――いつもの北口駅前、早朝。
俺が来ると早速マルーン色の沿線私鉄に乗り込む。
俺が他の4人より遅れて登場したのは、ヘリクツを無しにして『犬が西向きゃ、尾は東』的なことであるが、今回は奢りは無しで代わりにハルヒは一つのカバンを俺に装備させた。
中身はカイクウが持っていそうな儀式道具とか、神社のお祓いなどなど・・・持ってきて何の意味があるのかこれぽっちもわからんものが押し込まれていた。こんなのどこで売ってんだ?また通販か?
「そんなんじゃないわよ。100円均一よ、100円均一。」
なるほど。たしかに、今手元にある呼んでなんのご利益があるかもわからぬ念仏がぎっしり書いてあるこの本の右端に「105円」と堂々と書いているな。
「で、これらはなんの意味があるんだ?」
「こういう旅行はね、まず気分から盛り上げないといけないの。『形から入る』って言うでしょ?」
文化祭あたりで長門からきいた気がするな。正確には長門のクラスのやつなんだろうが。ふと、読書をしている制服姿の長門を見る。文化祭後、あの魔法使い装束は見られなくなり、あの衣装は現在長門の家に保管中らしい。
「そういうのは、お土産とかで家に持って帰るもんじゃないのか?」
「だったら、これをお土産に持って帰ればいいじゃないの。」
少なくとも、こんなのをお土産に持って帰って喜ぶ家族には存在しないな、と思っていると
古泉の知り合いが提供してくれたことになっているホテルに荷物を置き、その後ハルヒの指示の元、2人と3人に別れて古都を散策することにした。例の印入り爪楊枝を用意し爪楊枝を引く――
結果、俺+長門のペア、ハルヒ+朝比奈さん+古泉のトリオとなった。
不機嫌オーラを金剛力士像に負けないくらい放出しているハルヒ達と別れ、俺と長門は近くの喫茶店に入り時間をつぶすことにした。喫茶店には何人か外国人がいるくらいなので広い席を確保し、俺はコーヒー、長門は抹茶パフェ(大)を注文した。
長門は一定のペースでパフェを食べている。
「そんなに速く食べたら体が冷えたり、腹壊したりしねぇのか?」
「大丈夫。このインターフェースの内外体温は常に一定。」
何度くらいだ?
「36,0℃。この惑星の有機生命体の体温とほぼ同値だと思われる。」
そっか。
「長門?」
「なに?」
よく見ると、長門の口にクリームが付いている。拭いてやるとするか。
「長門、ちょっと動かないでくれ。」
「了解した。」
長門の口の周りに付いていたクリームをとってやった。長門も可愛いとこもあるじゃないか。って何言ってんだ俺・・・。
「ありがとう」
そう少し控えめに答えた長門はパフェを食べる作業を速めたのであった。
その後は長門がハードカバーを取り出して読書を始めたので俺もそれに便乗し、店にある雑誌を手に取って読むことにした。
それから約1時間弱――
・・・・・・?
長門がじっとこちらを見つめている。なにかのアイコンタクトか?俺が訪ねる寸前に長門は言った。
「電話」
その約0.1秒後、俺の携帯電話が鳴き始めたのである。
「うおっ!」
どうせハルヒが用事であるんだろ、と思いながら携帯を開き誰からの電話か確認する。
電話の相手は以外にも古泉であった。
「どうも、古泉です。」
「そりゃわかってる。なんか用か?」
「少し困ったことになりまして・・・」
ハルヒが迷子にでもなったのか?
「大体的を射てますが少しニュアンスが違いますね」
いつものことだが、回りくどいぞ。古泉。
「実はですね・・・・・・」
「で、どういう事なんだ?」
――ここはさっきの喫茶店であり、俺と長門と朝比奈さんと古泉が在席している。
「正直申し上げますと、これは『緊急事態』です。涼宮さんが消えてしまったんですよ。」
そんなことをそのニヤケ顔で言うな。全く笑えんぞ。
「僕達『機関』の人間は常に涼宮さんの精神状態や居場所を把握できる能力を持っている。」
そうだったな。それがこいつの超能力的力だったな。
「ですが、今はそれができない。なぜなら――この時空に存在しないからですよ。」
ハルヒがこの世界にいないだと?それは一体全体どういうことだ?四月バカは半年前に過ぎてるぜ。
「嘘ではありません。ですが、完全にこの世界から消えたというわけでもないようなのです。」
どういうことだ。閉鎖空間で神人と遊んでんのか?
