(少し古い記事になりますが)富士通の会計システムの欠陥で、英国史上最悪の冤罪事件が発生した問題を取り上げた記事。
「「イギリス史上最大の冤罪(えんざい)事件」と呼ばれる郵便局スキャンダルの公聴会が始まり、富士通に注目が集まっている。しかし、700人以上の郵便局長らが横領や不正経理の無実の罪を着せられたこの事件を知る人は、富士通の本社がある日本では少ない。」
日本の富士通はBBCの取材に対してコメントすら拒否しているそうです。
「横領罪で収監された郵便局長たちの有罪判決が取り消される中、富士通本社は堅く口を閉ざしている。
取材依頼を広報IR室に断られた後、時田隆仁現社長に直接、話を聞かせてもらいたいと幾度もメールをした。「理不尽な有罪判決を受けた方たちに対して、例え一言だけでもコメントがないか」と。
しかし答えは、「本件英国現地法人が一元的に対応しておりますため当社からの具体的なご回答は控えさせて頂きたく存じます」というものだった。」
富士通が買収した会社が問題を起こしたわけですが、日本の富士通は、現地のことを十分に把握していなかったようです。
「「富士通UKは、名前が変わっただけで、今でもICLのままだ」と言うのは、匿名ならと取材に応じてくれた元社員。
彼女いわく、2004年から2008年まで富士通UKの社長だったデイヴィッド・コートリー氏の口癖は「Keep Japan out(日本には言うな)」だった。入社当初、同僚の多くが日本に一度も行ったことがないことを知って、彼女は驚いたという。
ICLと富士通の関係は何十年も前にさかのぼり、両社のオペレーションには似ている部分も多い。
1970年代、日本とイギリス両国は米IBMに対抗しようとしていた。英政府はICLを設立した。...
ちょうどその頃、イギリスではICLが金銭問題を抱え出した。1981年に赤字を出した際には、当時のマーガレット・サッチャー首相は支援を拒んだと言われている。
よって、富士通とICLは完璧な組み合わせだった。
ICLを買収した富士通は、イギリスで並外れた存在感と英政府との緊密な関係を得た。一社応札のかたちで政府から受注することも多かった。」
富士通は英国でもITゼネコン的存在のようです。
「英政府が2013年以降、富士通UKに発注した金額は合計37億ポンド(6160億円)を超える。大規模な契約としては、歳入税関庁(HMRC、10億ポンド)、国防省(5億7200万ポンド)、内務省(4億8700万ドル)がある。
ただ、富士通側が開発したシステムには、ホライゾン(冤罪の原因となっている郵便局の欠陥システム)以前から問題が生じていた。
たとえば1999年に富士通ICLは、英治安判事裁判所の事案管理ソフトウェア「リブラ」の開発契約を1億8400万ポンドで受注したが、予想の約3倍のコストがかかった上、最終的に会計検査院はリブラについて、基本的な財務情報も提示できないと結論付けた。
ホライゾンは同時期に、郵政の窓口業務を担当する会社ポスト・オフィスに導入されたが、その問題点はすでに知られていた。なぜなら、ホライゾンは元々は1994年に発表された給付金支払いの自動システムに使われるはずだったが、その基準をクリアできていなかったからだ。
「ポスト・オフィスはホライゾンという失敗作を押し付けられた」と言うのは、長年IT業界を取材しているトニー・コリンズ氏。」
「これほどの問題を抱えているにもかかわらず、英政府は富士通を断ち切るつもりはないとコリンズ氏は言う。なぜなら「富士通なしには英国政府のITはまわらない」からだ。
「富士通のメインフレームは歳入税関庁と労働・年金省が何十年と使っており、依存している」」
日本のIT大企業は、政府と密着していないと稼げないような実力しかないのでしょうか。
「イギリスの公聴会で富士通が注視される中、英現地法人もかつてのような政府の優遇を受け続けられるかに関心が集まっている。」
郵便局長が次々と犯罪者に、富士通の勘定系システムが生んだ英国の大冤罪事件(JBpress)(記事冒頭のみ)
「「日本企業の富士通はどのようにポストオフィス(郵便事業のうち窓口業務を引き受ける英国国有の非公開株式会社)のスキャンダルの一端を担ったか」という見出しが10月14日、英BBC放送ニュースサイトに踊った。記事は、富士通こそがポストオフィスの勘定系システム「ホライゾン」が引き起こした大冤罪事件の核心だと指摘している。」
富士通の会計システム欠陥で英史上最悪の冤罪 736人起訴中45人の有罪破棄 和解金87億円(2021年4月)(Yahoo)
「準郵便局長はポストオフィスのフランチャイズとして地域の郵便事業に携わっています。分かりやすく言えば郵便局の窓口業務を担っています。この事件をずっと追いかけてきたジャーナリスト、ニック・ウォーリス氏のブログ「ポストオフィス裁判」に詳しく事件の経過が報告されています。
「信頼できない会計システムによって示された会計上の不足を、疑いのない損失とみなし、損失が発生しなかったことを被告人に証明するよう糾弾するかのように裁判は進められた」と3人の判事は裁判所の非を全面的に認めました。英史上最大の冤罪事件であることを司法が認めたのです。
判事は、ポストオフィスの責任者には「法的義務を回避しようとする文化がある」と指弾しました。元準郵便局長の弁護人は「生計を立てるため準郵便局長になった誠実な人たちなのに、ある日突然不正を働いたと糾弾された」と述べました。今後、懲罰的損害賠償を求めていく方針です。」
「2018~19年にデジタル・創造的産業担当相を務めた保守党のマーゴット・ジェームズ元下院議員は英TV、チャンネル4ニュースで富士通の責任に言及しました。
「富士通の役割を忘れるわけにはいかない。明らかに欠陥のあるシステムをポストオフィスに売ったのは富士通だ。同社はその欠陥を隠すため多大な努力を払い、システムは十全に機能しているように装ってきた。しかし実際にはそうではなかった」」
「富士通は今のところ責任は問われていませんが、ロンドン高裁判事は「富士通の従業員が他の裁判所に提出したホライゾンのバグやエラー、欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念ある」として裁判資料を検察当局に送付しています。
ロンドン高裁判事は「富士通はこれら無数の問題を適切かつ完全に調査したようには見えない。富士通はそのような事故を正しく分類していなかった。調査の結果、証拠にかかわらず、ソフトウェアに問題があったとの結論から遠のいたようだ。それが裁判所に提出された」と厳しく指摘しています。」
システムの欠陥もさることながら、郵便局長らの裁判で、システム欠陥に関する信頼性のない証拠を裁判所に提出し、冤罪を招いたという点が倫理に反する大問題だと思われます。