The biggest rules change since the DH is coming soon(SI.com)
Selig expects replay announcement 'very shortly'(SI.com)
Fear forces MLB to move rapidly on replay(FOXSports.com)
アメリカの野球実況では、フェンスぎりぎりでホームランになることを、かつて"Chinese Homer"と
呼ばれていました。体力のない中国人ならば、フェンスまでボールを運ぶことが精一杯だろう、
という考えなのでしょうが、さすがに差別的な意味があるからなのか、中国が経済的だけでなく、
ヤオ・ミンみたく、体力面でも力をつけてきたからか、今ではそうした表現はほとんどありません。
その中国の首都、北京オリンピックの直前に、野球のルール変更が急遽行われたことで、無駄に激怒を
している某国の監督がいます(試合中にも無駄に激怒をして罰金を命じられた)。一方メジャーリーグで
「指名打者制度以来、もっとも重要なルール変更」と言われる、ビデオ判定がいよいよ現実になろうと
しています。
今回のビデオ判定でレビューできるプレイは、いわゆるホームランかそうではないか、に限られます。
ポール際の打球や、いわゆる"Chinese Homer"、ボールがフェンスを越えたのか、ファンが身を
乗り出してボールを奪い取ったのか、などに限定されて、たとえば、ボール/ストライク判定には
用いられません。また選手や監督が判定の再考を審判にゆだねられず、審判の決定で行い、
ニューヨークにある"war room"と呼ばれる、全試合を監視している部屋で判断が加えられます。
メジャーリーグでは、特に今年に入り、ホームラン/ヒットの判定で揉めるシーンが多くなりました。
ネットで観戦した現地木曜日のジャイアンツ@アストロズ戦でも、8回裏に同様の場面がありましたが、
このときは、監督が出て揉めるほどではなく、審判団の判断のみでヒットとされました。
この騒動は、たまたま全国中継だった5月のメッツ@ヤンキーズ戦だったことが事態を大きくさせたと
思います。このときは、カルロス・デルガドがレフトのポール際に放った一発が、最初ホームランと
判定された後、デレック・ジーターが抗議をし、この試合の主審だった「あの」ボブ・デビットソンが
ファールと判断し直しました(実際は審判団にそのように説き伏せた、らしい)。
実際、この試合の前より「疑惑のホームラン」は多くあったし、昨年GMたちは25-5でビデオ判定に対し
賛成票を投じています。しかしおもしろいもので、この5月の試合以降、疑惑のホームランが起こると、
ほぼ必ずスポーツニュースでそのシーンが流されるようになりました。福知山線の脱線事故の直後、
毎日のように電車がオーバーランしたというニュースが流れたのと似ています。
野球というスポーツがほかのスポーツと比べて特異なところは、スポーツを行うフィールドの大きさが
決まっていないことです。内野の大きさやマウンド-ホームベースなどの距離は決まっていますが、
両翼やセンターまでの距離、また外野の形やフェンスの高さなど、そうしたものには正確な数値での
縛りがありません(国際試合を行うことができる球場の基準はあるが、それでも形までの縛りは
ありません)。だからこそ、あれだけ個性的なスタジアムが多くできるわけです。
同時に、野球は伝統的に「判定ミスも試合の要素」と考えられてきました。NFLやNBA、NHLでは
次々とビデオ判定が用いられながらも、野球界ではそうしたシステムがなかったのは、この考えが
一因だと考えれられています。また現在のコミッショナー、バド・セリグも、元来、その考えに近かった
と言われています。
しかし、今年の5月のあの日以降、次々と起こるようになったホームラン判定でのゴタゴタに対して、
セリグはFOXスポーツが言うところの「Fear」に襲われます。あのような判定がワールドシリーズで
起ころうものであればどうなるのか、というのです。それを言うのだったら、1998年のALCSで
