わたしを束ねないで
あらせいという花のように
白い葱のように
束ねないでください わたしは稲穂
秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色の稲妻
わたしを止めないで
標本箱の昆虫のように
高原からきた絵葉書のように
止めないでください わたしは羽ばたき
こやみなく空のひろさをかいさぐっている
目には見えないつばさの音
わたしを注がないで
日常性に薄められた牛乳のように
ぬるい酒のように
注がないでください わたしは海
夜 とほうもなく満ちている
苦い潮 ふちのない水
わたしを名づけないで
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつらえた座に
座りきりにさせないでください わたしは風
りんごの木と
泉のありかを知っている風
わたしを区切らないで
「、」(コンマ)や「。」(ピリオド) いくつかの段落
そしておしまいに「さよなら」があったりする手紙のようには
こまめにけりをつけないでください わたしは終わりのない文章
川と同じに
はてしなく流れていく 広がっていく 一行の詩
「わたしを束ねないで」
新川 和江作
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyob_uru.gif)
けど、kanoの教科書にはなかったような気がする
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kuri_3.gif)
あった?