「それはありませんね。あの空間と神人に関しては僕はエキスパートですから、そのようなことはまず有り得ません。」
ますます意味がわからん。
「涼宮さんの居場所に関しては――」
そういいながら古泉は目線を上級生に向けた。
「そうなんですか、朝比奈さん?」
「はぇっ?あ、そうですね。詳しくは禁則で言えないのですが、涼宮さんはこの時間平面上から150年くらい前の時代にいるのですが、それが問題で・・・」
ハルヒが150年前にいることも充分問題だと思うのですが?
「キョン君、私が半年前に川原のベンチで言ったこと覚えてますか?」
そりゃ、もう。自分は未来人でパラパラマンガの話やらなんやらの。
「ううん、そっちじゃないの。」
朝比奈さんは溜息を一つつき、再び話始めた。
「『この時代から3年以上過去に行けない』って話です。」
!!
ということは、ハルヒはその3年前の壁を破って150年も前にいっちまったってことですか?
「たぶんそうだと思います。次元断層に亀裂か穴ができてその隙間に涼宮さんが入り込んでしまったようです。STCデータにも大きな破損データが発生してます。」
・・・。
「どちらにせよ、この時間に彼女を連れ戻さないといけませんね。」
「それではTPDDの使用許可を・・・もう来てました。」
「統合思念体に情報融合を申請。」
・・・・・
・・・・
いつの間にか俺が何も言わないうちに話が進む。だが、まぁ4人ともやろうとしていることは同じなんだ。
逆走したハルヒをこの時間に戻す。それだけだ。
俺が来ると早速マルーン色の沿線私鉄に乗り込む。
俺が他の4人より遅れて登場したのは、ヘリクツを無しにして『犬が西向きゃ、尾は東』的なことであるが、今回は奢りは無しで代わりにハルヒは一つのカバンを俺に装備させた。
中身はカイクウが持っていそうな儀式道具とか、神社のお祓いなどなど・・・持ってきて何の意味があるのかこれぽっちもわからんものが押し込まれていた。こんなのどこで売ってんだ?また通販か?
「そんなんじゃないわよ。100円均一よ、100円均一。」
なるほど。たしかに、今手元にある呼んでなんのご利益があるかもわからぬ念仏がぎっしり書いてあるこの本の右端に「105円」と堂々と書いているな。
「で、これらはなんの意味があるんだ?」
「こういう旅行はね、まず気分から盛り上げないといけないの。『形から入る』って言うでしょ?」
文化祭あたりで長門からきいた気がするな。正確には長門のクラスのやつなんだろうが。ふと、読書をしている制服姿の長門を見る。文化祭後、あの魔法使い装束は見られなくなり、あの衣装は現在長門の家に保管中らしい。
「そういうのは、お土産とかで家に持って帰るもんじゃないのか?」
「だったら、これをお土産に持って帰ればいいじゃないの。」
少なくとも、こんなのをお土産に持って帰って喜ぶ家族には存在しないな、と思っていると
古泉の知り合いが提供してくれたことになっているホテルに荷物を置き、その後ハルヒの指示の元、2人と3人に別れて古都を散策することにした。例の印入り爪楊枝を用意し爪楊枝を引く――
結果、俺+長門のペア、ハルヒ+朝比奈さん+古泉のトリオとなった。
不機嫌オーラを金剛力士像に負けないくらい放出しているハルヒ達と別れ、俺と長門は近くの喫茶店に入り時間をつぶすことにした。喫茶店には何人か外国人がいるくらいなので広い席を確保し、俺はコーヒー、長門は抹茶パフェ(大)を注文した。
長門は一定のペースでパフェを食べている。
「そんなに速く食べたら体が冷えたり、腹壊したりしねぇのか?」
「大丈夫。このインターフェースの内外体温は常に一定。」
何度くらいだ?
