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[短評]縮むヨーロッパと広がる議論

2010-03-30 00:20:22 | マネー&ポリティックス
先ごろ、TIME誌がThe Incredible Shrinking Europeと題する特集記事を組みました。
この記事が出た頃は、EUがギリシャ救済問題でいちばん盛り上がっていた頃でした。つまり、
ヨーロッパが最も弱気になっていた時です。このような時期に、傷へ塩を刷り込むような記事が
組まれたのです。

内容は、まぁ見出しを見ればわかるように、ヨーロッパの地位が世界的にも低下しており、
一方でアジアの重要度が増している、というものでした。いかにもアメリカからの視点で書かれた
記事です。ちなみに、TIME誌は比較的アジアの成長を取り上げるのが好きな雑誌ではないかと
思います。

しかし、というより当然ながら、ヨーロッパの読者はこれに対して相当に怒りました。アメリカにあった
金融機関の破綻を端に発した今の世界同時不況の割を食った印象を受けるヨーロッパ人にとって、
アメリカの週刊誌に好き勝手なことを言われたまるか、といわんばかりです。政治界のトップクラスから、
市井の人までの意見の一部がEurope Speaks Backという記事で紹介されています。

正直なところ、TIME誌としてもこうした反論がヨーロッパから来ることに対しては予想範囲内だと
言えるのではないでしょうか。むしろ、TIMEはこうした意見が上がることを期待していたと思います。
そしてTIMEは見事に成功しました。それどころか、この記事を載せることで「さらなる議論を促す」
(encourage further debate)としています。

日本から見ていると、こうしたマイナスなイメージでもヨーロッパが大きく取り上げられたことは、
ヨーロッパにとってよかったのではないかと思います。TIMEをはじめとした海外主要メディアは、
今やもう日本について取り上げることはまずありません。

海外メディアの撤退ブーム:上杉 隆(ジャーナリスト)(Voice) - goo ニュース

この記事の後段ではLAタイムズやワシントン・ポストについて書かれていますが、TIME誌も昨年末、
六本木ヒルズの東京支局から専属記者が消えました。今は広告部門や顧客部門があるだけです。
ほとんどのメディアは近くても北京や上海、香港あたりから日本を眺めるだけになりました。

そうなると、これまでできあがった日本に対する固定概念だけで筆を進ませます。今の欧米メディアの
日本への印象といえば、20年以上改革が進まず、経済が停滞している、唯一の例外は小泉政権の
数年間だけ、この政権が終わったら、日本はまた変化の日本へ戻った、なかには変化を起こそうと
努力する人もいるのだけれども、日本ではそれも叶わない、というものです。欧米メディアから見たら、
日本は縮むどころか、もはや忘れ去られた存在、消えかかっている存在にしか映っていないのでしょう。
いや、消えているならば映りもしませんが。

だからといって、仮にTIMEが"The Incredible Banishing Japan"などという特集記事を組んだところで、
どれだけの日本人が反論できるのでしょうか。もしかしたらヨーロッパよりも日本の方が自信喪失が
ひどいように感じます。


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