goo blog サービス終了のお知らせ 

そのさきへ -Deep Sky Blue version-

このブログは引っ越しています

[経済短評]株価の消極的上昇

2010-03-29 22:52:36 | マネー&ポリティックス
〔兜町ウォッチャー〕実感乏しい日経平均高値更新、実質新年度入りで勢い継続の思惑も(トムソン・ロイター)
久しぶりに注目される日本株(ロイターブログ)


週末に近所の遊歩道を散歩していたら、寒空の下「さくら祭り」が行われていました。肝心の桜はまだ満開とは
言えない状況でした。それでも「さくら祭り」は予定通り挙行され、ささやかながらも屋台が出ており、桜の木の
根元では花見の宴会も行われていました。

今の日本経済、もっといえば日本株の状況もこれに近いのではないかと思いました。ほんとどのメディアでは
報道されませんが、今、日本株は上昇しています。今日(3月28日)は平均株価上では下落になりましたが、
権利落ち日の関係で株価が目減りしただけであり、実質は上昇したのと同じです。

しかし、メディアの報道が少ないことだけが、日本株の上昇への関心が薄い原因ではありません。平均株価が
7週連続で上昇しながらも、その上げ幅は1000円足らずであったり、国内の機関投資家の買いが細っていたりと、
「何となく上昇している」といってもおかしくない状況です。実際、今の株価の上昇は海外投資家が牽引している
ところが大きいのですが、その理由も「諸外国に比べて上昇率が低い」であったり、「ひところの過度な円高に
比べて安定して円安になり、日本の輸出企業が恩恵を受けている」という、世界経済(特に中国)のおかげだという
理由がまかりとおいっています。

企業業績もひところの最悪期を脱しており、経済指標のなかには改善を示すものもありますが、一方で平均株価が
一時的に1万1千円を超えた日本時間の26日午後、BBCはこのような見出しの記事を流し、まだまだ日本経済は
脆弱であることを報道しました。

Japan's consumer prices continue to fall (BBC News)

今の株式市場の状況を先ほどの花見に例えるとこんな感じでしょう。「平均株価」という桜の花が咲き、その下で、
無理矢理にささやかな宴が行われている、しかし実際の天気は寒きて曇っている、そしていつ雨が降りだし、
満開になっていない桜の花びらが散っても不思議ではない・・・

実際のところ、今の株式市場の上昇は積極的な「日本買い」とは言うべきではないでしょう。円安であったり、
世界経済の回復(期待)であったり、テクニカル面での理由であったりと、それらはどれも「日本が○○だから、
日本株を買おう」という理由ではありません。むしろ、ここ20年と同じように、日本に期待して買う向きなど皆無と
言うべきではないでしょうか。

それも仕方ないでしょう。政治は相変わらず安定しませんし、改革を期待された民主党政権は政治不信と疑念を
抱きかねない政策ばかりに気を取られ、経済対策を打ち出すことができません。それどころか内閣は一方的に
デフレを宣言しながらも、日本銀行に対して、あたかもデフレを克服する「金融政策」ではなく「景気対策」を出すよう
要請しているように映っています。おまけに、海外投資家が評価した郵政民営化が逆戻りするなど、それらからは
およそ今後の日本経済が前向きになるような要素は見つかりません。民主党政権は内需拡大を標榜しながらも、
実際のところはこれまでと同じ堅調な輸出に景気回復を期待せざるをえず、赤字拡大と人口減少、社会保障と
将来への不安も一切払拭されないまま、内需はしぼむ一方です。

そして、まもなく日本では参議院選挙が行われます。今の内閣支持率や政権の迷走ぶり、その他もろもろの要素を
考慮すると、与党の負けは結果を見るまでもないでしょう。そうなればまた国内政治は不安定化を招きます。
それはそのまま海外投資家に日本株を売る理由を与えるのと同じです。その頃までには海外投資家は日本株で
十分に利益を得ているはずですので、もっと将来性のある市場であったり、ギリシャ危機からの回復が見えてくるで
あろう欧州への投資に振り分けるのではないでしょうか。そのときに、海外投資家は「日本の政治が不安定だから」
日本株を売り推奨にしたと、もっともらしい理由を捏ねるのです。今の市場は、実態よりも信じるに足る理屈があれば
売り続けることも買い続けることも可能なのです。日本の市場はその理屈に振り回される点では世界最大であり、
かつ最も標的にしやすい市場でしょう。

確かに日本株は「久しぶりに」注目を浴びているかもしれませんが、注目を「浴び続ける」ことは今の状況下では
ほぼ難しいでしょう。それどころか、すぐに「やっぱり忘れ去られた日本株」に逆戻りすることも十分考えられます。
「今の日本は○○であり、将来的にも明るいから日本株を積極的に買える」という理由を与えることができない限り、
日本株が上昇を続け、かつ、日本経済の本当の復活もありえないでしょう。

今の日本は、桜が満開になる前に、桜が散りそうです。


最新の画像もっと見る