場の構築

1.多様な資金運用・調達機会の提供

(2)プロに限定した取引の活発化

2)プロ向け市場の枠組みの整備

 海外企業や国内の新興企業等の我が国における資金調達の機会を拡大し、資金調達や投資運用先としての我が国金融・資本市場の魅力を高めるとともに、プロ投資者間の競争を通じた金融イノベーションの促進を図る等の観点から、市場参加者をプロに限定した自由度の高い取引の場を設けるための制度整備を進める。このため、1)平成20年中を目途に、プロ私募等の現行制度を活用した枠組みを整備するとともに、2)市場参加者を特定投資家にまで拡大した、新たな規律に基づく取引所市場の枠組みを構築することとし、関連法案の早急な国会提出を図る。

(3)グリーンシート市場における上場廃止銘柄に係る流通制度の整備

 上場廃止銘柄を保有する投資者に対し、換金の場を提供するため、現在、グリーンシート市場の中に置かれているフェニックス銘柄(上場廃止銘柄)の分離、フェニックス銘柄の指定基準の緩和、証券保管振替機構における受渡決済業務の取扱い等について、日本証券業協会等での検討を踏まえ、平成19年度中を目途に、関係者による制度整備を推進する。」

従来は、上場廃止になれば証券取引法(金融商品取引法)による開示対象でなくなるケースがほとんどだったと思いますが、何らかの開示が求められるようになるのでしょうか。

「2.市場の公正性・透明性の確保

(1) 課徴金制度の見直し

 市場の公正性・透明性を高め、我が国市場に対する信頼を確保するには、違反行為に対するより実効的な抑止が必要である。このことから、金融商品取引法上の課徴金制度について、その対象範囲、金額水準、除斥期間等を見直し、関連法案の早急な国会提出を図る。

(2) 市場監視機能の強化

(省略)

(3) 会計・開示制度の整備

 会計・開示制度は、金融・資本市場に対する高い信頼を確保するための重要なインフラである。その整備に当たっては、投資者に対する必要な情報の提供を通じて我が国市場の公正性・透明性の向上に資するとともに、金融・資本取引や企業活動が国際化している状況等を踏まえ、国際的な動向との整合性が十分図られるよう留意する必要がある。

1) 会計基準の国際的な収斂・相互承認の推進

 米国やEUを中心に、会計基準の国際的なコンバージェンスに向けた取組みが加速化している状況を踏まえ、会計基準のコンバージェンスに積極的に対応し、より高品質な基準を目指すため、企業会計基準委員会(ASBJ)の活動を支援する。

 また、2009年(平成21年)から、EUは第三国企業に対して国際会計基準又は同等の基準による連結財務諸表作成を義務付ける方針であることを踏まえ、欧州委員会と連携して双方向にコンバージェンスの進捗をモニタリングし、我が国会計基準の国際会計基準との同等性が認められるよう対話を進めていく。

 さらに、米国証券取引委員会(SEC)等との間でも、会計をめぐる諸問題について積極的な対話を進める。

2) 英文開示の対象の拡大

 現在、外国ETFに限られている英文開示の対象有価証券を外国会社等(外国政府、外国ファンドを含む。)が発行するすべての有価証券に拡大するため、平成20年春頃を目途に、金融商品取引法関係政府令の改正を行う。

3) EDINETにおけるXBRLの導入

 有価証券報告書等の法定開示書類を電子的に提出・縦覧するシステムであるEDINET(Electronic Disclosure for Investors' NETwork)において、利用者が財務情報の分析・加工を容易に行えるよう、平成20年4月以降に開始する事業年度に係る提出書類からXBRL(注)を導入する。

(注)XBRL(eXtensible Business Reporting Language):データに属性情報を付すことで高度な利用を可能とする、国際的に標準化された、財務報告等に使用されるコンピュータ言語のこと。

4) 格付会社のあり方についての検討

(省略)

5) 証券化商品に関する適切なリスク評価とその情報開示の強化

 わが国証券化市場の透明性を向上させるためには、証券化に関わる個々の当事者が原資産のリスクに関する適切な評価を行うとともに、その情報を提供することにより、追跡可能性(Traceability)を改善する必要がある。民間金融関係者とも連携し、そのための仕組みづくりを進めていく。

(4) コーポレート・ガバナンスの強化

 内外の投資者が安心して取引できる市場を構築するためには、資金調達者自らがガバナンスの向上や内部統制の整備を通じて投資者に対する説明責任を果たすとともに、市場を開設する取引所は上場企業のガバナンス水準を向上させるための取組みを進めることが重要である。

1) 企業における内部統制の整備

 内部統制報告制度(確認書制度を含む。)導入後、同制度のレビューを適時に行い、その結果を踏まえ、必要に応じ、内部統制の評価及び監査の基準・実施基準の見直しや更なる明確化等を検討する。

2) 取引所におけるコーポレート・ガバナンス強化への取組み

 東京証券取引所の上場制度整備懇談会において検討されている企業行動規範の拡充等、取引所におけるコーポレート・ガバナンス強化に向けての取組みを引き続き推進する。

3) 上場企業等のガバナンス強化についての検討

 資本市場における企業のガバナンスを強化することを目的とした法制の整備のあり方等について、幅広く検討を行う。」

「英文開示の対象の拡大」と「証券化商品に関する適切なリスク評価とその情報開示の強化」が目新しい点でしょうか。会計基準のコンバージェンスについて「欧州委員会と連携して双方向にコンバージェンスの進捗をモニタリング」といっていますが、EUの方は日本基準の方向へ収斂するつもりはないので「双方向に」というより「一方的に」の方が実情に合っているかもしれません。

また、内部統制に関しては「必要に応じ、内部統制の評価及び監査の基準・実施基準の見直しや更なる明確化等を検討」ということで、適用する前から見直しの話が出ています。

証券化商品に関しては、来年3月の決算に間に合うよう今すぐやるべきこととはないのでしょうか。

「Ⅳ 市場をめぐる周辺環境の整備

1.国際的に通用する金融・法務・会計等の専門人材の育成・集積

(2) 公認会計士試験の改善
 公認会計士試験を多様な人々にとって受験しやすく、より魅力的な試験とするため、公認会計士・監査審査会は、平成22年までに、短答式試験及び論文式試験の実施方法について、短答式試験の実施を年2回に増やすとともに論文式試験を週末に実施するなど、具体的な改善策を講ずる。」

この論点に関しては、すでに公認会計士・監査審査会から報告書が出ています。

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