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[国際政治短評]Survivor -Korean Peninsula-

2010-12-20 22:21:03 | マネー&ポリティックス
UN Security Council in Emergency Talks on Korean Tensions (VOA.com)
South Korea orders residents to take shelter in anticipation of drills (CNN.com)
North Korea 'will not hit back' over Yeonpyeong drills (BBCnews)


もしかしたら、2010年12月20日は朝鮮戦争の再開の日、と歴史に刻まれるところだったのかもしれません。
幸運なことに、「今のところ」はそのような日になることはなさそうですが、ここにいたるまでの24時間は、
関係国の「かくし芸」が披露されました。

もともとは韓国が海上国境線付近で軍事演習を行うことに対し、北朝鮮が徹底攻撃を加えるという、この半島では
よくある心理戦を端に発しています。ただし、11月に起こった北朝鮮の延坪島への砲撃により、心理戦および
口喧嘩は武器を持った戦いになる可能性が高まっています。そのため、西側諸国は通常の北朝鮮の挑発以上に
今回の成り行きを真剣に見守っていました。通常、このようなニュースをトップでは扱わないBBCやCNNですら、
「北朝鮮がソウルを攻撃か」と言わんばかりの取り上げ方をしていました。

そこに出てきたのがロシアと中国です。韓国が軍事演習を諦める様子を見せないと見て、ロシアは国連安保理を
緊急招集しました。だいたい北朝鮮の砲撃からあと少しで1ヶ月経過するのに、どこが「緊急」なのかも不明ですが、
むしろロシアが気にしていたのは、北朝鮮の行動より韓国が予定している行動でした。4月の潜水艦沈没事故を
含めて、本来であれば責められるべきなのは北朝鮮のはずです。しかし、ロシアと中国が国連本部で自制を
求めたのは韓国であるのは明らかでした。そのため、8時間を掛けて行われた緊急協議が物別れに終わっても、
何も不思議ではありません。北朝鮮を非難する声明が中国によって妨害されたからです。

非民主的国家といってもいいロシアも中国も、朝鮮半島情勢に対して何か解決策を出す「ふり」をしているにすぎません。
ただしその実は国際的な民意とは反し、あたかも隣国を攻撃した北朝鮮ではなく、自国領土内で軍事演習という
自衛行為を行おうとする韓国が21世紀の火薬庫に火を付けかねない、そう言いたげです。アメリカやイギリスなど、
別の常任理事国がロシア、中国の「連合体」に反対するのも当然です。同時に、この8時間だけで、今の国連が他国を
攻撃する国家に対して何も口出しをできないことをまざまざと証明することになりました。朝鮮半島には未だ冷戦構造が
残っていると言われていますが、国連安保理の主役5カ国も、38度線をめぐる攻防では冷戦期と同じような構図を
見せています。

こうして国連が何もできないまま、韓国は霧が晴れるのを待って、予定通りの演習を始めました。かつての韓国の政権は
「太陽政策」と称して北朝鮮へアメを送りまくりましたが、それが北朝鮮から砲弾の雨となり降り注いできました。
そのため、韓国は今のようなギリギリな軍事的誇示を行うことでしか、北朝鮮を明せさせる方法がないのです。外交交渉の
道は一応残しつつ、国内的にも国際的にも、韓国は北朝鮮からの脅しに屈しないことを示し続ける必要があります。

そのことは、何度となく「ソウルを火の海にする」と脅す北朝鮮も同じことでした。韓国の演習が始まる前、北朝鮮は軍隊に
高い警戒態勢を敷いていました。ところが、韓国の演習が終わるや否や、「あれは韓国へ攻撃するに値するほどの演習では
なかった」と言い出しました。北朝鮮としては、執拗に脅し続けることで韓国がどう動くのかを見たかったのでしょうし、
これにより、演習に批判的なロシアや中国から、韓国に対する失望を引き出すことができたので、よかったと思ってるはずです。

かつて、本当の武器をチラつかせつつ、メディアの宣伝合戦などで心理戦を展開してきた南北朝鮮は、本当の武器を使うことで
心理戦を行いだしています。そこに周辺国の利益と、和平へ導こうと演技をすることで、北東アジア全体の主導権を奪おうをする
思惑が渦巻いているようです。この姿はちょうど1世紀前のバルカン半島とも似ているように感じます。そこにあるのは、
和平の道よりも生き残りの道なのかもしれません。


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