衛 恵悟 (まもり けいご)
彼は いつも青春の匂いがしていた
青くさい‘70年代の青春の匂いがしていた
シャイで純情で、繊細で不器用で、思いこみが激しくって
ワガママで、負けず嫌いで、強くって、弱くって、自分勝手で
一人が好きで、でも人恋しくって、寂しがり屋で、面倒くさくって、
優しくって、幼くって、可愛い奴だった
彼が就職していた京都時代、絵の道に進むんだ!と決め
そのために借りたというアパートへ行ったことがある
デッサンや油絵でゴチャゴチャの狭い部屋で芸術論をぶっていた
その数年後、やっぱり大学へ行かんと何もわからん、と
勉強を始め、同志社大学に合格したものの
家の事情で帰郷せざるをえなくなり挫折
20代の終わりから イラン へ2~3年、出稼ぎに行き
それ以降は写真をライフワークとして
晩年まで真摯に向き合い続けた
暇さえあれば日本全国、特に冬の東北地方撮影行は恒例行事で
チベット、ネパール、中国まで足を延ばしている
撮影行のエピソードは写真といっしょに、帰るたびに聞かされたものだ
心臓を患い手術の数年後、今度は重度の難病に罹り
写真を撮ることも叶わず、多くのカメラが
廊下に放り出されたままになっていたのが哀しかった
衛とは一緒に旅行をした、バイクでツーリングもした
青臭い無責任な芸術論やら小説やら映画やら旅やら
男やら女やら節操なく何でも話す というより、言い合い
それで喧嘩もよくした
何の連絡もなく、フラッと いつもの旅に出るように
寒い季節に 逝ってしまったらしい
ボクが油断してるあいだに
戻ってこれない所へ旅立ってしまったらしい
彼の見送りはしていない
逝ったのを、ボクは自分の目で確認していないから
今でも、好きなクラッシックの C D を片手に < ヨッ! > と
片手をあげ、ここへ顔を出すような気がしている
いつだったか
< 会いたい時に会えるのが友達だろ! >
なんて言ってたけど
会えなくなっても友だちか・・・・・