そのさきへ -Deep Sky Blue version-

このブログは引っ越しています

[短評]システム障害に思う

2005-11-02 16:20:27 | マネー&ポリティックス
個人的なことですが、りしゃこちゃんが産まれる前から株式市場を見ています。さすがにまだ売り買いはしてませんでしたが、
あの頃はまだ当然インターネットなんて存在しないかようやく出てきた頃だし、デイトレーダーという言葉も当然ありませんでした。
まだ株=お金持ちという印象が強い頃です。

同時に、バブル崩壊後、平均株価がズルズルと下がる時代でした。まだ改革政党なんていう言葉とは程遠かった自民党が
ひねり出した案は、公共事業とPKO(Price Keeping Operation)でした。これで銀行の決算のお化粧をしていたのです。
この効果がどうだったかは今振り返れば歴然だと思います。

そして、当時の取引高はどんなだったかといえば、東証全体でせいぜい1億株程度です。バブル期と違って、景気は下がり、
株式市場は人為的な工作が加えられたこともあって、一般投資家や海外の投資家は完全にそっぽを向いていたのでしょう。
世間がお盆休みに入れば1億株を超えるのすら難しい状況でした。今では1銘柄で1日に1億株も取引されることがあるけれども、
それとは大違いです。

あれから時代が流れて、インターネットでの取引もあたりまえになり、また注文の手法も増えてきました。
そういたお手軽さと日本経済の上向き加減が相まって、最近は、というより日本もやっと、直接金融、
もっといえば株式の時代になってきました。最近は1日あたりの出来高が10億株を軽く超える日がほとんどといえます
(10億株を下回ると「低調ですね」とすら言われる始末)。

同時に、人の身振り手振りで株を売り買いしていた時代から(コンピューターでの取引が行われていた銘柄も
当然あったのだけれども)、完全にシステム構築された中での取引に変わりました。1日に10億株以上も動くとなれば、
それだけの処理能力があるシステムが必要になり、最近は特に株式に興味がある個人投資家や海外の投資家が
増えてきたこともあって、東証は10月にシステムの増強をしたのです。

しかし、その時の増強過程でミスがあったのか、昨日3時間もシステムダウンを起こしたのです。これに目ざとく
反応したのが批判好きな日本のマスコミです。自分の新聞社と同じグループ、もしくはつながりの強いテレビ局が
「ベンジョ」に乗っ取られるという経済の疎さを露呈していることを棚に上げて、「システム障害によって東証、
日本経済は海外からの信頼をなくした」と平気に言っている始末です。そうであるならば、なぜ昨日の90分間の取引で、
東証の中だけで2兆円も動いたのかを説明できないでしょう。むしろ、90分間でも2兆円が動くくらいに今の日本経済は
よいと見られているというべきではないでしょうか。

確かに昨日のシステム障害は明らかにミスです。昨日の障害で利益を得られなかった人もいるかもしれません。
しかし、昨日1日だけで日本経済がダメになるわけでもなく、むしろ昨日の事態を教訓にして、どのようにしてより
強固なシステムを構築するかこそが重要でしょう。もう1回同じ事態を起こしたら、いくら好調な東証、日本経済でも、
疑問符を与えられても仕方ないと思いますが。

もうひとつ、昨日の事態で明らかになったのは、あまりにも日本の経済が東証に頼りすぎているということでしょう。
「東証上場=いい会社」というイメージが世間一般には強いらしく、例えば昨日普通に取引がされていた
(それでもシステムが重かったらしい)ジャスダックは東証上場予備軍のような存在に見られがちです。
そうではなくて、本来は東証があって、ジャスダックはヘラクレスもあって・・・という形が望ましいのでしょう。
また最近は大証や名証に上場していてもぜんぜん取引がなくて登録料が無駄だからやめるという企業がかなりあります。
そうなると余計に東証への負担が増えてしまいます。今回の事態で、上場または登録する企業側も意識を変えるかもしれません。
同時に取引場間の企業の引っ張り合いがさらに激しくなっていくでしょう。

いずれにしても、取引場内でトレーダーが居眠りするほどの時代からは隔世の感を覚えます。今ではデイトレーダーは
市場が開いている間、トイレに行くことすらできませんから。


最新の画像もっと見る