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江戸末期、庄内の平侍・井口清兵衛は妻を亡くし、幼い娘2人と老いた母親をなんとか養い暮らしている。仕事が終わると同僚との付き合いも断って帰るため「たそがれ清兵衛」と陰で呼ばれていた。ある夜清兵衛は、久しぶりに再会した幼なじみの朋江を家に送った際、朋江の別れた亭主に果し合いを申し渡され、木刀で打ち負かす。噂はたちまち城中に広まり、朋江も清兵衛に心を寄せるようになる。その頃、藩主の死による権力争いで城内は揺れ始めていた。
山田洋次監督が時代小説の匠・藤沢周平の小説を映画化した本作は、時代の波、運命の波を静かに見つめる侍魂を情感豊かに描いたヒューマン時代劇。清兵衛は、貧しさのなかで常に冷静に世の中を見渡し自分の芯を貫いていく。