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[経済短評]出口戦略と出口戦略っぽいもの

2010-01-30 13:00:58 | マネー&ポリティックス
ダボス会議、各国首脳から拙速な景気刺激策の解除をけん制する声(トムソン・ロイター)
米の金融規制案、各国が支持の声…ダボス会議(読売新聞) - goo ニュース
Seeing Light Through the Gloom in Davos(TIME.com)
新興国引き締めと日本株(トムソン・ロイター)


世界の政治と経済の叡智を持ち合わせている人たちは、スイスのリゾート地、ダボスに集合しています。
もしかしたら夏のサミットよりも重要な冬のサミット、「世界経済フォーラム年次総会」が行われています。

昨年のこの会議では、純白な雪を被った山並みを見ながら、リーマンショック後の暗黒の世界経済を
どのように引き上げていくべきかが話し合われました。あの頃に比べたら、世界経済はある程度回復を
してきました。一部に存在した景気の二番底に対する懸念も和らいできました。しかし、その回復度合は
相当違いが出ているのも確かです。例えば中国は高い経済成長をなしとげている一方、日本はデフレの
脅威が立ちはだかっています。中国の経済成長の恩恵を受けているオーストラリアは、先進国の中で
いち早く利上げを実施した一方、アメリカでは低金利政策を維持せざるを得なくなっています。

アメリカのバラック・オバマ大統領は、自身初となる今週の一般教書演説

Washington has been telling us to wait for decades, even as the problems have grown worse. Meanwhile,
China is not waiting to revamp its economy. Germany is not waiting. India is not waiting. These nations --
they're not standing still. These nations aren't playing for second place...I do not accept second place
for the United States of America.


と述べたように、経済が好調な国はその勢いを止めることをしません。アメリカの失業率が二桁であろうとも、
日本がデフレに喘いでいようとも、中国はそれらの国を待つことなく経済成長の道を歩きます。恐らくこれから
景気回復を成し遂げた国はどこもそうするでしょう。世界が同じように右肩上がりの経済成長をするということは、
もはやありえない時代になったのだと思います。もしくは、成長の角度が経済主要国の中でくっきりと差が出る
時代になっていくように感じられます。

それを端的に表しているのが出口戦略の行方です。中国では経済成長に伴ないバブルの懸念も出てきました。
そのため金融引き締め策をちらつかせてきました。それが世界の経済成長の足かせになるとして、株式市場は
上値を抑えられています。また、経済の足腰がしっかりしていない欧州諸国では、1年前には経済回復をするか
どうかに疑心暗鬼になっていましたが、今では、一部から景気回復後のバブルに対して恐れをなし、出口戦略、
つまり利上げをいつすべきかどうかが議論出されています。

そのような議論の一方、ダボス会議では、出口戦略に対して牽制論が出ています。仮に将来的にバブルが
起こるとしても、今の経済回復は「広さは1マイルに拡大しているが、その深さは1インチ」というカナダの
ハーパー首相の言葉に集約されるからです。一方でいつまでも景気刺激策を続けていけばバブルに繋がるため、
「(景気刺激策の解除は)早すぎても遅すぎてもいけない」(国際決済銀行のカルアナ総支配人)のです。
出口戦略はバブル経済を事前に抑えるのと同時に、景気回復との同義語になりかけている面があるように思います。
しかし仮に経済成長率が高いものであるのであれば、世界がまだ金融恐慌から立ち直れていない以上、その牽引役を
引き受ける必要なあるのかもしれません。

しかし、中国やインドが出口戦略を進めようとする中で、オバマ大統領は先ごろ、金融機関への規制策を出しました。
一般教書演説でも、金融機関から徴収した税金を元手に、地方の金融機関を通じて中小企業へ融資を行う法案を出すと
発表しました。その理念自体は悪くはないと思うのですが、それ以前に、アメリカ政府が考えている金融規制策が、
将来的な金融機関の収益構造を変えざるを得なくなるとの考えから、株価の上値を抑え、ひいては景気回復に冷水を
浴びせかるのではないかと懸念も出ています。アメリカではFRBがまだ利上げをする意思すら見せていませんが、
その代わり、ホワイトハウスが打ち出した金融規制策がアメリカにおける出口戦略になりかけているように感じます。
この規制策は欧州諸国を中心に受けがいいようですが、出口戦略と同様に今行う必要があるかという議論はどこにも
存在しないようにも思えます。しかし仮に規制すべきだとしても、その適用場面を間違えてしまえば、かつてのような
金融バブルが発生する可能性もあります。

出口戦略も、出口戦略のようなものも、その実施は景気の状況を見ながら慎重である必要があると思います。
ダボスの雪と違い、思いっきり冷え込んだ経済の雪解けは必ずしもすぐそこではないのです。


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