東芝の不正会計事件の関連記事。不正の背景について東芝幹部がコメントしています。
「高水準のコスト削減を要求したことが、(事業部門の)重圧になった可能性がある」。東芝の幹部は15日夜、毎日新聞の取材にこう答えた。同社では毎年度、社内の事業部門ごとに売上高、営業利益などの目標を盛り込んだ「予算達成目標」を設定。田中久雄社長も15日の記者会見で「達成目標の位置付けが高く、(決算をまとめる)財務に関わる内部統制が完全には機能していなかった」と語り、社内の問題点を認めた。」
「利益がかさ上げされていた3年間のうち12年3月期、13年3月期は2年連続の営業減益となっており、テレビ事業の不振をインフラ関連でカバーしようとする構図だった。同社幹部は「社会インフラ部門は、コストが上がっても損失を先送りする文化がある」と証言。」
厳しめの目標を設定すること自体を悪いとは言えないでしょうが、それに対抗できるだけの質の高い内部統制が必要なのでしょう。しかし、粉飾を容認する企業風土はどうしようもないのかもしれません。
不正があった工事はかなり大規模なものだったようです。
「インフラ関連工事で利益がかさ上げされていたのは、原子力や水力などの「電力システム事業」で4件、約60億円▽送配電設備などの「社会インフラシステム事業」で4件、約300億円▽ビル管理などの「コミュニティ・ソリューション事業」で1件、約140億円−−の計9件、500億円強に上る。関係者によると、うち2件の工事だけで計約400億円に上り「いずれも従来になかった新規案件で、原価総額が分かりにくかった」という。」
2件で400億円(平均すると1件200億円)の利益のぶれが生じるということは、請負金の金額が数百億円から1千億円を超える規模の工事なのかもしれません(百億円の工事で200億円のぶれが生じるというのは考えにくい)。
当然社内からも注目され、内部監査人・外部監査人も見ていたと思われますが、異常に気が付かなかったのでしょうか。
会計基準的には、「新規案件で、原価総額が分かりにくかった」のであれば、成果の確実性が認められる場合という要件に合わないので、進行基準は使えず、完成基準(完成するまで売上はゼロ)を適用しなければなりません。
ただ、工事ごとに、工事着手時点で、会計処理が全く異なる完成基準か進行基準かを判断するというのは、実務的ではありません。IFRSのように、成果を信頼性をもって見積ることができない場合には、完成基準ではなく、進行基準とほぼ同じ「工事契約原価回収基準」(発生した工事原価以下の金額で売上計上、利益は計上しない)を適用するやり方の方が優れていると思います。現行基準では、成果の確実性が認められないことのペナルティ(完成するまで利益だけでなく売上もゼロ)が、無意味に重すぎます。
(東芝の連結は米国基準(単体は日本基準)であり、この議論は必ずしも当てはまらないかもしれません。)
不正発覚のきっかけは、当局への内部通報だったそうです。
「同社の情報公開の姿勢にも「不適切」との批判が出ている。今回の問題発覚のきっかけは、証券取引等監視委員会への内部通報だった模様で、これを受けた東芝は4月3日、会長をトップとする調査委員会を設置し、5月8日には決算発表の延期や期末配当の見送りなどを発表した。しかし、いずれも資料配布だけで「詳細は調査中」などと具体的な説明をしなかった。」
東芝:問われる経営責任 調査対象、全社に 不適切会計(毎日)
「田中社長は今回の問題について、「会計処理の妥当性を検証する機能が十分ではなかった」と反省点を挙げたが、経営幹部らがどこまで不適切処理に関与していたかの追及も焦点になる。同社関係者によると、田中社長のほか、過去の経営者らも第三者委の聴取など調査対象になるとみられ、現経営陣の進退問題に発展する可能性もありそうだ。
不正会計に詳しい公認会計士は「問題が複数の事業部にまたがっているのであれば、東芝社内の内部統制が相当乱れている疑いがある」と指摘している。」
なお、第三者委員会のメンバーには、会計士協会の元副会長も含まれています。
「心より深くお詫び申し上げます」 田中社長、10秒近く頭下げ 会見詳報(産経)
東芝は会計問題で説明尽くせ(日経社説)
「工事進行基準は建設業や造船業などでも使われている。そうした業界では東芝の会計問題をきっかけに、基準が適切に使われているかどうかの再点検も必要だろう。」
東芝不適切会計、JPX日経400入れ替え難題に-6月末基準日(ブルームバーグ)
「ゴールドマン・サックス証券の松橋郁夫アナリストは14日付のリポートで、「今回の発表で調査対象がさらに広がる可能性をあらためて確認」と記述。電子デバイスや家電など他分野、工事進行基準案件以外の事業も対象となる可能性が示され、「過年度修正額が単独の一部インフラ案件500億円にとどまると考える根拠は乏しい」とした。同証では現在、十分な根拠が得られないとして投資判断を中断している。
JPX日経400のルールでは、選定基準日に整理銘柄、特設注意市場銘柄に該当する場合は除外するとしている。特設注意市場銘柄は、上場廃止基準には満たないものの、重大な上場規則違反を行った企業に内部管理体制の改善を促すものだ。
ただ、しんきんアセットの藤原氏は、東芝について「現時点では会計基準の相違というイメージで、オリンパスのような意図的・悪質なものではなさそう」と指摘。グローバルに活動している同社が「コーポレート・ガバナンスが著しく劣っているとは考えにくい」とみている。」
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