あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相
有名ノンフィクション作家による『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』という文庫本から、積水ハウスが50億円以上騙し取られた地面師詐欺事件の部分を紹介した記事(全7回の連載)。
本筋とは関係ありませんがおもしろいと思った箇所。
「夕刻になると会社帰りのサラリーマンで賑わう新橋駅界隈は、一杯飲み屋やスナックだけでなく、喫茶店も多い。最近はスターバックスやドトールなどの手軽な店が増えたが、なかには昭和の風情を残した昔ながらの店も残っている。事件屋と呼ばれる詐欺師やその情報を得ようとする不動産ブローカーたちは、なぜかそんなレトロな空気が好みのようだ。
たとえばニュー新橋ビルの3階にある喫茶店をのぞくと、そこでは紫煙のなかで驚くほどきわどい会話が飛び交っている。隣の席のサラリーマンやカップルたちは、そんな話には興味がないらしく、自分たちの会話に没頭している。というより、聞き耳を立てたところで、話の中身があまりに込み入っているので、チンプンカンプンになるのが関の山だろう。
新聞や雑誌の記者たちは、新橋に集うこの手の事件屋やブローカーから情報を得ようと、足しげく通う。かくいう私が北田(詐欺師グループのひとり)の顔を初めて見たのも、まさにそんな取材の場だった。ある地面師とホテルの喫茶ラウンジで会っていたときだ。」
積水ハウスの事件の前には、東京音楽アカデミーという会社の土地で手付金詐欺をやっていました。
その会社になりすます方法は...
「「まず小山は、旧知の不動産業者仲間から名古屋の休眠会社を買い取り、そこの代表に就任しました。それを『東京音楽アカデミー』と社名変更し、都内に音楽アカデミー名義の銀行口座をつくった。銀行は富ヶ谷に近い渋谷駅前支店を選び、いかにもそれらしく見せかけています。そうしておいて、買い手の不動産会社になりすましを紹介し、ニセの口座に売買代金の手付金を振り込ませたのです」
一口に「音楽アカデミー」といっても、その名称のついた通信教育の音楽学校は全国に数多く存在する。なかでも東京にある「東京音楽アカデミー」は、複数あるので紛らわしい。つまり、数ある東京音楽アカデミーのうち、どこが富ヶ谷の地主なのか、そもそもわかりづらいので、勘違いしやすい。
というより北田や小山たちは、そこに目を付けたといえる。休眠会社を買い取って「東京音楽アカデミー」という社名に変更すれば、いかにもそれらしく見える。前述したように通信教育などしていない休眠のペーパー会社なのだが、買い手の不動産業者も、銀行の口座名が同じなのでニセモノだとは疑わない。そうしてまんまと手付金を振り込ませたのだ。」