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「クレメンス対マクナミー」を超えて

2008-02-17 16:32:44 | MLB
D.C. debate: Was hearing necessary?(MLB.com)
Congress has good reason to intervene with baseball(SI.com)


今週はバレンタインというイベントがありましたが、その前日に、ロジャー・クレメンスはとても苦い経験をするため、
ワシントンの下院で宣誓の下で証言を行いました。その場でクレメンスは、下院議員、全米のファンだけでなく、
元専属コーチ、ブライアン・マクナミーとの対決を強いられました。要点はズバリ、クレメンスは過去にHGHやステロイドを
使ったことがあるのか、という、このオフシーズンずっと言われ続けたことです。

CNNでも生放送された3時間の公聴会で、クレメンスは当然ながら使用を否定、一方のマクナミーは、臆することなく、
その反対の事実を述べました。つまり、宣誓の下で証言を行いましたので、どちらかは偽証していることとなりました。
この公聴会の前に、クレメンスの親友、アンディ・ペティートがクレメンスに不利な事実を証言したことが明らかになり、
今回の公聴会で、クレメンスがそれに対して反証できなかったところと併せて、クレメンスがノーアウト満塁の状況に
陥ったと言われています。また、主要スポーツメディアの簡易アンケートでも、マクナミー支持がクレメンス支持に
勝っている格好です。

しかし、クレメンス対マクナミーという見方は、それ自体がどことなくおかしいのです。仮にクレメンスが偽証したと
判断されても(マクナミーの弁護士は、クレメンスは仮に偽証罪で起訴されても、親友の現大統領から恩赦を与えられると予想)、
マクナミーがクレメンスへ薬物を与えたことは事実として残ります。偽証したか真実を述べたか以外、クレメンスもマクナミーも
同罪なのです。マクナミーも証言の中で「自己満足を得るために行っているわけではない」と話してますが、その通りです。
「クレメンス対マクナミー」は図式としてはわかりやすいですが、見世物や勝ち負けではなく、今後の薬物問題の教訓とすべき
ものではないかと思います。でなけれぱ、300勝投手が偽証した公聴会の域を越えません。

そういえば、以前、MLB制作のテレビ番組で、クレメンスとマクナミーがかなりハードなトレーニングをしている様子が
紹介されましたが、あれは一体何だったのでしょうか。

一方、ここに来て、あの公聴会自体が必要なものだったのかという意見すら出てきました。昨年末、怖いクリスマスプレゼントと
された「ミッチェル・レポート」が出る前、クレメンスは薬物を使用したことを自ら認めれば、名前を公表しないと言われたそうです。
クレメンスはそうしなかったから、今があるのですが、ある下院議員曰く、今回の公聴会は、クレメンスが言いたいことを言うために
与えられた、と。言うなれば「1日早いバレンタインプレゼント」でしょうか。また、これは3年前のステロイド疑惑での公聴会でも
言われたことですが、そもそも議会がメジャーリーグの薬物問題を扱うべきなのかという疑問も沸いてきました。

前者の問題はともかく、後者の問題は、フランク・デュフォードが言うように、議会が介入する意味はあると思います。
スポーツ省に相当する行政機関がないアメリカにおいて、プロスホーツは文化を越えた一大産業です。薬物問題にしろ、
NFLのスパイゲートにしろ、コート上の公平を揺るがし、ひいては産業そのものの衰退に繋がりかねないような問題には、
どこかが監視をすべきであり、アメリカでは議会や司法が担っても不思議ではないと思います。

ただ、日本ではスポーツ界の問題には政治が介入すべきという考えすら出ません。プロ野球の再編問題のときもそうだったし、
「国技」相撲での傷害事件と一連のゴタゴタのときもそうでした(文部科学大臣がコメントした程度)。やはりこのあたりは、
両国のスポーツに対する見方の違いなのでしょうか。

なかのひと


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