2022年2月決算会社の有報に記載されたKAMを調べた記事。
「企業の財務監査の重要項目を有価証券報告書(有報)に記載する「KAM」について2022年2月期の主要企業を集計したところ、店舗などの減損リスクを取り上げたものが全体の約6割と最多だった。」
「小売りや外食などが多い2月期企業は22年2月期の有報から初めて開示された。」
「日本経済新聞が時価総額1000億円以上の主要40社を対象にKAMを集計したところ、全51項目のうち30項目(59%)が店舗など有形固定資産やのれんなど無形固定資産の減損リスクに関する内容だった。コロナ禍で臨時休業や営業時間短縮を余儀なくされたため、監査人は資産価値に見合うだけの収益を上げられない恐れがあるとして重点的に監査した。」
減損をKAMに記載した会社としてあがっているのは、イオン、高島屋、吉野家ホールディングス、壱番屋などです。
減損の他には、企業結合の例も取り上げています。具体的には、取得原価の配分(その際の無形資産の評価など)、のれん償却年数などです。
「大型M&A(合併・買収)を実施した企業では企業結合に関する記載が盛り込まれた。ニトリホールディングスは21年に買収した島忠の取得原価を、22年2月期にのれん118億円などに再配分した。監査人のトーマツは「有形固定資産の評価や無形資産の識別については活発な市場が存在しない」として専門家を交えて再評価し、会社の評価は適切と判断した。
21年に米コンビニ大手「スピードウェイ」を買収したセブン&アイ・ホールディングスでは、監査を担当したあずさがのれん代や無形資産(商標権)の評価の妥当性を取り上げた。会社側が見積もった買収の相乗効果に基づく20年ののれん償却期間について、あずさは「経営者に質問するとともに外部の第3者機関データとの比較分析」により再検討し、妥当と評価した。」
そのほか、継続企業の前提をKAMに書いている例として、三陽商会、タカキュー、サマンサタバサジャパンリミテッド、ティーケーピーなどを挙げています(時価総額が1000億円未満も調べている)。
KANに注目が集まるのは悪いことではないのでしょうが、KAMは、会社の景気がよかろうが悪かろうが、原則として、何かしら書くことになっているので、KAMに書いてあるから、それが会社にとって必ずリスクだとはとらえない方がよいでしょう。あくまで、監査人にとってのリスク(監査上難しいところ)とそれへの対応を書いてあるのであって、会社にとってのリスクとは別物です。
1社だけ具体例を見てみました。
セブン&アイ・ホールディングスの2022年32月期有報(監査報告書)より。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/55/fcbacc1d923da29781c4eaa43e34b3b4.png)
(監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由の一部)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/f9/10ff5e245bffd324e473718fceceb0c0.png)
(監査上の対応の一部)
(省略した部分も参考になります。ただ、冒頭の現地米国子会社監査人に監査の実施を指示したという記述は違和感があります。現地監査人も広い意味の監査チームの一員であり、監査チームの中で何か指示したからといって、手続を行ったことにはならないでしょう。子会社監査人と親会社監査人を区別して記載する必要はない(むしろ区別してはならない)のでは。)