オリンパスの今回の不正は、2001年の会計基準変更がきっかけだったという記事。おなじみの八田教授もインタビューで登場します。
「オリンパスは、バブル期の財テク投資の失敗で巨額の損失を抱えていましたが、平成13年に企業の会計基準が変更されたため、こうした損失を隠すことができなくなりました。新しい会計基準は「時価会計」と呼ばれ、企業が保有する株や債権などの金融商品は、その資産価値を決算時の価格に合わせて決算書に記載することが義務づけられました。関係者によりますと、オリンパスでは投資の失敗で抱えた巨額の損失を表に出せないと判断し、このときから海外のファンドに損失を付け替えるなどの不正な経理処理が始まったとみられるということです。」
「・・・(青山学院大学大学院の八田進二教授は)「会計基準が変わった時に多くの企業が損失を計上したのに、オリンパスは損失を明らかにしてこなかった。会計監査や企業統治が機能していたのか、検証する必要がある」と指摘しました。」
会計基準変更の説明は間違ってはいないと思いますが、金融商品会計基準導入以前に、すべて原価で計上していたわけではありません。上場株式については銘柄ごとの低価法が会計だけでなく税務でも認められていて、優良会社は多くが低価法だったと思います。非常に保守的な会計処理であり、現行基準以上に厳しい基準です。旧基準だから含み損が膨らんだということは必ずしもいえません。
(銀行は別として)多くの会社は、特に何もせず(含み益のある有価証券を売ったりしてカバーはしていたと思いますが)、当時の会計基準どおりに会計処理し、大きな含み損をためることもなかったと思われます。
しかし、一方で、以前は、実質ではなく法形式に基づく会計処理に対して寛容であり、買い戻し条件が付いているような有価証券の売却でも、会計基準で明確に禁止していなかったため、売却処理してしまうケースがあったのだと思います。このような甘い会計慣行により「飛ばし」も可能になっていました。
そうした会計基準の抜け穴を使った損失先送りは、当時でもグレーゾーンですが、金融商品会計基準導入で完全にアウトになってしまい、また、山一証券の粉飾などで問題にもなったので、ほとんどの会社はあきらめて損失処理したのでしょう(実際にそういう会社を担当したことはないので想像ですが)。
そういう意味で、それからさらに10年近くも先送りを続けてきたオリンパスは例外中の例外であると信じたいと思います。
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