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[MLB短評]Giant Killing ~2010 ワールドシリーズ 第1戦~

2010-10-29 06:32:09 | MLB
Ten-gallon splat: SF knocks Texas off a Cliff (MLB.com)
Unable to hit spots, Lee suffers first playoff loss (MLB.com)
Two much: Sanchez sets Series record (FOX Sports)


今年もワールドシリーズがはじまりました。そして今年もすべての試合について(出来る限り)語って
行きたいと思います。

2002年以来初の西海岸で行われたワールドシリーズでは、いろいろなことを思い出させてくれました。
まずは東海岸のプライムタイムに合わせて試合開始されるワールドシリーズにおいて、西海岸ではまだ
夕方の5時ごろ(夏時間)に第1球が投げられること。ここ最近は夜空と照明があるのが当たり前だった
ワールドシリーズで、曇り空でもあれだけ明るい中で行われる試合は新鮮でした。

もうひとつは、ジャイアンツの先発ティム・リンスカムであっても緊張をすること。どの偉大な投手、
スター選手であっても、ワールドシリーズに初めて出る時はその心理的な面の高まりと心臓が
締め付けられるような思いを抱えているのです。リンスカムにとりそれが顕著だったのは1回表、
リンスカムが3塁ランナーのエルビス・アンドラスを三本間で挟みながらも、何を思ったのかボールを
投げることができず、アンドラスを生かしてしまったところでしょう。試合後、リンスカム自身も緊張の中
マウンドに上がっていたことを認めています。それでも、レンジャーズはリンスカムからこのチャンスで
1点しか奪うことができず、試合の流れを一気にもっていくことはできませんでした。

また、2回表にはランナーひとり出したところでクリフ・リーを打席に迎えます。相手はバントをすると
わかりきっている中、最悪でもひとつアウトを取れるはずのところ、リンスカムとジャイアンツはリーが
バスターから強打し、2塁打になりました。アメリカンリーグの投手でも打つことをできるのだとこのとき
思い出したことでしょう。この2塁打がその後の犠牲フライでの1点を産みました。まだこの時点でも
リンスカムはいつものようなかたちではありませんでした。

そしてもうひとつは、ワールドシリーズではクリフ・リーであっても負けること。若干コントロールに安定感を
持っていなかったとはいえ、1回や2回にはワールドシリーズのリーらしい投球をしていました。2回裏に
ホアン・ウリーベから三振で3アウト目を奪い、淡々とマウンドからベンチへ向かう姿は、昨年のシリーズで
ヤンキーズを相手にした時を思い起こさせてくれました。

しかし、3回表にリンスカムとリーの立場が変わります。リンスカムが3回表を三者凡退で片付けた一方、
リーはエラーと四球によりランナーを抱えた状態で投球をすることになります。そこでジャイアンツの2番、
フレディ・サンチェスが2塁打で1点を返します。ちなみに、サンチェスは1回裏の第一打席、それは
サンチェスにとってワールドシリーズでの第一打席でもあったのだけど、そこでリーから2塁打を放っています。
そしてこの日3番に入ったバスター・ポージーがヒットで続き、リーから2点を奪いました。

リーは4回裏では三者凡退で切り抜けました。それはリーが立ち直ったのではなく、サンチェスがこの
イニングに打席に立たなかったからだというのはすぐにわかりました。5回裏、ひとりランナーを抱えたリーが、
またもやサンチェスにまたもや2塁打を打たれ逆転されます。ジャイアンツは、NLCSの第1戦、最強の右腕である
ロイ・ハラデイを相手にしたときには、コディ・ロスがハラデイを打ち崩し、その勢いでワールドシリーズまで
進出することができましたが、サンチェスが最強の左腕を崩す姿も、それに似たようなものを感じます。



一方、リーはポージーを外角のボールで見逃しの三振に抑えました。それでも不調の4番パット・バレルには
追い込みながらも四球。そしてこの時期に中軸を打っているとは数カ月前には想像すらしてなかったであろう、
5番のロスが、リーにしてはあまりにも早い時間に到達した100球目を、リーの背中スレスレを通るセンター前の
ヒットで逆転をします。そうなると、たとえマウンドに立つのがリーであったとしても、オードリー・ハフがさらに
ヒットで続くのも不思議ではありません。この場面でマウンドからベンチへ向かうリーの姿は、見た目には淡々と
したものでしたが、心理的には言葉にはできない無念さでいっぱいだったでしょう。リーは試合後このように
話しています。

Early in the game, I wasn't locating well.
I was a little erratic trying to find it. I couldn't be consistent.
It was a little bit of everything. I was up, I was down, I was in, I was out.
They were swinging the bat well. That's in a nutshell what happened.


リーはベンチからホアン・ウリーベの3ランホームランを眺め、ジャイアンツのビッグイニングが終わります。
これで試合の流れは完全に決まりました。

ただし、この後の展開は野球は9回まで行われることも思い出させてくれました。特に最終盤の8回裏と9回表に
どちらのチームの投手陣と守備陣はあまりよくありませんでした。レンジャーズはライトのウラディミール・ゲレーロの
2つのエラーから3点を奪われますが、一方でジャイアンツはリリーフ陣が打たれレンジャーズに3点を奪われ、
本来であれば出す必要のなかったブライアン・ウィルソンをマウンドへ上げざるを得ませんでした。このことは、
大量リードからきたジャイアンツの余裕による失点だったのか、それともレンジャーズの本来の底力なのか、
第2戦以降にその答えがあるように思われます。


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