日本公認会計士協会は、監査基準委員会報告書260「監査役等とのコミュニケーション」の一部改正案を、2015年2月26日に公表しました。関連する委員会報告書の一部改正案も併せて公表されています。
改正の概要は以下のとおり(協会プレスリリースより一部抜粋)。
(1) 改正会社法への対応
・ コミュニケーションを行うべき「統治責任者」の定義に監査等委員会を追加
・ 社外取締役その他の非業務執行取締役とも必要に応じてコミュニケーションを行うことが有用な場合がある旨の適用指針の追加(ガバナンス・コードの原案も考慮)
(2) 独立性に関する指針への対応
・ 独立性に関して監査役等とコミュニケーションを行わなければならない旨の全般的な記載を要求事項に追加し、適用指針に具体的な例示を追加
(3) 監査事務所の品質管理のシステムの整備・運用状況に関する監査人の伝達義務の明確化
・監査事務所の品質管理のシステムの整備・運用状況を書面で伝達することとし、これには、監査事務所の品質管理のシステムの外部レビュー又は検査結果が含まれる。
(少なくとも、公認会計士法上の大会社等、会計監査人設置会社、信用金庫・信用協同組合・労働金庫の監査を対象とする。)
(4) 監査役等とのコミュニケーション項目の明瞭化
・ 計画した監査の範囲とその実施時期の概要に関するコミュニケーションにおいて、特別な検討を必要とするリスクを追加
2015年(平成27年)4月1日以後開始する事業年度に係る監査から適用予定ですが、改正公表日以後に適用される項目もあります。
(感想)
・委員会報告書では従来から「監査人は、企業統治の構造に応じてコミュニケーションを行うことが適切な統治責任者を判断しなければならない」としながら、基本的には、報告書の名称に示されているように「統治責任者(ガバナンスの責任を負う機関)=監査役等」という考え方です。一方、社外取締役複数化などの最近の動きは、「統治責任者=取締役会」の方向ですので、ちょっと合わなくなってきているように思われます。「取締役会+監査役」が統治責任者で、監査役はその中で外部監査に関して権限を分担しているという位置づけでしょう。
・コミュニケーション項目として特別な検討を必要とするリスクが追加されたのは、監査報告書に監査上重要な事項を書かせるようにするという国際監査基準の改正との関連もあるのでは。監査役等に報告する「特別な検討を必要とするリスク」の中から、重要なものを選んで監査報告書にも書くというステップを踏むことになるのでしょう。
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