私は、辺りを警戒しながら前に進んだ。
角に来ると、ゆっくり覗き込んで人が来ないか確認した。
誰も来ないとみると、足音をできるだけ立てないように、走り抜けた。
すると、それらしき場所にたどり着いた。
どうも人がいる気配がなかった。私は、ゆっくりと奥の場所に近づいた。
「なんで、探しに来たんだ! 帰り道はどうした?」
牢屋越しにガトーが怒鳴ってきた。
「大丈夫! 帰り道への鍵も見つけて入れた」
私は、拾った鍵をガトーに見せた。
「せっかく、リリーを帰らせるために、囮になってやったのに……」
牢屋の床も、壁と同じ石材。その床の上であぐらをかき、呆れた様子で私を見ていた。
「私ね……」
一瞬迷いが出て、言葉に詰まった。けど、思い切って言うことにした。
「私、ガトーのことが好きなんだと思う」
ガトーがなんてリアクションするか、怖くてガトーの方を見られなかった。
「しょうがないな……」
それを聞いてガトーの方を見た。やっぱり戸惑った様子で、苦笑いを見せていた。
「そこの壁に鍵がぶら下がっているだろ。それがここの鍵だ」
私は、ガトーが指さす壁に飛びついて、すぐさま牢屋の鍵を開けた。
ようやく牢屋から出たガトー。
「これで、無事に帰れるね」
「ああ、追っ手が来ないうちに行くか」
「そうだね」
右手の中に大事に持っていた帰り道の鍵、もう一度しっかり握りしめた。
「これで、ずっと会えなくなるね」
「……そうだな」
ガトーは浮かない表情だった。やっぱり、手助けは余計だったかな。
「ここでお別れね。見送らないでいいよ」
「オレは……。いや、ここで別れるか」
ちょっと寂しいけど、お互いの世界があって、そこでの生活がある。ずっと一緒に居たいけど、ここで別れなければならない。
「いろいろ助けてくれて、ありがとう。すごく頼りになった」
「リリーも向こうで元気にやれよ」
「うん……。また一人になってしまうけど、がんばってみる」
気持ちを落ち着かせようと、一呼吸をした。
「ごめんね。フィス君のこと。いろいろ聞くようなことをして……」
「それは、もう気にしなくていいよ」
「……ありがとう」
最後の別れくらい、泣かないようにぐっと耐えた。
「ガトーも元気に過ごしてね」
私は、ガトーと離れてしまう寂しさを耐えて、彼女から離れていった。
再び、警戒しながら帰り道がある扉を目指した。
でも、すごく素敵な気持ちでいっぱいだった。
今思えば、思いかげない出会いだった。
少年のようなガトーに危ない所を助けてもらい、しばらく共に生活をした。
一人っ子の私には新鮮に感じた。
ガトーはどっか遠くに住んでいる、お姉さんということで、ずっと大切な思い出にしておこう。
そして、衛兵に会うことなく、あの扉まで来られた。
「ふぅ……」
今度こそ、この扉を開ければ帰れる。そう思ったら緊張してきて、深呼吸をした。
ずっと握りしめていた鍵をはめ込み、回して施錠を解いた。
扉を開けると、あの光が大きく待ち構えていた。
この中に入れば、帰れる。そう思ったら、階段の上から足音が聞こえてきた。
それが徐々に近づいてきた。
「追っ手が来たかも……」
見つからないように、その場にうずくまった。
「リリー!」
「ガトー?!」
叫び声が間違いなくガトーのものと分かると、顔を上げて階段最上部を見上げた。
階段を駆け下りるガトーを待ち構えようと立ち上がった。
そして、階段を降りきると、ガトーは私を強く抱きしめてくれた。そして、言葉を発さずに、お互いに触れ合った。目を閉じると、柔らかいガトーの温もりを感じた。
ゆっくり目を開けると、お互い見つめ合った。
「ごめんな。別れておきながら、追いかけてきて……」
「なんか嬉しい。ガトーが追いかけてくれるなんて」
もう一度、抱擁した。これが最後だと思うと切ないはずなんだが、妙に安心感があった。
ゆっくりとガトーの顔を見上げた。
「私は、ガトーと一緒に過ごせて楽しかった」
ガトーは、私に見せたことのない笑顔で返してくれた。
≪ 第11話-[目次]
