保身のために社長自ら上場廃止…Nuts粉飾事件の背後にあった泥沼内紛劇
帳簿上の多額の現預金が突如消滅、その後架空売上が発覚、破綻、上場廃止してしまったNutsの事件を取り上げた記事。(事件については→当サイトの関連記事、その2ほか)
すでに関係者の刑事裁判は有罪で確定しています。
上記記事は、当時の社長(破綻時には取締役に降格)の供述調書や会社の調査報告書も使って書いています。
まず、どのような粉飾だったのか...
「Nutsは2016年に、『ドクターX』のモデルとしてメディアにも登場してきたコロンビア大学の外科医・加藤友朗氏を担いで、入会金約800万円という高級会員制医療施設の経営に乗り出す。結果、19年5月から11月にかけて78人の会員を獲得し、約5億6000万円の会費を20年3月期の売上に計上。同期第3四半期決算の売上高は、前年同期9000万円を大きく上回る6億8400万円となった。
ところが、実際に会員として獲得したのはほんの数名で、売上として計上できるものは2000万円しかなく、残り5億4000万円は外部から借り入れるなどして調達した資金を、知人の名前を冒用して入金し、不正に売上計上したものだった。」
こうした粉飾決算の工作を担ったのが、会員制医療施設事業のスタートと同時に社長に就任した森田浩章氏である。調査報告書や供述調書によると、森田氏は、関係者から調達した資金をNutsに入金すると同時に引き出し、一部は関係者に返済、一部は再度、Nutsに振込み、売上計上していた。」
こんなことをやれば、現預金が合わなくなります。すぐに監査法人に見つかってしまいました。
「架空売上計上の直後、前述の巨額の現金過不足が発覚し、証券取引等監視委員会の強制調査を受ける。そして同年9月、社長から降ろされて取締役となっていた森田氏が、Nutsに対して破産を申し立てたのだ。
この破産申立については、Nutsは表向き、会計監査人であった監査法人元和が退任し、新たに監査法人アリアが就任したものの、監査報酬を支払えないため有価証券報告書が提出できないといった事情を公表している。だが、真の理由は、逮捕後に東京地検特捜部が行った取調べで語られていた。」
供述調書が引用されていますが、要するに、自分の悪事が書いてある外部調査委員会の調査結果公表を阻止するために、取締役であった森田氏が、破産を申し立てたとのことです。しかし、結局、調査報告書は公表され、刑事事件にもなりました。
ここで、監査法人元和(すでに解散している→当サイトの関連記事)の代表者が批判されています。
「一方、Nutsの不正行為に深く関与しながら、検挙を免れた関係者もいる。その一人が、会計監査人である監査法人元和代表の公認会計士・星山和彦氏だ。
星山氏は前述の通り、Nutsの経営幹部が集う「定例会」に参加していた。調査報告書などによると、星山氏は、虚偽開示と認定された会員制医療施設に関する適時開示の公表を、森田氏に代わって長谷川氏に説明するなど、森田氏と一体となってNutsの運営に関与していたようだ。
星山氏とNuts経営陣は癒着とも言える関係性を築いていた。16年12月に、森田氏がラスベガスのカジノで5000万円を擦り、Nutsから負け代金を補填したという事案がある。このラスベガス旅行は、プライベートジェットをチャーターする豪華絢爛たるものだったが、星山氏はこの旅行に動向していた。こうしたNutsの状況を早い段階から把握していたにも関わらず、会計監査人として監査報告書や内部統制報告書にサインをし続けた。Nuts事件後、監査法人元和は解散している。」(「動向」は「同行」のまちがい?)
こういう事情があれば、当局も、監査法人代表者について、粉飾への関与、監査基準違反、職業倫理違反などがないか、調べたことでしょう。しかし、金融庁による処分どころか、会計士協会による処分もなかったようですから、違反の証拠はなかったということなのでしょう。
ちなみに、この会計士の名前で検索すると、(同姓同名でなければ)今話題になっている会社に関係しているようです。
星山 和彦がTHE WHY HOW DO COMPANY株式会社<3823>株式の大量保有報告書を提出(2024年4月)(M&AOnline)
「報告書によると、星山 和彦のTHE WHY HOW DO COMPANY株式会社株式保有比率は、9.47%と新たに5%を超えたことが判明した。
報告義務発生日は、2024年4月17日。」