会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東芝の不正会計が時効 刑事責任問えず、経営難にも影響(日経より)

東芝の不正会計が時効 刑事責任問えず、経営難にも影響(記事冒頭のみ)

東芝巨額粉飾事件が、刑事事件としては時効になってしまったという記事。

「2015年に発覚した東芝の不正会計問題が、刑事事件として公訴時効を迎えたことが関係者への取材で分かった。現在も続く経営混乱の発端となったが、当時の経営陣らの刑事責任は問われずに終結した。」

「不正会計問題のうち刑事事件として立件が検討されたのは、パソコン事業などで利益を水増しした有価証券報告書の虚偽記載についてだ。金融商品取引法などが定める時効は7年。立件が検討された最後の期の14年3月期の有報提出(14年6月末)から7年が経過し、時効が完成したとみられる。」

東芝と会計監査人であった新日本監査法人への行政処分は行われています。

「行政処分が先行した。15年末、監視委の勧告を受けて、金融庁が東芝に金融商品取引法違反(有価証券報告書などの虚偽記載)で約73億円の課徴金納付命令を出した。会計監査を担当した新日本監査法人にも3カ月の新規業務の停止を命じ、監査法人へは初となる約21億円の課徴金も命じた。」

巨額粉飾していた東芝が課徴金約70億円、監査不備で見逃していた新日本が約20億円というのは、法人規模を考えれば、アンバランスでしょう。また、新日本は、会計士個人も行政処分(業務停止)を受け、氏名公表されているのに対し、東芝の方は、個人としては誰ひとりとして、公的な責任追及は行われていません。これもアンバランスでしょう。

刑事告発しなかった経緯は...

「企業の粉飾決算などを事件化する場合、監視委がまず調査し、検察に刑事告発する形で進む。その調査が難航した。16年7月には、告発先となる東京地検特捜部が「刑事事件としての立件は困難」という見方を監視委側に伝えた。同年末には監視委の幹部が交代し新体制での仕切り直しとなったが、検察側の慎重な姿勢は揺らぐことはなかった。

ある検察幹部は当時の判断について「虚偽記載を立件するには、公正な会計慣行に則っているかという観点が必要だった」と振り返る。「バイセル取引については、当時は明確に違反するという会計規則が無かった」と指摘。「特捜部と監視委とで意見交換をしていく中で、クリアすべき問題のいくつかが乗り越えられなかった」とした。」

粉飾手法はほとんど現場で発案、実行されたもので、経営トップはプレッシャーをかけていただけであり、故意ではないということになったとのことです。

それにしても、日産ゴーン事件とはえらい違いです。粉飾のような虚偽記載事件では、東芝事件のように、監視委が十分調べたうえで、その調べた内容をもとに、刑事告発すべきかを慎重に判断するのが、普通ですが、ゴーン事件の場合は、いきなり検察が出てきて逮捕までしてしまいました。ゴーン氏のような日本社会からすればアウトサイダー(ルノーの手先)に対しては厳しく、東芝経営トップのような、日本経済界の中心にいるような人たちに対しては甘いのでしょう。

民事訴訟は継続中とのことです。

「東芝は2015年、会計不正の経営責任を明確にするため旧経営陣5人を提訴。計32億円の損害賠償を求めた。複数の個人投資家も別に株主代表訴訟を起こした。いずれも一審判決前の段階だ。

一方、東芝に対して機関投資家や銀行などからの損害賠償請求訴訟も相次ぎ、請求額の合計は1700億円以上に達した。一部は和解などで決着したが、多くは係争中となっている。」

もし、旧経営陣に対する刑事告発が行われ刑事裁判になっていれば、さまざまな悪事が裁判で証拠としてあきらかにされ、旧経営陣に対する訴訟や東芝に対する訴訟でも、原告側に有利に働いていたことでしょう。刑事告発しないことが、民事訴訟の方にも影響しているのではないでしょうか。

バイセル取引というのは、一般的には有償支給取引のことですが、その会計処理についてふれている解説記事。

サプライヤーの事業・会計処理の特徴(新日本監査法人)
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