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角に来ると、ゆっくり覗き込んで人が来ないか確認した。
誰も来ないとみると、足音をできるだけ立てないように、走り抜けた。
すると、それらしき場所にたどり着いた。
どうも人がいる気配がなかった。私は、ゆっくりと奥の場所に近づいた。
「なんで、探しに来たんだ! 帰り道はどうした?」
牢屋越しにガトーが怒鳴ってきた。
「大丈夫! 帰り道への鍵も見つけて入れた」
私は、拾った鍵をガトーに見せた。
「せっかく、リリーを帰らせるために、囮になってやったのに……」
牢屋の床も、壁と同じ石材。その床の上であぐらをかき、呆れた様子で私を見ていた。
「私ね……」
一瞬迷いが出て、言葉に詰まった。けど、思い切って言うことにした。
「私、ガトーのことが好きなんだと思う」
ガトーがなんてリアクションするか、怖くてガトーの方を見られなかった。
「しょうがないな……」
それを聞いてガトーの方を見た。やっぱり戸惑った様子で、苦笑いを見せていた。
「そこの壁に鍵がぶら下がっているだろ。それがここの鍵だ」
私は、ガトーが指さす壁に飛びついて、すぐさま牢屋の鍵を開けた。
ようやく牢屋から出たガトー。
「これで、無事に帰れるね」
「ああ、追っ手が来ないうちに行くか」
「そうだね」
右手の中に大事に持っていた帰り道の鍵、もう一度しっかり握りしめた。
「これで、ずっと会えなくなるね」
「……そうだな」
ガトーは浮かない表情だった。やっぱり、手助けは余計だったかな。
「ここでお別れね。見送らないでいいよ」
「オレは……。いや、ここで別れるか」
ちょっと寂しいけど、お互いの世界があって、そこでの生活がある。ずっと一緒に居たいけど、ここで別れなければならない。
「いろいろ助けてくれて、ありがとう。すごく頼りになった」
「リリーも向こうで元気にやれよ」
「うん……。また一人になってしまうけど、がんばってみる」
気持ちを落ち着かせようと、一呼吸をした。
「ごめんね。フィス君のこと。いろいろ聞くようなことをして……」
「それは、もう気にしなくていいよ」
「……ありがとう」
最後の別れくらい、泣かないようにぐっと耐えた。
「ガトーも元気に過ごしてね」
私は、ガトーと離れてしまう寂しさを耐えて、彼女から離れていった。
再び、警戒しながら帰り道がある扉を目指した。
でも、すごく素敵な気持ちでいっぱいだった。
今思えば、思いかげない出会いだった。
少年のようなガトーに危ない所を助けてもらい、しばらく共に生活をした。
一人っ子の私には新鮮に感じた。
ガトーはどっか遠くに住んでいる、お姉さんということで、ずっと大切な思い出にしておこう。
そして、衛兵に会うことなく、あの扉まで来られた。
「ふぅ……」
今度こそ、この扉を開ければ帰れる。そう思ったら緊張してきて、深呼吸をした。
ずっと握りしめていた鍵をはめ込み、回して施錠を解いた。
扉を開けると、あの光が大きく待ち構えていた。
この中に入れば、帰れる。そう思ったら、階段の上から足音が聞こえてきた。
それが徐々に近づいてきた。
「追っ手が来たかも……」
見つからないように、その場にうずくまった。
「リリー!」
「ガトー?!」
叫び声が間違いなくガトーのものと分かると、顔を上げて階段最上部を見上げた。
階段を駆け下りるガトーを待ち構えようと立ち上がった。
そして、階段を降りきると、ガトーは私を強く抱きしめてくれた。そして、言葉を発さずに、お互いに触れ合った。目を閉じると、柔らかいガトーの温もりを感じた。
ゆっくり目を開けると、お互い見つめ合った。
「ごめんな。別れておきながら、追いかけてきて……」
「なんか嬉しい。ガトーが追いかけてくれるなんて」
もう一度、抱擁した。これが最後だと思うと切ないはずなんだが、妙に安心感があった。
ゆっくりとガトーの顔を見上げた。
「私は、ガトーと一緒に過ごせて楽しかった」
ガトーは、私に見せたことのない笑顔で返してくれた。
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