総会「無限定適正」、有報「限定付き」 根拠法が別々 投資家惑わす(記事冒頭のみ)
東芝の2018年3月期の監査意見が、会社法計算書類では無限定適正、有報では限定付となっていることを取り上げた記事。
「東芝の監査では、2017年3月期にPwCあらた監査法人と米原発事業の損失を巡る意見が対立。最終的に、あらたが米原発事業の損失問題を除けば決算は適切という「限定付き適正」を東芝に出す異例の展開になった。一連の会計問題は前の期で一段落したはずなのに、18年3月期の有報でも「限定付き」が出たことで、株式市場でも戸惑いが広がった。
今回、有報の監査意見が限定付き適正だったのは、有報は2期分の決算を記載しており、前の期との比較可能性が重要になるためだ。18年3月期の決算に問題がなくても、「比較対象となる17年3月期が限定付きで全てが正しいとは言えないため、18年3月期の監査意見が限定付きとなる」(大手監査法人)。
一方、株主総会の招集通知に添付している計算書類(決算)には18年3月期は「すべての重要な点が適正に表示している(=無限定適正)」と記載し、限定付きとは書いていない。計算書類は1期分の決算だけ記載しているためで、ここでは有報のように17年3月期との比較可能性は問題にならないというわけだ。
どちらも大事な法定開示なのに形式が異なるのは、有報は金融庁所管の金融商品取引法、計算書類は法務省所管の会社法とそれぞれ別の法律に基づいているからだ。金融庁と法務省は文書の文言などの共通化に着手しているが、監査意見の違いについては大きなテーマとはなっていないとみられる。投資家や企業の先行きを左右しかねない問題なのに金商法と会社法の盲点と言えそうだ。」
金商法に基づく有報の財務諸表も、以前は、2期分とはいえ、前期と当期の数値・注記が横に並んでいるだけで、会計監査も、それぞれ別個のものとして行われ、別々の監査報告書(前期分は前期の監査人・日付による)がついていました。しかし、2010年の監査基準改訂とそれにともなう財規等の改正による今のルールでは、前期の情報は、当期財務諸表の一部を構成する比較情報という扱いになり、会計監査も両方一体として対象とし、当期の監査人によるひとつの監査報告書だけとなっています。ひとつの監査報告書だけで前期もカバーするわけですから、前期の数字・注記がおかしければ、あるいは、前期に関する監査手続に問題があれば、無限定適正は出せないということになります。
会社法監査と金商法監査の本質的な違いによる差異というわけではなく、会社法計算書類が金商法と同じ比較情報方式による2期分開示になれば、監査報告書も同じになると思います。
それにしても「一連の会計問題は前の期で一段落したはず」という日経の認識は、東芝に対して甘すぎます。正式の会計監査人が正式の監査報告書において、東芝の2017年3月期の財務諸表には巨額の虚偽記載があったと指摘している(そして2018年3月期の監査報告書においてもその指摘は変わっていない)という事実をあまりにも軽く見ています。一流新聞である日経が、そんな認識だから、日本企業の粉飾が減らないのでしょう。
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