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[MLB短評]Heavyweight Series

2009-10-29 01:16:53 | MLB
ニューヨーク・ヤンキーズとフィラデルフィア・フィリーズのワールドチャンピオンになった数を比べたら、間違いなくヤンキーズが
上回っています。しかしこれを21世紀だけに限ったならば、フィリーズ1回に対して、2度ワールドシリーズに出場している
ヤンキーズは0回です。21世紀のヤンキーズは、20世紀終盤とは違い、どうにかこうにかしてプレイオフに出るのがやっとの
チームになってしまいましたが、今年のヤンキーズは、久しぶりにワールドチャンピオンを本気で狙うことができるチームなって
帰ってきました。そのヤンキーズが、昨シーズンの王者フィリーズを迎えて、現地時間28日からワールドシリーズが始まります。
いつもはバスでフィラデルフィアからニューヨークへやってくるフィリーズは、20世紀のスタイルでニューヨーク入りをしました。

Shades of 1950: Phillies Arrive in New York by Train (New York Times)

日本ではある1人の日本人選手がヒットを打つかどうかぐらいしか興味がない今回のワールドシリーズは、久しぶりに全米中から
大いなる期待を集めるシリーズとなりました。もちろんヤンキーズが出場するだけで盛り上がるのは明らかですが、ヤンキーズが
王者としてではなく、同じく東海岸を本拠地とする王者に対するという構図が、興味を駆り立てるのでしょう。デーブ・ウィンフィールドの
言葉を借りるならば、今回のワールドシリーズは、

It’s like a heavyweight fight, you have Ali and you have Frazier.

だと言えるでしょう。

おまけにここ最近は4戦でシリーズが終了したり、昨年のように雨で日程がずれまくってしまうなど、ワールドシリーズの興味を
低める要素が多く存在していましたが、今年こそは、今両リーグで本当に強いチームが相対することもあり、最後まで接戦に
なってほしいという願いが強いようです。そのあたりは生中継を担当するFOXもしっかりと皮算用をしています。

World Series should draw audience for Fox(Reuters)
Baseball Hopes to Break a Streak of Clunker Series(New York Times)


それにしても、今年のシリーズほど、明確な対立軸をたくさん持っているシリーズは近年まれではないかと思います。
その中でも、以下の2つは既に十分語られまくっているけれども、それでもまだ語り足りないものを感じさせます。

1. C.C サバシア vs クリフ・リー
Indians GM Mark Shapiro watches CC Sabathia and Cliff Lee shine (SI.com)
Cleveland alums Lee, Sabathia ready to clash in World Series (Sportsline.com)
Talented pals set for Bronx sequel (MLB.com)


どちらも左腕、どちらも優勝請負人として活躍し、そしてどちらも2年前にはインディアンズの先発投手としてプレイオフでは
ヤンキーズを相手にしていました。その翌年の途中、サバシアはプレイオフ争いをしていたブリューワーズへトレードされ、
今シーズンはヤンキーズに移籍しました。一方、1年おきに好調と不調の波が起きるリーは、2007年の不調ぶりから一転して、
2008年にはサイ・ヤング賞を獲得、この調子で行けば、今年のリーは「ダメダメクリフ」になるはずでした。しかしインディアンズの
首脳陣の予想を覆し、リーはシーズン序盤から好調を維持しました。一方、インディアンズのチーム成績も財政事情も絶不調。
そのため、リーはこの夏、フィリーズへトレードされました。

インディアンズのマーク・シャピロGMは、ポストシーズンに大活躍する2人を見て、いくらチーム事情で手放してしまったとはいえ、
苦々しい思いをしていました。今の調子のまま、サバシアとリーがインディアンズに残っていれば、2001年にヤンキーズを倒して
王者となったダイアモンドバックスのランディ・ジョンソンとカート・シリング並みの二枚看板になっていたはずです。一方当事者の
サバシアも、かつての同僚リーが相手チームにいることについて、

It’s weird. A couple years ago we were talking about pitching in the World Series together.
Now we’re in different clubhouses.


と話しています。

サバシアとリーが違うのは、クラブハウスだけでなく、投球スタイルにもあります。グイグイと速球で攻めまくり、早いカウントから
抑えにかかるサバシアと、大きな変化球を武器に投球の組み立てで打者をイライラさせるリー。三振を奪うとその闘志を表に出す
サバシアと、三振を奪っても比較的サバサバした表情でマウンドからダッグアウトへ走るリー。間違いなく現時点ではメジャー
最強の左腕ふたりがワールドシリーズ第1戦で投げ合います。2年前には誰もが予想しなかったことです。

2. アレックス・ロドリゲス vs ライアン・ハワード
2 Sluggers Are Having the October of Dreams (New York Times)


思い出してください。今年の2月、アレックス・ロドリゲスといえば筋肉増強剤の使用疑惑で有名となりました。その後ロドリゲスは
過去に使用したことを認めましたが、ことわざどおり、その後75日ほどはこの噂がロドリゲスの代名詞となり、もはやロドリゲスは
終わったとすら考えられていました。一方でロドリゲスはでん部の怪我によりプレシーズンを欠場し、スタメンに復帰したのは、
シーズン開幕後約1ヶ月半ほどでした。いきなり復帰戦の第1打席の第1球目を、オリオールパークのレフトスタンドへ打ったのは
確かに圧巻でした。

それでも、ファンやメディアの間では、ロドリゲスもステロイドと繋がっていることがわかってしまったため、「ポストステロイド時代」の
新しい強打者を求めるようになりました。その筆頭がライアン・ハワードでした。もちろんハワードはそれにふさわしい選手であることは、
誰もが疑うところがありません。典型的なスロースターターでもあるハワードですが、今年も気づけば45HR141打点を上げました。
かつてのような三振をしまくる打者からも脱皮しつつあります。

一方で、スロースタートをせざるをえなかった2009年のロドリゲスは、どちらかというといつものシーズンよりは目立たない存在で
シーズン終了まで過ごしたように感じます。確かに30HRを打ち、後半戦は打率も上昇しましたが、ロドリゲス効果はそのままそっくり
その前を打つ3番打者のマーク・タシェアラの好調さにそのまま反映された格好です。しかし、10月に弱いとされてきたロドリゲスは、
シーズン当初の長い休みが今ここに来ていい効果を産んだ模様です。最もピークが来て欲しいときにロドリゲス2009年のピークが
やってきたのです。

どちらのスラッガーも、シーズン中でいちばん力を発揮して欲しいときにそれぞれのピークがやってきました。この2人をどのように
抑えるのか、というより、この2人の前後を打つ選手をどう抑えるのかが、シリーズの雌雄を決するように感じます。それくらいに、
今のこの2人は手を付けられません。しかし、もしハワードがMVPクラスの大活躍をしたら、メジャーを代表するスラッガーという
称号はロドリゲスからハワードへ移るかもしれません。


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