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[MLB短評]不思議な不思議

2008-09-20 10:11:59 | MLB
イチローの8年連続200安打、米メディアは冷淡(読売新聞) - goo ニュース

アメリカ人は数学は苦手だからか、わかりやすい数字を出されると、逆に何でも納得してしまいます。
スポーツニュースや中継を見ていても、細かいところの数字がどんどん出てきます。そうだからこそ、
メジャーリーグの世界でも「セイバーメトリック」なる数字による選手の評価法が生み出されました。
いつの間にか、スポーツはすなわち記録であり計算式になってしましました。個人的にはそうした
見方や評価にはあまり食指が向かいません。あまりにも人間味がないからです。

それはともかく、イチローがメジャー入団後、8年連続200本安打を達成しました。もちろんアメリカでも
イチローは高く評価されていますし、この記録自体も素晴らしいことは議論の余地はないでしょう。

しかし「メディアが冷淡」なことには何も驚くことはありません。何せ、5月末にプレイオフ争いから
脱落した西海岸の中都市にあるチームのスター選手がシーズン中に何本ヒット打とうと、東海岸の
メディアには興味がありません。シアトルは日本からは近いアメリカ本土の都市かもしれませんが、
ニューヨークから見たら、ロンドンよりも遠い、はるか先にある都市なのです。とリビアを追っかける
記録好きなファンやその手のデータ収集会社にしか興味がない記録です。

そうでなくても、この時期はメジャーリーグではプレイオフ争いが激しくなり、カレッジフットボールや
NFLも開幕し、スポーツ界が忙しい季節です。MLBの個人成績に関しても、投手の勝利数や打者の
ホームラン数、あるいはMVP争いなど、もっと派手さがあるものが好まれる季節です。ただ単に、
8年連続で200本を打った、程度では注目度が低くても不思議ではありません(さすがにイチローが
年間安打数を更新したときには、東海岸メディアでも大きく取り上げましたが)。

むしろ、日本メディアがイチローだの松坂だの松井だのと、日本人選手の個人成績を追っかけすぎです。
日本人選手が本格的にメジャーリーグでプレイするようになってから13年経ちますが、日本メディアの
報道の仕方は未だに成長が見られないのです。そうした報道を待つ国民が多いので、それが100%ダメだと
言いたくはありませんが、それにしても、個人の成績に重きを置きすぎで、コアなファンにしてみれば、
物足りないなんていうレベルではありません。

その一方で、東海岸のメディアが「ヤンキーズのプレイオフ進出の芽は絶たれた」と書く横で、
つい最近まで、日本のメディアは「ヤンキーズ奇跡のプレイオフ進出に向けてうんぬん」と堂々と
書いていたことには、違和感を持たざるを得ませんでした。

イチローがプロ入り3000本安打(と、この記録を達成したレンジャーズのスタジアムでは紹介された)を
成し遂げたときに、産経新聞が果敢にもピート・ローズにインタビューしました。ローズはイチローの
才能をたたえながらも、優勝争いができる東海岸のチームでプレイしたらどうだ、と提言していました。
イチローは今でも記録になる選手ではありますし、気が早いですが、引退したときにその記録を見て、
アメリカ中のファンが畏怖の念を覚えるはずです。しかし、ただでさえ目立たないシアトルという土地の、
機能不全状態が何年も続くようなチームで、ひとりヒットを打ちまくっていても、記憶になる選手と
なりえるのかは不明です。ファンタジー・ベースボールの世界では生き残っていくでしょうが。

メジャーリーグとても信じられない話
ロバート・ホワイティング
文藝春秋

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