起こった「神の手」ホームランはどうなのでしょう?と聞きなおしたくもなりますが。とにかく、
オールスターゲームでも白黒をはっきりさせるルールに変更させたセリグの考えです。
そして現在開催中のオーナー会議で、セリグは「どの球場でもビデオ判定の用意が整っている」と
まで言い出しました。最初の予定では、この8月にも導入するのではと言われていましたが、
現時点では、今シーズン中、あるいは、アリゾナ・フォール・リーグから導入とも言われています。
とにかく、2009年シーズン(もしかしたら来年のWBCでも)からはビデオ判定は行われます。
これは決定事項でしょう。
このルールの変更で言えることは、まず、これはルール変更であり、作戦の変更にはならない、
ということです。指名打者制度はどの選手を出すかという作戦の根本に影響を与えましたが、
ボールの行方は誰にも操作できるわけではないので、このルールが導入されたことによって、
チームの作戦がどうなるというものではありません。これが指名打者導入時と決定的な違いです。
もうひとつは、この制度の良し悪しはともかく、野球界はいまだにアメリカ中心なんだなということです。
オリンピック直前のタイブレイク導入も、国際野球連盟のアメリカ人会長からの提案でした
(この制度は試合の時間短縮を狙ったものと言われますが、一方でビデオ判定は時間を要する制度と
考えられているのが、また皮肉なものです)。アメリカの国技である以上、いまやアメリカが
世界を主導できる数少ない要素のひとつであっても不思議ではありませんが、「メジャーでは
ビデオ判定を導入したのだから、日本球界も導入すべき」という声が上がってしまうことが、
正直なところ、情けなく思います。世界的にはマイナーなスポーツとはいえ、野球界ですら、
発言権の低い、ルール導入、WBCの開始ひとつとってもアメリカに振り回されてしまう、
日本球界の競争力のなさと、視野の狭さを感じてしまうのです。
いずれにしても、ファンはビデオ判定を求めるようなホームランを求めていません。気分のいい、
どでかいホームランが出る試合を期待しているのです。もちろん、筋肉増強剤に頼らないものを。
Selig expects replay announcement 'very shortly'(SI.com)
Fear forces MLB to move rapidly on replay(FOXSports.com)
アメリカの野球実況では、フェンスぎりぎりでホームランになることを、かつて"Chinese Homer"と
呼ばれていました。体力のない中国人ならば、フェンスまでボールを運ぶことが精一杯だろう、
という考えなのでしょうが、さすがに差別的な意味があるからなのか、中国が経済的だけでなく、
ヤオ・ミンみたく、体力面でも力をつけてきたからか、今ではそうした表現はほとんどありません。
その中国の首都、北京オリンピックの直前に、野球のルール変更が急遽行われたことで、無駄に激怒を
している某国の監督がいます(試合中にも無駄に激怒をして罰金を命じられた)。一方メジャーリーグで
「指名打者制度以来、もっとも重要なルール変更」と言われる、ビデオ判定がいよいよ現実になろうと
しています。
今回のビデオ判定でレビューできるプレイは、いわゆるホームランかそうではないか、に限られます。
ポール際の打球や、いわゆる"Chinese Homer"、ボールがフェンスを越えたのか、ファンが身を
乗り出してボールを奪い取ったのか、などに限定されて、たとえば、ボール/ストライク判定には
用いられません。また選手や監督が判定の再考を審判にゆだねられず、審判の決定で行い、
ニューヨークにある"war room"と呼ばれる、全試合を監視している部屋で判断が加えられます。
メジャーリーグでは、特に今年に入り、ホームラン/ヒットの判定で揉めるシーンが多くなりました。
ネットで観戦した現地木曜日のジャイアンツ@アストロズ戦でも、8回裏に同様の場面がありましたが、
このときは、監督が出て揉めるほどではなく、審判団の判断のみでヒットとされました。
この騒動は、たまたま全国中継だった5月のメッツ@ヤンキーズ戦だったことが事態を大きくさせたと
