会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ASBJ 収益認識で検針日基準の検討へ(経営財務より)

ASBJ 収益認識で検針日基準の検討へ

(すこし古いニュースになってしまいましたが)企業会計基準委員会が、電気事業連合会の要請により、収益認識の代替的方法として、検診日基準の検討を始めたとのことです。

「企業会計基準委員会(ASBJ)は8月28日,第440回本委員会を開催した。ASBJが公表した概要によると「収益認識会計基準の適用上の課題に関する要望への対応」が審議事項にあがっている。これは,所定の手続きを経て電気事業連合会がASBJに検討を求めた案件。電気事業やガス事業における「検針日基準」を「代替的な取扱いとして認めてほしい」と要望した。」

直近の委員会(10月8日)の会議資料をみると、審議が進んでいるようですが、まだ結論は出ていないようです。

検針日基準に関する議論の整理」という資料に論点がまとめられています。

まず、別扱いする根拠は...

「2. 会計基準等においては、会計基準における定めが明確であるものの、これに従った処理を行うことが実務上著しく困難な状況が市場関係者により識別され、企業会計基準委員会に提起された場合には、「別途の対応」を図ることの要否を企業会計基準委員会において判断することとしている。」

どのような観点から検討しているか...

「7. 代替的な取扱いを認めるか否かを検討するにあたっては、次の観点を考慮することが考えられる。

(1) 他の代替的な取扱いとの整合性の観点

(中略)検針日基準は、重要性がない場合を除き、会計基準の原則に準拠しないことになるため、これを認めることが財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲に含まれるか否かが論点となる。(中略)

(2) 財務諸表の適正表示の観点

会計基準の原則は、従来の会計処理に比して、財務諸表を適正に表示するものと考えられる。この観点から、検針日基準を評価する。

① 損益計算書の適正表示の観点

検針日基準に基づき計上される収益が 1 年分の収益であることは、会計基準の原則に従った場合に計上される収益と同じであるが、期首前の半月分の収益が計上され、期末前の半月分の収益が計上されないことになる。同じ半月であっても、計上される収益は、天候等により大きく異なることになる可能性があると考えられる。

また、現在、費用(売上原価)については概ね発生主義で認識されている。費用に関する会計処理を変更せずに収益を検針日基準により計上する場合、収益と費用の期間対応が図られないと考えられる。仮に費用を収益に合わせて調整した場合、収益も費用も発生主義に基づかないことになると考えられる。

② 貸借対照表の適正表示の観点
(中略)

(3) 見積りの考え方の観点
(中略)
会計基準の適用にあたり、様々な会計上の見積りが求められている。その精度も様々であると考えられるが、企業が置いた仮定が不合理ではない限り、最善の見積りを行った結果は会計上、認められてきたと考えられる。

電気事業連合会は、行った試算について「いずれの見積り手法も、定性的に見れば、一定の合理性はある」としているが、以下の点をどう考えるかが論点になると考えられる。

① 当委員会として、電気事業連合会が行った試算を合理的なものと考えるか。
② 監査人は、電気事業連合会が行った試算を合理的なものとして容認しうるか。

仮に、見積手法の合理性について監査人に懸念があるようであれば、特定の見積手法を代替的な取扱いとして認めることも考えられる。

(4) 国際的な比較可能性の観点

(中略)検針日基準は、重要性がない場合を除き、会計基準の原則に準拠せず、国際的な比較可能性が損なわれる可能性があると考えられるが、この点をどのように考えるかが論点になると考えられる。」

選択肢が示されています。

「8. 以上の検討を踏まえ、代替的な取扱いを認めるか否かについての選択肢としては次のようなことが考えられる。

案 1:
代替的な取扱いとして検針日基準を認める(見積りを要求しない。)。

案 2:
検針日基準は認めない(見積りを要求する。)。代替的な取扱いとして、特定の見積手法を明示的に認める

案 3:
検針日基準は認めない(見積りを要求する。)。代替的な取扱いを設けない

対象企業は...

「10. 検針日基準について代替的な取扱いを認めることとした場合(第 8 項の案 1 又は案2 とした場合)、代替的な取扱いを認める企業について、今回提起された旧一般電気事業者に限定するかどうかが問題になると考えられる。」

9月29日現在の「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」では以下のようになっており、検討の締め切りは示されていません。

「(4) 収益認識に関する会計基準

(主な内容)
企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」等について、検針日基準による収益認識について検討を行う。

(検討状況及び今後の計画)
2020 年 8 月に、電気事業連合会より提起を受けたものである。2020 年 8 月より検討を開始している。」

コメント一覧

kaikeinews
会議資料によれば、会計基準に別途の取扱いを検討する場合を規定しているようですね。
「別途の対応は、「2018 年会計基準における定めが明確であるものの、これに従った処理を行うことが実務上著しく困難な状況が市場関係者により識別され、その旨当委員会に提起された場合」(会計基準第 96 項)に検討するものである。」

他の業界も業界独自の処理を認めてほしいというのはありそうなものなのに、なぜ電力業界だけなのかという疑問は感じますが。
CPA
基準が公表された後に、こんな業界の都合の要求をすること自体が可能なのでしょうか? (所定の手続を経て、とあるので、可能ということ?)
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