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[MLB短評]Class Act

2011-10-18 23:08:47 | MLB
Pujols' gesture helps fans salute Prince (MLB.com)
Fielder ready to test the open market (Milwaukee Journal Sentinel)
Brewers have several holes that need to be addressed (Milwaukee Journal Sentinel)


ミルウォーキー・ブリューワーズが2011年シーズンのディビジョン優勝を決めた現地時間9月23日の夜、ファンがミラー・パークから帰宅しようとするプリンス・フィルダーのそばからなかなか離れなかったそうです。もちろんシーズンを通じて活躍したフィルダーをねぎらう気持ちがあってこそでもありますが、同時にファンはフィルダーがミルウォーキーから離れて欲しくないという気持ちを正直すぎる形で表していたのだと思います。

優勝が決まる数日前、フィルダーは今シーズンがミルウォーキーでの最後であると自ら語ったと報道されました。なぜそうした発言をあえて行ったのかは本人のみ知るところでしょう。しかし、ブリューワーズのもうひとりの「プリンス」であるライアン・ブラウンが今シーズン途中に長期契約を結んでもらったのとは対象的に、チームはフィルダーへはなかなかオファを出そうとはしませんでしたし、今もその様子はありません。その中でフィルダーはチームは自分を評価していないのではないかと考えるようになった、というのが一般的な見方です。

フィルダーはポストシーズンも活躍をしました。ナショナルリーグのチャンピオンシップ第1戦、5回裏に右中間へ放った一発はブリューワーズのファンならばきっと忘れることはないでしょう。その活躍はカーディナルスのアルバート・プーホールズと同じく、ワールドシリーズ終了後、フリーエージェント市場での「活躍」をも保証するかのようでした。しかしチャンピオンシップの後半、カーディナルスはポストシーズン打率5割のブラウンで勝負を決するのは半ば諦め、フィルダーへのマークが厳しくなり、思うようなバッティングをさせてもらえませんでした。シリーズ通じて不安定だった先発陣、第5戦、第6戦でのお粗末すぎる守備もさることながら、ブリューワーズのチャンピオンシップ敗因の要因は、フィルダーがシリーズ後半で抑えられたことにも尽きます。ただしそれはフィルダーが怖い打者ゆえ受ける試練でもあるのです。

大量点差が付いたミルウォーキーでの第6戦の8回裏、先頭打者としてフィルダーが打席へ向かいました。その前からファンは立ち上がってフィルダーの姿をカメラに収めていました。そしてフィルダーは「ブリュークルー」として最後の打席に立ち、1球目を待とうとしました。そのときタイムが掛かりました。それを求めたのはプーホールズでした。それはブラウンいわく"Crazier things have happened"と呼ぶほどのことです。

プーホールズは今シーズン開始前からフィルダーと同じように今シーズン終了後の動向を注目され続ける中、チャンピオンシップまで勝ち上がりました。プーホールズにはフィルダーの気持ちも、フィルダーに離れて欲しくないというファンの気持ちもわかるのでしょう、試合後このタイムについて次のようなコメントをしています。

I've been in that situation in St. Louis with the best fans in baseball, and I wanted Fielder to get a great standing ovation. He's done so well for this organization, and I'm pretty sure he'll be back."

そのようなプーホールズのコメントに反して、ファンもメディアも、そしてチーム社長も、フィルダーは来年ミルウォーキーでプレイしないことは覚悟しています。それどころか、地元メディアでは早くもフィルダーが去った後の資金をどのように有効活用して、内野の守備の強化とブラウンの後ろを打つ選手を獲得すべきかが焦点となっています。

ただ、現実的な問題は別としても、プーホールズが行ったさほど大げさではないジェスチャーは、プーホールズの大きな心となぜプーホールズが既に偉大な選手なのかを表現していると思います。それは真似しようと思ってもできないくらいの自然な行為、本当の敬意から生まれた行為なのでしょう。ブリューワーズのファンは、特にこの第6戦のほとんどをカーディナルスとブリューワーズ両方に対してイライラする時間を過ごしましたが、このひとときだけは救われたように思えました。CrazierでもありGreaterな瞬間でした。


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