LIBOR関連の情報を邦銀らに漏洩か
PwCジャパンのコンサルタント部門が、海外の顧客金融機関の内部情報を他の金融機関(国内)に漏洩していた疑惑があるという記事。
「漏洩していたのは、顧客金融機関のロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に関する内部情報である。」
「...英国の金融行動監視機構が銀行に対して2021年末以降はレートの呈示を求めない方針を示したことから、来年末に事実上廃止となる。
問題はその後だ。4京円もの取引の根幹となる指標がなくなることで、次の指標を決めなければならないし、新しい金融商品の開発も進めなければならない。LIBORを参照する取り決めになっている既存の金融契約もあらためなければならないほか、会計上あるいは、税務上の対応も必要になる。金融機関はどこも取り組みが遅れており、他の銀行や証券会社がどう対応するのか、出方を探り出したいところだ。
PwCコンサルティングが漏らしたのは、これらに関する顧客の内部情報だった。海外の銀行がLIBOR廃止後の指標金利をどれにしようとしているか、あるいは新指標を用いた新しい金融商品の中身はどうなっているか。これらは、国内銀行にとって重大な関心事であり、こうした情報が不正に提供された。筆者が入手したPwCの資料では契約のひな形になる適格金融契約をどうするかについて、個別の金融機関の取り組み状況が記されており、こうした情報も漏れた。」
コンサル会社が業務の中で得られたクライアントの内部情報を、別のクライアントに流すというのは、職業倫理に反する行為といえますが、この記事で問題にしている情報が、漏れたら顧客の迷惑になるような機密情報なのかどうかは、よくわかりません。国内銀行が海外金融機関に直接問い合わせても、ある程度答えてくれそうな情報のようにも思われます。
いずれにしても、記事によれば、会計士協会や金融庁が調査を始めたそうですから、本当に問題のある行為が行われていたのなら、何らかの処分が行われるのでしょう。また、本当に重要機密情報なら、情報漏洩された海外金融機関側もだまってはいないでしょう。
ただし、コンサル会社に対しては、会計士協会や金融庁は直接の監督権限はないはずです。どういう権限で調査するのでしょう。会計士が不正に関与していた場合(典型的には粉飾決算に関与したような場合)は、その会計士に対する処分を行うことはできますが、コンサル会社自体を処分することはできないのではないでしょうか。
背景に関する記述も面白いと思いました。
「PwCジャパンは、ロンドンのPwC本部に支払う諸経費の負担が重いうえ、PwCコンサルティングでは「正規のコンサルティング料金だけでは経営幹部の報酬を賄いきれず、追加料金を請求できるような付加価値が必要だった」(関係者)。そのため社内で「プライオリティ・アカウント」と呼ばれる再優良顧客をつなぎ止めたり、受け取るコンサルティング料にオプション料金を上積みしてもらうために情報を漏洩していたようだ。こうした無理な営業姿勢が社員の長時間労働やパワハラの温床になっていたとの指摘がある。」(「再優良顧客」は「最優良顧客」でしょう。)
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