世情余情口端歌

清拭の妻へ捧げし句の紙片
　　時たちにける寝屋の白壁に

世情余情口端歌

寝付かれぬ夜にふと思ふ添ひ臥しの
　　母のたしかなるゆるき手拍子

世情余情口端歌

永訣の妻へ捧げし句の紙片
　　ふりたる壁に名残り宿らする

世情余情口端歌

手稲山初冠雪をうっすらと
　　ありあけ月の影のさむけさ

世情余情口端歌

日暮れても雪ン中駆けし腕白つ子
　　老い経たるいまは篭もりて加養の身