そのさきへ -Deep Sky Blue version-

このブログは引っ越しています

[短評]Hero Captains

2009-05-10 07:47:31 | マネー&ポリティックス
Chesley B. Sullenberger - The 2009 TIME 100 (TIME.com)
Richard Phillips - The 2009 TIME 100 (TIME.com)


昨晩、今年1月にあった「ハドソン川の奇跡」を取り上げたドキュメンタリー番組を見ました。通常では起こりえない
高度900メートルでの「バードストライク」に端を発したこの奇跡は、そのほぼすべてを1人の機長の腕と冷静さの
賜物といえるでしょう。

チェスリー・サレンバーガー機長は、鳥の影響でエンジンが不能となった瞬間から、どこへ飛行機を着陸させ、
いかにして155人の乗員、乗客を助け、そしてニューヨークへの大惨事を回避するかをプロならではの冷静さで
考えていたようです。周囲にはほかの飛行機がたくさん飛行し、同時にほかの滑走路まで距離があることを
すぐに察知し、機長は滑走路代わりになりえそうなハドソン川を見つけました。飛行機の水上着水はこれでもかと
いうくらいのピンポイントでの正確度が必要とされる中、機長は飛行機をバラバラにすることもなくハドソン川へ
着水させました。そして、沈みかける飛行機の中、自分がすべての乗客が避難しきったことを確認し、機長は最後に
避難をしました。

9.11テロとその2ヵ月後にあった住宅街への墜落事故を経験するニューヨーク市民は、また新たな飛行機の悲劇を
目の当たりにするのかと思ったことでしょう。そうした不安と市民の注目の最中、機長は、本人の言葉を借りるなら
「超現実(surreal)」をやって遂げました。

その後時の人となった機長とその一家は、「英雄」という言葉の意味を考える機会を得たそうです。そのとき、
機長の奥さんが話したことがいちばん当てはまると、機長は話しています。

A hero is a person who makes a conscious decision to run into a burning building,
a person who places the safety of others above their own.


「ハドソン川の奇跡」の2ヵ月後、機長は改めてこの言葉の意味を噛み締める事件を、今度は一般の市民として
見ることになります。ソマリア沖でアメリカの商船が海賊に乗っ取られました。そこでリチャード・フィリップス船長は、
自らが人質となることで、ほかの船員と商船を守りました。この当時、アメリカのメディアは毎日のようにこの
海賊事件を取り上げ、時には船長が海賊の小さい船から逃げ出そうとしたが失敗した、なんていうことも報道されました。
しかし最終的には、アメリカ軍の凄腕スナイパーの活躍もあり、このハイジャックは終焉を迎えました。自らを文字通り
ささげたことですべてを守った船長は、当然ながら英雄としてアメリカへ「凱旋」しました。

アメリカには"HEROES"というテレビドラマがあります。超能力を授けられたキャラクターたちが世界を救うこのドラマは、
開始当初はマンガチックな描き方もあり、人気を集めていましたが、最近はその人気に陰りが見えているようです。
それも仕方ないことでしょう。アメリカでは、「超能力」ではなく「プロ魂」を持ち合わせている機長と船長がそれぞれ
危機を救ったところを、多くの人が目の当たりにしました。それは発生した事件そのものは、機長がいうところの
「超現実」かもしれませんが、彼らが行ったことは、通常職務の延長線上のことだったのかもしれません。そして、
今のような経済状況の中にあり、アメリカ人が求める「英雄」とは、もっと足が地に付いている人たちのことでは
ないかと思います。彼らはどちらも地上でその奇跡を起こさなかったけれども。



最新の画像もっと見る