思います。このときは、カルロス・デルガドがレフトのポール際に放った一発が、最初ホームランと
判定された後、デレック・ジーターが抗議をし、この試合の主審だった「あの」ボブ・デビットソンが
ファールと判断し直しました(実際は審判団にそのように説き伏せた、らしい)。
実際、この試合の前より「疑惑のホームラン」は多くあったし、昨年GMたちは25-5でビデオ判定に対し
賛成票を投じています。しかしおもしろいもので、この5月の試合以降、疑惑のホームランが起こると、
ほぼ必ずスポーツニュースでそのシーンが流されるようになりました。福知山線の脱線事故の直後、
毎日のように電車がオーバーランしたというニュースが流れたのと似ています。
野球というスポーツがほかのスポーツと比べて特異なところは、スポーツを行うフィールドの大きさが
決まっていないことです。内野の大きさやマウンド-ホームベースなどの距離は決まっていますが、
両翼やセンターまでの距離、また外野の形やフェンスの高さなど、そうしたものには正確な数値での
縛りがありません(国際試合を行うことができる球場の基準はあるが、それでも形までの縛りは
ありません)。だからこそ、あれだけ個性的なスタジアムが多くできるわけです。
同時に、野球は伝統的に「判定ミスも試合の要素」と考えられてきました。NFLやNBA、NHLでは
次々とビデオ判定が用いられながらも、野球界ではそうしたシステムがなかったのは、この考えが
一因だと考えれられています。また現在のコミッショナー、バド・セリグも、元来、その考えに近かった
と言われています。
しかし、今年の5月のあの日以降、次々と起こるようになったホームラン判定でのゴタゴタに対して、
セリグはFOXスポーツが言うところの「Fear」に襲われます。あのような判定がワールドシリーズで
起ころうものであればどうなるのか、というのです。それを言うのだったら、1998年のALCSで
起こった「神の手」ホームランはどうなのでしょう?と聞きなおしたくもなりますが。とにかく、
オールスターゲームでも白黒をはっきりさせるルールに変更させたセリグの考えです。
そして現在開催中のオーナー会議で、セリグは「どの球場でもビデオ判定の用意が整っている」と
まで言い出しました。最初の予定では、この8月にも導入するのではと言われていましたが、
現時点では、今シーズン中、あるいは、アリゾナ・フォール・リーグから導入とも言われています。
とにかく、2009年シーズン(もしかしたら来年のWBCでも)からはビデオ判定は行われます。
これは決定事項でしょう。
このルールの変更で言えることは、まず、これはルール変更であり、作戦の変更にはならない、
ということです。指名打者制度はどの選手を出すかという作戦の根本に影響を与えましたが、
ボールの行方は誰にも操作できるわけではないので、このルールが導入されたことによって、
チームの作戦がどうなるというものではありません。これが指名打者導入時と決定的な違いです。
もうひとつは、この制度の良し悪しはともかく、野球界はいまだにアメリカ中心なんだなということです。
オリンピック直前のタイブレイク導入も、国際野球連盟のアメリカ人会長からの提案でした
(この制度は試合の時間短縮を狙ったものと言われますが、一方でビデオ判定は時間を要する制度と
考えられているのが、また皮肉なものです)。アメリカの国技である以上、いまやアメリカが
世界を主導できる数少ない要素のひとつであっても不思議ではありませんが、「メジャーでは
ビデオ判定を導入したのだから、日本球界も導入すべき」という声が上がってしまうことが、
正直なところ、情けなく思います。世界的にはマイナーなスポーツとはいえ、野球界ですら、
発言権の低い、ルール導入、WBCの開始ひとつとってもアメリカに振り回されてしまう、
日本球界の競争力のなさと、視野の狭さを感じてしまうのです。
いずれにしても、ファンはビデオ判定を求めるようなホームランを求めていません。気分のいい、
どでかいホームランが出る試合を期待しているのです。もちろん、筋肉増強剤に頼らないものを。