会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

LNG事業売却白紙で東芝「再建」につまずき(東洋経済より)

LNG事業売却白紙で東芝「再建」につまずき
LNG価格低迷で残る「最大1兆円」の損失リスク


東芝が米国のLNG事業「フリーポート」の売却に失敗したことを取り上げた解説記事。

会計処理も注目されます。

どういう事業か...

「東芝がLNG事業に参入したのは2013年のこと。アメリカ・テキサス州で天然ガスの液化設備建設を計画するアメリカの企業と契約し、20年にわたり年間220万トンのLNGを製造する権利(液化設備やパイプラインの利用権)を買った。当時、東芝にLNGの知見はまったくなかったが、ガスタービンとセットで日本をはじめとする世界各国の電力会社などに販売するのが目的と説明していた。...

実際の目的はテキサス州で東芝が計画していた原子力発電所計画「サウス・テキサス・プロジェクト(STP)」の側面支援のためだ。東芝は子会社だったウエスチングハウス社(WH)を通じ、アメリカで4基の原発計画を進めるとともに、東芝本体としてもSTPに取り組んでいた。しかし、パートナーだった東京電力が福島第一原発事故で事実上の撤退となったほか、現地の電力需給からも計画は難航していた。大量に電力を使うLNGプロジェクトの利用に名乗りを上げることでSTPを後押ししようとしたのだ。」

事業の現状と契約の内容は...

「シェール革命や再生可能エネルギーの興隆により、原発は価格競争力を失い、STPはとん挫。WHは建設コスト超過で倒産し、東芝は海外原発から撤退した。2013年当時、高値で推移していたLNGのスポット価格も、世界各地でプロジェクトが立ち上がったことなどから大幅に下落してしまった。

フリーポートの設備利用は権利であり、義務でもある。仮に液化設備をまったく使わなくても、固定の契約料金を払い続ける必要がある。今後まったく販売できなければ、トータルで1兆円弱の損失となる懸念がある。フリーポートは2020年から設備利用が始まる予定だが、LNG事業の知見がない東芝は一部を除き、安定的な買い手を見つけることができなかった。スポット市場の相場は低迷しており、契約できていないLNGをスポット市場で売っても損が出る状況だった。」

中国民間ガス大手・ENNグループに約930億円を支払って引き取ってもらう予定だったものが白紙になってしまいました。

その会計処理は...

「売却が消えれば、2019年3月期の損失計上はなくなり、一時的に純利益の上方修正も期待できるが、この先の損失リスクを抱えたままになる。」

「昨年秋時点で一番条件の良い提案を出してきたのがENNだった。しかも、LNGのスポット価格は急落しており、当時より条件はさらに悪化している。

仮にフリーポートを売れないまま東芝が抱え続ける場合、LNGの製造開始の前年、つまり2020年3月期から会計処理が必要になってくる。過去、東芝はフリーポートについて「資源権益とは異なり、一括減損などは行わない」と説明しており、それが変わらないならば、毎年翌年分を評価した上で処理することとなる。2017年11月に平田政善CFOが「現状なら毎年100億円の損失」と説明していたが、LNGスポット価格の動向を考えるとこれより損失が大きくなる可能性が高い。いずれにしろ、損失リスクを抱え続けることになる。」

売却が白紙になったからといって、本当に損失計上しなくて良いのでしょうか。この事業は、最善の条件ですら、マイナスの約930億円の価値しかないことが明らかなわけですから、売却の有無にかかわらず、少なくともこれを損失計上するという考え方もあるでしょう。「毎年翌年分を評価した上で処理」というのも、なぜ、翌年度分しか処理しないのか、理屈はなさそうです(翌年度の損失だけなら合理的に見積もれるから?)。

東芝LNG売却破談へ、米中貿易戦争を口実にする中国企業の真意(DOL)

「東芝が中国の民間ガス大手ENNグループに譲渡予定だった、米国テキサス州の液化天然ガス(LNG)プロジェクト「フリーポート」について、ENNはこのほど譲渡契約の解除を要求した。東芝は2018年11月、ENNとフリーポートの譲渡契約を結び、最大1兆円の損失に膨らむ可能性があったところを930億円の“出血”で抑えられるはずだった

ENNの解除要求により、東芝は19年3月期決算の損失額の取り扱いを再検討せざるを得なくなりそうだ。」

「東芝が2013年に米フリーポート社と結んだ契約は、19年から20年間、年間220万トンのLNGを引き取るもの。この契約価格は今のLNG取引相場に比べ「かなり高い」(市場関係者)ため、ENNは東芝との契約で現在の相場の差額を補塡する「一時金」を東芝がENNに支払うことを盛り込んだ。」

「再び譲渡先を探すとなると、昨年の譲渡交渉で登場した石油メジャーの米エクソン・モービルや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどの超つわものが交渉相手の候補に挙がるが、「買い叩かれても仕方がない」(業界関係者)状況にある。」

(開示事項の経過)米国産液化天然ガス(LNG)に係る事業からの撤退に関するお知らせ(東芝)(PDFファイル)

「当社が2019 年2月13 日付で公表した2018 年度連結業績予想には、本件譲渡の完了を前提に、約930億円の損失計上、また2018 年11 月8日付で公表の2018 年度個別業績予想には約1,230 億円の特別損失の計上を見込んでおりましたが、今回の ENN 社からの連絡を受け、あらためて2018 年度連結および個別業績での LNG 事業関連の損失額の取扱いについて検討が必要となっております。」
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