世情余情口端歌

吹雪の夜つらを側めりゃくねくねと
毛皮コートの袖とすれ合ふや
　　　　　　　　　　　　　　三泰

世情余情口端歌

冬の空ねずみ色して地を圧す
はるか日華は妖し龍の眼
　　　　　　　　　　　　　　三泰

世情余情口端歌

ちから尽きて看取る吾ただ茫然と
医師のことばは宙へ抛りたり
　　　　　　　　　　　　　　三泰

世情余情口端歌

遺伝子のいたずらなるかメタボ腹
つまらぬ時世の風格まがい
　　　　　　　　　　　　　　三泰

世情余情口端歌

列車より歌集抱へて降り立てば
初めての町に老師手を上ぐ　　　三泰