新日本監査法人のサイトに、東日本大震災に関するIFRSにおける会計処理という解説が5月10日から掲載されています。
あらた監査法人の同様の解説を以前紹介しましたが、取り上げている項目等が少し違います。
以下、気になった項目をピックアップしてみました。それぞれ、項目の解説の一部を抜粋しています。
見積りにおける不確実性の要因
「一部の資産及び負債の帳簿価額を算定するためには、報告期間の末日において不確実な将来の事象がそれらの資産及び負債に与える影響を見積る必要がある。IAS第1号は、「翌会計年度において」資産及び負債の帳簿価額に重要な修正をもたらすような重大なリスクを伴う、報告期間の末日における将来に関する仮定及びその他の重要な見積りの不確実性に関する情報の開示を求めている(ただし、直近に観察された市場価格に基づく公正価値で測定されている資産及び負債は除く)。IAS第1号により、日本での震災により直接、又は間接的に影響を受けた企業は、重要な見積りによる不確実性にさらされている資産及び負債に関する情報を開示することが求められる可能性がある。
IAS第1号によると、減損の対象となる長期性資産など、見積りの不確実性にさらされている資産及び負債は、注記にその内容と報告期間の末日における帳簿価額を記載することになる。この開示は、見積りの不確実性の主な要因について経営者が行う判断を、財務諸表の利用者が理解できるような方法で行われなければならない。提供される情報の内容と範囲は、仮定やその他の状況の内容に応じて変化する。
報告期間の末日時点で、仮定やその他の見積りの不確実性が及ぼす影響について開示することが実務上不可能である場合には、企業は、すでに有する知識を基に、翌会計年度内において、結果が仮定と異なることにより影響を受ける資産又は負債の帳簿価額に重要な修正がなされる可能性があることを開示する必要がある。しかし、どのような場合においても、企業は、仮定によって影響を受ける特定の資産又は負債の内容と帳簿価額を開示する必要がある。」
東京電力の決算にまさに当てはまりそうな解説です。注記が重要だということでしょう。もちろん、東電は日本基準なのでこのまま適用されるわけではありませんが・・・。
将来の営業損失
「震災に関連し、これまでに述べた以外の損失が直接又は間接的に生じる場合がある。企業は、震災発生後しばらくの間、営業損失が生じると予想することもある。たとえば、企業に、修繕費、工場閉鎖による減収、景気の悪化による減収が生じることが考えられる。また、代替生産設備の賃借、従業員の交通手段や住居の提供、あるいはビジネス機能のアウトソーシングなどのために、追加のコストが生じる可能性がある。
将来の営業損失及びコストは負債の定義を満たさないため、その発生時まで認識することはできない。」
推定的債務
「震災によって、法的債務以外の債務が生じる場合がある。たとえば、以前は環境に対する債務を負担していなかった企業に、災害の発生によって、環境被害を修復するという推定的債務が生じる可能性がある。このような推定的債務に関しては、過去の経験により確立されている実務慣行、公表されている方針又は現時点での具体的な意思表示によって、企業が外部に対し一定の責務を負うことを表明しており、その結果、企業はこれらの責務を果たすであろうという妥当な期待を外部の者に惹起している場合にのみ引当金が認識される。」
修繕費などは発生時まで計上できないわけですが、「法的債務」や「推定的債務」に該当する項目は、決算日現在で見積もって引当てしなければなりません(引当金の要件に合致する場合)。
資産の減損
「今回の震災により直接又は間接的に、資産に減損の兆候が生じることが考えられる。たとえば、被災地域に所在する製造施設の損壊は、直接の減損の兆候となる。また、企業が被災地域以外で営業活動を行っていたとしても、企業への供給業者の製造設備が被災地域にあったため供給が途絶え、代わりにコストが高い他の供給業者を利用しなければならないために、企業の操業費が急増する場合があり、これが間接的な減損の兆候となることがある。
有形固定資産が完全に損壊した場合には、減損の検討を行うことなく当該資産を除却することになる。これは、当該資産の使用又は売却のいずれからも、将来の経済的便益を受けることが期待できないためである。」
IFRSでは、物理的な減損も減損会計の守備範囲なのでしょう。また、修繕費は発生時まで計上できないとしても、多額の修繕費が必要なほどの設備の損壊が生じていれば、その設備について減損処理を検討することになるのでしょう。
(コメントは個人的感想です。実際のIFRS適用の際にどうなるのかについては、担当会計士やコンサルタントにお尋ねください。)
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