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[短評]CNN a la francaise

2005-12-01 12:19:22 | マネー&ポリティックス
米英に対抗、“仏版CNN”が開局 (読売新聞) - goo ニュース
French channel set for 2006 start (BBC)
Chirac pushes global French TV (BBC 2003/3/30)


日本では、ヤフーやグーグル、アマゾンやeBayに勝てないとわかった「負け組」の「IT企業」という鎧を被った、
実質的には「インターネットで金儲けをした企業」が、インターネット専業を捨ててテレビ局を買おうという行為が
今年横行しました。そもそも、現時点でこうした企業の収益の半分は、ろくにサーバー保守ができないネット証券会社の
超格安な手数料と、某「危険なアネハ」よろしく適当な与信しか行わないローン会社という金融部門が占めているのに、
どうやったらそういう会社が「IT企業」と呼べるのかも疑わしいです。「放送と通信の融合」とは、つまりはテレビ局を買収して
帳簿上だけでもヤフーやグーグルと相対するまでになりたいという程度のことなのです。

その一方で、日本のテレビ局、ひいては日本そのものが海外に向けての情報発信力が高いかと言われれば、
お粗末なものと言わざるを得ません。例えば、NHKは世界向けに放送を流していますが、実際に放送されている内容は、
日本国内でNHKが放送しているものをそのまま日本語で流すというものが大半らしいです。それもニュース、朝ドラから
子供向け番組まで多種に渡りすぎていて、そこには世界に対する日本の視点というものはないと言われています。
ちなみに自分は例えばハワイに行ってまで日本のテレビを見たいと思わない人なので、あくまでもこの話は、
先日、日経新聞である著名な政治学者の方が話していたことを要約したものです。

情報提供力のなさを痛感したのはフランスも同じでした。2003年のイラク戦争を必死で止めようとしたフランスの
ジャック・シラク大統領は、CNNやBBCといった戦争推進国のメディアのせいで戦争へ突き進んだと考えました。
そこで、実際には2002年から計画されていたようですが、フランスにもCNNやBBCに匹敵するニュース専門の
テレビ局を作ろうと思い立ちました。フランス版CNNを作ることで独自主義を貫くフランス政府の情報発信を目立たせ、
ひいては外交の道具の1つにしようという狙いがあるのです。そうすることで、アメリカやその追従国に流れる
世論を何とか抑え込んで、フランスの政策こそがいちばんなんだと知らしめる機能を期待されています。

今の時点でも、CNNやBBCを日本でもCSやNHKのBSで見ることができる上に、有名なアルジャジーラや
中国でも全世界向けの英語によるニュース専門チャンネルを作る動きが続いています。
これら全てのテレビ局がその国の政府を代弁しているメディアであるわけではないのですが(実際のところ、
BBCはイギリス政府との仲がよくない)、少なくともその国の物の見方を基に伝えているという意味では、
その国の代弁者と言ってもいいでしょう。

そう考えると、テレビ局の株を買った買わないだとか、放送法の外資基準がどうだとかいう議論も重要かもしれないけど、
日本の外交ツールとしてのメディア戦略というものもいい加減構築していかなければと思われます。そうでなければ、
日本国内で「通信と放送の融合」が完了した頃には、日本の主張が世界と融合されずに埋没する、あるいは、
CNNやアルジャジーラ、中国のテレビ局の視点からしか日本の主張が融合されない時代になるかもしれません。


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