「とにかくしんどい」 酷暑の避難所生活、疲労の色濃く:朝日新聞デジタル
https://digital.asahi.com/articles/ASL7J56JVL7JUTIL016.html
西日本を襲った豪雨災害で、多数の家屋が浸水被害に遭った岡山県倉敷市真備(まび)町。300人以上が避難生活を送る市立岡田小学校で16日までの3連休、記者が継続取材した。長引く避難所生活と後片付けに追われる被災者は日に日に、疲労の色が濃くなっていた。
被災者の多くは避難所で朝食をとった後、罹災(りさい)証明書や仮設住宅の手続き、自宅の片付けなど生活再建の作業に向かう。この3日間は最高気温35度前後の酷暑となった。浸水した地区で乾燥した汚泥などの粉じんが大量に舞う中、作業に追われ、夕刻、避難所へ疲れ果てて帰ってくる――。
「とにかく、しんどい」
この避難所で過ごす国本恵子さん(74)は嘆いた。自宅は豪雨で2階近くまで浸水。片付けのためほぼ毎日、自転車で10分ほどかけて通った。ボランティアの手も借りて屋内から泥だらけになった家具や家電を運び出した。14日に目の不調を訴えて、医師から目薬を処方してもらった。「暑くて疲れます。周りでも『目がかゆい』と言う人は多い」と訴えた。
避難所では結膜炎や胃腸炎のほか、猛暑による熱中症の疑いがあると診断される患者も多い。
精神的な不調を訴える人も増えている。
無職の男性(81)は夜中に目が覚めて眠れなくなるという症状で医師から睡眠導入剤を処方してもらった。被災する前は、焼酎の水割りを少しだけ飲むのが日課だったが、避難所では酒は飲んでいない。男性は「他の被災者の目もある。ただ、これまでと違う環境で、精神的にしんどくなっている」と語る。
避難所の救護所を運営する日本赤十字社の担当者によると、被災当初は避難の際の外傷で受診する患者が多かった。しかし、この数日で精神的ストレスによる不眠を訴える人も多くなっている。担当者は「避難が長期化して体調を崩す人も出てくるので、環境改善にも力を入れたい」と語る。
「風呂に毎日入れないのはつらい」。避難所で生活する石井忠仁さん(75)は疲れた表情で笑った。浸水被害に遭った自宅に止めていた車2台は水没。14日には朝から自宅で片付けをして、夕方戻ってきた時には、はいていたズボンは泥だらけに。離れた場所にある仮設の入浴施設までの送迎バスは定員が限られる上、夕方の2便しかなく、この日の出発時間は過ぎていた。石井さんは「車がないと移動手段に困る。きょうは体を拭くだけです」。
広がる支援の輪
避難所の住環境や食生活については、依然不自由な状態ながらも、様々な支援で少しずつ、改善してきている。
15~16日には、市が配給した段ボールベッドのほか、世界的建築家の坂茂(ばんしげる)さんから無償提供を受けたプライバシー確保のための紙管と布でできた間仕切りが設置された。6日に避難所が開設されて以降、多くの人が体育館や教室の床に各自でマットを敷いて居場所を作り、雑魚寝をしたり、食事をしたりしていた。
小学6年と1年の2人の娘とともに避難所で過ごす女性(41)は周囲の視線が気になり、暑い中でも娘には肌の露出が少ない長袖や長ズボンを着せていた。「完全ではないが、ある程度プライバシーも守られるのでありがたい」と喜ぶ。
食事については、企業や団体の支援により改善してきている。開設当初は、おにぎりやパンが多かったが、今では朝、昼、夜とほぼ決まった時間に炊き出しがあり、この3日間では複数の種類から選べる弁当のほか、カレーや焼きそば、豚汁、そうめんなどが振る舞われた。また、食事とは別に缶コーヒーやかき氷、アイスが配られることも。日常を取り戻したいのはもちろんだが、会社員の男性(42)は「色々と出してもらえるので飽きない」と語った。
◇
総務省消防庁によると、16日正午時点で、西日本豪雨被害による避難所は16府県に224カ所あり、4877人が身を寄せている。(楢崎貴司)
