特別調査委員会の調査報告書受領及び再発防止策に関するお知らせ (PDFファイル)
サムティ(東証プライム)のプレスリリース(3月6日)。
同社は、1月に、過去の決算における連結対象の範囲の判断について会計上の疑義が生じたとして、特別調査委員会設置と2022年11月期決算の発表延期を開示し、その後、調査の進捗状況を開示していましたが、3月6日に、特別調査委員会の調査結果を受領したとのことです。
問題となっていた取引先が子会社・関連会社・関連当事者に該当するとの認定には至らなかったという結論で、過年度訂正は不要とのことです。
「特別調査委員会の調査の結果、調査対象期間である2016年11月期以降において、本件取引先や同様な関係の可能性がある特定取引先について、当社が直接又は間接的に支配している状況が存在するとまでは認められず、子会社又は関連会社のいずれかに該当するとの認定及び関連当事者に該当するとの認定には至らなかったと判断されております。また、本件取引先との取引について、過年度訂正を要するような事象は認められないと判断されております。 」
ただし、問題の取引先との関係性や取引については、「公正性及び透明性に疑念を抱かせる」と述べているそうです。
「特別調査委員会からは、大規模な調査を尽くさなければその判定が不可能となるような事態を招来したことそのものについて、会計基準というルールの範囲内であったとしても適切な振る舞いとはいえず、会計的側面から離れてその関係を
見たとしても、本件取引先との関係性及び取引について、公正かつ透明な企業運営が特に期待される上場企業において、その公正性及び透明性に疑念を抱かせるには十分なものであったなどの指摘を受けております。 」
これを受けて、再発防止策を実施することを決定したとのことです。
2022年11月期の通期決算発表や有報提出は、2023年3月31日までに行うようです。
3月7日には、調査報告書の開示版が公表されました。約200ページあります。
特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ(PDFファイル)
調査のきっかけは...
「サムティ株式会社(以下、「SMT」という。)は、2022 年 12 月 21 日、同社の会計監査人である監査法人 C(以下、「監査法人 C」という。)より、SMT 代表取締役会長である a 氏(以下、「a 氏」という。)が、取引先の 1 つである A 社(以下、「A 社」という。)の了解の下、同社の印鑑を預かっていたほか、不動産取引について相談にのるなど懇意な関係にあったこと等から、SMT による A 社への影響度を勘案して SMT の子会社に該当するのではないかとの疑義について、調査を行うべきとの指摘を受けた。当該指摘に際して、監査法人 C からは、当該調査はこれまで SMT と利害関係のない独立した立場の専門家により構成される外部調査委員会によりなされるべきものであること、並びにかかる調査委員会による事実関係の調査及び当該事実に基づく評価結果を踏まえた対応がなされなければ決算期末の監査意見を表明することが困難である旨の伝達が併せてなされた。」
(監査法人 Cは、新日本監査法人です。2020 年 11 月期から監査人を務めており、就任からあまりたっていません。)
問題となった取引先(A社、G社、H社)について、子会社該当性・関連会社該当性を調べ、A社については、関連当事者該当性も調べています。また、A社との取引について、細かく調べています。連結範囲外だとしても、不動産売却取引などが、実現したものといえるのかどうかは、別の基準があるので、調べる必要があったのでしょう。
著名な法律学者の見解ももらったそうです。
「当委員会は、明治大学会計大学院教授弥永真生氏に対し、連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第 22 号。以下、「連結会計基準」という。)第 7 項等に関して、連結会計基準の解釈につき、客観的な立場に基づく見解を依頼し、同教授の見解を受領した。」
調査の結論としては、新日本の指摘はまとはずれだったということになりますが、それを新日本が認めるかどうか注目されます。しかし、調査報告書公表前に、監査人と打ち合わせしているはずなので、たぶん、新日本も納得しているのでしょう。
報告書では、監査法人とのコミュニケーションの問題も指摘しています(報告書186ページ~)。
「2020 年 12 月からの監査法人の循環取引に対する調査の過程において、監査法人 C が SMT グループと A 社の関係性に対して非常に強い関心を持っていたことは明白であったところ、監査対応の担当であった当時の経理部長の bo 氏
は、A 社の過去の株主の変遷、a 氏の A 社の印鑑の保管、及び ao 氏が A 社の従業員として従事していたこと等の話を聞いており、会計上何らかの疑義が生じる可能性があると認識していながら、監査法人 C に対して情報伝達すべき範囲に関し、検討・確認をした形跡がない。
また、bo 氏は、監査法人 C とのやりとりの内容や、監査法人 C によるヒアリングの実施状況について、a 氏、d 氏、e 氏、及び aj 氏にタイムリーにメールにて情報共有していたが、A 社に関する情報の伝達範囲や要否を社内で検討・確認をした形跡はなく、また問題の所在が明確にわかるかたちで、役員や上長に相談をした形跡もない。
物件①の取引が循環取引と認められた場合のリスクの大きさや、監査法人の SMTと A 社の関係性に対する関心の高さを踏まえれば、仮に監査法人から明示的に過去の株主の変遷に関する情報提供が要請されていなかったとしても、上場会社としては監査法人 C に対する A 社の情報伝達について、SMT として社内において検討・確認すべきであったことは否定できない。」(報告書189ページ)
「2021 年 6 月の監査対応においても、監査法人 C への情報提供の一部を非開示にすべきという bo 氏の意見が、監査対応に対する適切性に疑義を生じさせる内容であることは明らかであるし、加えて、2021 年 6 月の監査における質問事項は A 社を直接の対象としたものではないにもかかわらず bo 氏は A 社との関係に言及していることからすれば、その内容は、2020 年 12 月の監査における A 社の説明内容に不十分な点がある又は少なくとも更なる追及を避けたい事情があることを窺わせる内容であったと言えるにもかかわらずメールの宛先に入っていた e 氏及び aj 氏は、bo 氏の問題意識を確認したり、bo 氏の問題意識を踏まえて SMT としてどのような対応をとるべきかを検討することもなく、a 氏にその対応を一任したと評価することができる。」(同上)
監査法人が疑念を持つのも仕方がないというニュアンスのようです。