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[短評]TOC beats TOB

2007-07-25 17:14:51 | マネー&ポリティックス
ダヴィンチのテーオーシー買収戦、安易なMBOに一石(ロイター) - goo ニュース
ダヴィンチの敵対的TOB失敗 経営・買収、双方にノー(産経新聞) - goo ニュース
ダヴィンチTOB:識者はこうみる(ロイター) - goo ニュース


今回のケースは、TOCが経営陣による買収(いわゆるMBO)を仕掛けたところから始まります。
ダヴィンチはMBOの買い取り価格が安いとして反対し、結局、MBOは2割以下の賛成を得ず、
失敗に終わります。MBOは非公開会社にするという究極の買収防衛策だとも思えますが、
一方では、例えばレインズ・インターナショナルのMBOのように、一部の一般株主から
訴訟を起こされることがあるように、傍から見ると「安易な」防衛策とも受け取られます。

これと同時に、ダヴィンチがTOCにTOBを仕掛けます。当然TOCのMBO価格よりも上乗せした
価格で買い取ることを表明しました。自分はTOCの株主ではないので、ダヴィンチが
どのようなことを提案したのかは詳しくわからないですが、さまざまな話を総合すると、
ダヴィンチの提案は、玄人には受けて、素人には受けなかった(もしくはわかりにくかった)、
ようです。先ごろのスティール・パートナーズの時と全く同じとまではいかなくとも、ダヴィンチも
具体的にTOCへのTOBが成功したら何をしたいのかを、わかりやすく説明すべきだったというのが、
ロイターが取材した大和総研と野村證券金融研究所の方の共通した意見だと思います
(大和総研の方は、敵対的TOBだという理由だけでダヴィンチ側に付かなかった「機関投資家」も
どうなんでしょうね、という見方もしているようです)。

ただし、今回のTOB失敗を見て、やっぱり日本は投資会社に対して冷たいから、外国からの資金が
入ってこなくなるという声も出そうですが、そういう決まりきったことを言う人は間違いなく、
外国の投資会社の手先でしょう。産経新聞は「TOBが成立するにはまだまだ未成熟な日本市場」と
書いていますが、TOBが次々と成立すれば成熟した市場なのでしょうか?今回TOCの特に一般株主が
どう判断してTOBの賛否を決めたのかはわからないですが、先の野村證券の方はこう見立てています;

TOBで70%近いプレミアムを乗せたから良いではないかという説明は、
アングロサクソン流には割り切れても、日本の投資家にとっては、
まだもう少しかみ砕く必要があると思う。


ん~、なるほどねと思います。日本人の中には、金だけがすべてではないという考えがある以上、
TOBの価格がどうこうというのは、判断材料の全てではなく一つに過ぎないのかもしれませんし、
そういう考え方があっても不思議ではありません。日本市場が完全にオープンだとは思わないけど、
TOB失敗を日本市場の閉鎖性に結びつける人は、日本人はアングロ・サクソン的な考えを持てと
言いたいのでしょう。

今後もTOBの数は減ることはないでしょうが、TOBの成否や成立数ではなく、TOBの中身自体で
成熟したかしないかが決まるのではないかと思います。個別の案件ならともかく、TOBや買収防衛策の
存在自体に白黒をつけたがる最近の流れにはどうも乗れない自分がいます。


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