そのさきへ -Deep Sky Blue version-

このブログは引っ越しています

[国際情勢短評]This Britain is so Great!

2011-04-30 09:08:12 | マネー&ポリティックス
英ウィリアム王子挙式 ダイアナ元妃の夢、再び幕開け(産経新聞) - goo ニュース
Special report: Royal wedding (BBC News)


テムズの川霧が消えた、かどうかはテレビからはわかりませんでしたが、テレビを通じても、
ウィリアム王子の結婚式は厳かかつ喜びに溢れるものであることはよくわかりました。
ここ2年ほど、イギリスは巨額の財政赤字に苦しみ、それゆえ国民の士気も下がり気味でした。
それに反比例するかのように、教育予算削減に反対するデモでの学生の士気は相当なものでしたが。

それはともかく、財政難の折の王室の結婚式だったため、世間では「ジミ婚」と囁かれています。
しかしそれは綺羅びやかさの有無で図っているにすぎず、テレビからはそのような雰囲気は一切
感じさせませんでした。それは、数多くのユニオンジャック、勘定できないほどの世界中から
集まったあらゆる人種の群衆、測定不能の新しいロイヤルカップルの幸せさ、そして何と言っても、
何ものにも替えがたいイギリス王室の威厳のおかげだと思います。

イギリスとその国民にとって、イギリス王室は最強のソフトパワー(もしくはある種のハードパワー)と
言えるでしょう。今回の結婚式は、それを知らしめるためにも非常に重要な式典でした。これを通じ、
イギリスは愛国心と団結力、英連邦のトップとしての地位を再確認し、同時にそうさせました。
もちろん、現在の王室は直接的に政治へ関与することはありませんが、「見えざる手」による影響力は
全く衰えていません。それは世界史の教科書を見ればわかるように、世界の海を支配してきたイギリス、
というよりその王室の力が、そう簡単には消え去るわけではないことを意味します。その点は天皇を
神と崇めていた日本とは違う点です(イギリスと違い、日本では天皇家の力が完全に衰えた時期が
あったことも忘れてはいけません)。イギリスの王室は、多少のヘマも犯しましたが、伝統的な力を
誇示し続け、かつそれを時代に合わせていくことで、その偉大さの継続を図っているのでしょう。

一方で、一般人にとってイギリス王室は最強のリアリティショーでもあります。特にウィリアム王子の
父親と「実の」母親には、華やかすぎた結婚式の後、様々な出来事がありました。夫婦仲の険悪化、
離婚、そして突然すぎる母親の死などの中でも、ウィリアム王子は自分を見失うことは全くなく、
自分の正しいことを正しいやり方で続けていきました(そして父親は新しいお妃を見出しましたが)。

同時に、イギリス王室自体も、その父親と母親のできごとをはじめとした数々のスキャンダルに覆われ、
またウィンザー城が火事になったりして、エリザベス女王が「史上最も不幸な1年」と形容せざるを得ない
事態にまでなりました。同時にこれらを通じて王室がパパラッチに開かれる一方、国民に対して口を
閉ざし続ける姿が、国民を王室から疎遠にさせました。

その凋落光景に歯止めをかけたのが、祖母でも父親でもなく、ウィリアム王子でした。自ら進んで空軍に
入隊しアフガニスタンへの任務に行ったり、ホームレスの気持ちを知りたいという理由で、ある冬の夜、
段ボールにくるまってホームレスと一晩を共にしたり、ウィリアム王子は王室だけでなく国民にとっての
見本として自らの正しい道を進みました。そして自らの正しい選択により、庶民からお妃を選びました。

こうしたできごと全てが、一般市民にとってはリアリティショーなのです。それは単なる王室への興味を
超えているとすら感じます。それどころか、王室は現実を超えたリアリティショーを常に提供してきたと
言ってもいいでしょう。そうでなければ、イギリス王室を描いた映画がアカデミー賞を獲得しない理由が
ありません。

なぜ世界はイギリス王室の結婚式にこれだけ盛り上がるのかわからないという声があったのも確かです。
1年に1回でも、4年に1回でもない(通常であれば)一生に1回しかない結婚式は誰にとっても大変重要な
できごとです。しかし王室にとって、イギリスにとって、そしてもちろん新しいカップルにとっては、
その重要性を測るにはどの尺度も合わないのです。そしてこの強いソフトパワーとリアリティショーは
まだまだ続きます。


最新の画像もっと見る