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西日本を襲った豪雨災害で、多数の家屋が浸水被害に遭った岡山県倉敷市真備(まび)町。300人以上が避難生活を送る市立岡田小学校で16日までの3連休、記者が継続取材した。長引く避難所生活と後片付けに追われる被災者は日に日に、疲労の色が濃くなっていた。
被災者の多くは避難所で朝食をとった後、罹災(りさい)証明書や仮設住宅の手続き、自宅の片付けなど生活再建の作業に向かう。この3日間は最高気温35度前後の酷暑となった。浸水した地区で乾燥した汚泥などの粉じんが大量に舞う中、作業に追われ、夕刻、避難所へ疲れ果てて帰ってくる――。
「とにかく、しんどい」
この避難所で過ごす国本恵子さん(74)は嘆いた。自宅は豪雨で2階近くまで浸水。片付けのためほぼ毎日、自転車で10分ほどかけて通った。ボランティアの手も借りて屋内から泥だらけになった家具や家電を運び出した。14日に目の不調を訴えて、医師から目薬を処方してもらった。「暑くて疲れます。周りでも『目がかゆい』と言う人は多い」と訴えた。
避難所では結膜炎や胃腸炎のほか、猛暑による熱中症の疑いがあると診断される患者も多い。
精神的な不調を訴える人も増えている。
無職の男性(81)は夜中に目が覚めて眠れなくなるという症状で医師から睡眠導入剤を処方してもらった。被災する前は、焼酎の水割りを少しだけ飲むのが日課だったが、避難所では酒は飲んでいない。男性は「他の被災者の目もある。ただ、これまでと違う環境で、精神的にしんどくなっている」と語る。
避難所の救護所を運営する日本赤十字社の担当者によると、被災当初は避難の際の外傷で受診する患者が多かった。しかし、この数日で精神的ストレスによる不眠を訴える人も多くなっている。担当者は「避難が長期化して体調を崩す人も出てくるので、環境改善にも力を入れたい」と語る。
「風呂に毎日入れないのはつらい」。避難所で生活する石井忠仁さん(75)は疲れた表情で笑った。浸水被害に遭った自宅に止めていた車2台は水没。14日には朝から自宅で片付けをして、夕方戻ってきた時には、はいていたズボンは泥だらけに。離れた場所にある仮設の入浴施設までの送迎バスは定員が限られる上、夕方の2便しかなく、この日の出発時間は過ぎていた。石井さんは「車がないと移動手段に困る。きょうは体を拭くだけです」。
広がる支援の輪
避難所の住環境や食生活については、依然不自由な状態ながらも、様々な支援で少しずつ、改善してきている。
15~16日には、市が配給した段ボールベッドのほか、世界的建築家の坂茂(ばんしげる)さんから無償提供を受けたプライバシー確保のための紙管と布でできた間仕切りが設置された。6日に避難所が開設されて以降、多くの人が体育館や教室の床に各自でマットを敷いて居場所を作り、雑魚寝をしたり、食事をしたりしていた。
小学6年と1年の2人の娘とともに避難所で過ごす女性(41)は周囲の視線が気になり、暑い中でも娘には肌の露出が少ない長袖や長ズボンを着せていた。「完全ではないが、ある程度プライバシーも守られるのでありがたい」と喜ぶ。
食事については、企業や団体の支援により改善してきている。開設当初は、おにぎりやパンが多かったが、今では朝、昼、夜とほぼ決まった時間に炊き出しがあり、この3日間では複数の種類から選べる弁当のほか、カレーや焼きそば、豚汁、そうめんなどが振る舞われた。また、食事とは別に缶コーヒーやかき氷、アイスが配られることも。日常を取り戻したいのはもちろんだが、会社員の男性(42)は「色々と出してもらえるので飽きない」と語った。
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総務省消防庁によると、16日正午時点で、西日本豪雨被害による避難所は16府県に224カ所あり、4877人が身を寄せている。(楢崎貴司)
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