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クレメンスの復帰

2007-05-08 14:13:23 | MLB
クレメンス ヤンキースへ電撃復帰(スポーツニッポン) - goo ニュース
Clemens announces return to Yanks(MLB.com)


東に卒業する娘あれば、西に帰ってきたオヤジあり。

メジャーリーグで最も殿堂入りに近い現役選手が、メジャーリーグで最もお金持ちなチームの
ホームスタジアムで、最も注目を浴びる形での復帰劇となりました。2006-07年のクレメンス復帰という
ドラマは、5月6日で一応の最終回を迎えて、今月末あたりには、恐らくロビンソン・カノーが
手放した22番のユニフォームで、メジャーリーグのマウンドに上がる予定です。

ヤンキーズ復帰、というより入団というのは、当然の流れと言ってしまえばそれまででしょうか。
レッドソックスとアストロズとの3チーム間でクレメンス争奪戦が行われていました。一方の
クレメンスは「優勝を狙うことができるチーム」に入ることが条件でした。レッドソックスであれば、
優勝も狙えるでしょうが、今の投手陣に入り込む余地はない、アストロズであれば、先発投手陣の
一角を担うことはできようとも(ただしシーズン開幕前からクレメンス抜きでもやっていく方向性を
模索し続けていたことも事実)、昨シーズンもそうでしたが、とにかく打線の援護がありません。

そこに来てヤンキーズは、ほぼ日替わり定食のごとく新しい先発投手が出てくるし、打線は今シーズンの
序盤あったほどではないにしろ、かなり頼りになってくれるはずなので、クレメンスとしては中途採用でも
やりやすい環境にあるはずです(今のレッドソックスと違い、気心知れたチームメイトが多いのも有利)。
おまけにヤンキーズは、「大至急」先発投手を必要としていたので、今手に入る先発投手といえば、
ということになったわけです。

そこで問題になるのは、(1)クレメンスがまだ先発投手としてやっていけるか(2)クレメンスが
ヤンキーズをプレイオフ/ワールドシリーズまで導くことができるか、ということになるでしょう。

(1)に関してはそれほど問題がない、と思ったところ、この記事に出るナショナルリーグのスカウト曰く、

・回が進むにつれてスプリッターの制御が落ちる
・投手有利(強打者の少ない)ナショナルリーグで投げていた

ことで、強打者チームの揃うアメリカンリーグ、特にイーストではやっていけないという意見もあります。
この時点で優勝へ向けて最も難しい道を選んだともいえそうです(早い段階での現役復帰を
提案したヤンキーズは、インターリーグが本格化する前にクレメンスを入れることが、シーズン中盤以降、
ディビジョン内で優位になると考えていたのかもしれません)。

(1)はクレメンス自身の問題とすれば、(2)はヤンキーズ全体の問題であり、最も強弱感があらわに
出る問題でしょう。自分の印象では、昨年もそうでしたけど、クレメンスひとりだけでは勝てない、
と思います。攻撃陣は多少の波はあるだろうけど、基本的に問題ありませんが、やはり投手陣、
特に中継ぎやマリアノ・リベラあたりが弱い今となっては、長いイニングを任せ続けることに不安が
残るクレメンスといえども、チームを引っ張るには難しいんじゃないかと思います。もちろん、
クレメンス加入でヤンキーズのフロントは、中継ぎの補強に集中することは可能です。しかしながら、
これもまた「大至急」なことです。それまで今の中継ぎ陣が耐えられるでしょうか。そうでなくとも、
特に21世紀に入ってから、ヤンキーズはディビジョン内で勝つことに注意を奪われ、ポストシーズンまで
手が回らないから、昨シーズンのようにあっけなく負けているので、クレメンス加入が10月末まで
効果があるものになるかどうかはわかりません。

それにしても、クレメンス復帰にスポーツライターの間でも強気派弱気派に分かれるほど、
強弱感が激しいのは、クレメンスが優勝が必須とされているヤンキーズに復帰したからでは
ないでしょうか(それにしてもジョン・ドノヴァンの「アストロズかレッドソックスとサインを
すべきだった」というのは結構過激)。注目度の薄い、クレメンスの地元アストロズに復帰しても、
ここまでの大騒ぎはなかったでしょう。むしろヤンキーズで復帰することで、ヤンキーズファン以外からは
「クレメンスにはがんばってもらいたいけど、ヤンキーズにはがんばってもらいたくない」という感情が
高まるように感じます。

少なくとも、クレメンスが上昇するか(ヤンキーズの成績は問わない)、クレメンスがヤンキーズを
上昇させるかのどちらかしかないと言い切りたいです。クレメンスがダメになる姿を見せられて、
シーズン後に引退を選ばざるを得ないというのは、ここまで盛り上げておいてという思いと同時に、
どことなく切ないものがあります。


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