「36,0℃。この惑星の有機生命体の体温とほぼ同値だと思われる。」
そっか。
「長門?」
「なに?」
よく見ると、長門の口にクリームが付いている。拭いてやるとするか。
「長門、ちょっと動かないでくれ。」
「了解した。」
長門の口の周りに付いていたクリームをとってやった。長門も可愛いとこもあるじゃないか。って何言ってんだ俺・・・。
「ありがとう」
そう少し控えめに答えた長門はパフェを食べる作業を速めたのであった。
その後は長門がハードカバーを取り出して読書を始めたので俺もそれに便乗し、店にある雑誌を手に取って読むことにした。
それから約1時間弱――
・・・・・・?
長門がじっとこちらを見つめている。なにかのアイコンタクトか?俺が訪ねる寸前に長門は言った。
「電話」
その約0.1秒後、俺の携帯電話が鳴き始めたのである。
「うおっ!」
どうせハルヒが用事であるんだろ、と思いながら携帯を開き誰からの電話か確認する。
電話の相手は以外にも古泉であった。
「どうも、古泉です。」
「そりゃわかってる。なんか用か?」
「少し困ったことになりまして・・・」
ハルヒが迷子にでもなったのか?
「大体的を射てますが少しニュアンスが違いますね」
いつものことだが、回りくどいぞ。古泉。
「実はですね・・・・・・」
「で、どういう事なんだ?」
――ここはさっきの喫茶店であり、俺と長門と朝比奈さんと古泉が在席している。
「正直申し上げますと、これは『緊急事態』です。涼宮さんが消えてしまったんですよ。」
そんなことをそのニヤケ顔で言うな。全く笑えんぞ。
「僕達『機関』の人間は常に涼宮さんの精神状態や居場所を把握できる能力を持っている。」
そうだったな。それがこいつの超能力的力だったな。
「ですが、今はそれができない。なぜなら――この時空に存在しないからですよ。」
ハルヒがこの世界にいないだと?それは一体全体どういうことだ?四月バカは半年前に過ぎてるぜ。
「嘘ではありません。ですが、完全にこの世界から消えたというわけでもないようなのです。」
どういうことだ。閉鎖空間で神人と遊んでんのか?
「それはありませんね。あの空間と神人に関しては僕はエキスパートですから、そのようなことはまず有り得ません。」
ますます意味がわからん。
「涼宮さんの居場所に関しては――」
そういいながら古泉は目線を上級生に向けた。
「そうなんですか、朝比奈さん?」
「はぇっ?あ、そうですね。詳しくは禁則で言えないのですが、涼宮さんはこの時間平面上から150年くらい前の時代にいるのですが、それが問題で・・・」
ハルヒが150年前にいることも充分問題だと思うのですが?
「キョン君、私が半年前に川原のベンチで言ったこと覚えてますか?」
そりゃ、もう。自分は未来人でパラパラマンガの話やらなんやらの。
「ううん、そっちじゃないの。」
朝比奈さんは溜息を一つつき、再び話始めた。
「『この時代から3年以上過去に行けない』って話です。」
!!
ということは、ハルヒはその3年前の壁を破って150年も前にいっちまったってことですか?
「たぶんそうだと思います。次元断層に亀裂か穴ができてその隙間に涼宮さんが入り込んでしまったようです。STCデータにも大きな破損データが発生してます。」
・・・。
「どちらにせよ、この時間に彼女を連れ戻さないといけませんね。」
「それではTPDDの使用許可を・・・もう来てました。」
「統合思念体に情報融合を申請。」
・・・・・
・・・・
いつの間にか俺が何も言わないうちに話が進む。だが、まぁ4人ともやろうとしていることは同じなんだ。
逆走したハルヒをこの時間に戻す。それだけだ。