
物心ついてから母のタンスに中に手を入れたのは初めての様な気がする。
少し緊張した・・。
どの箪笥の引き出しの中にも、パンパンに物が入っており、驚きと溜め息と何だか将来の自分の箪笥の中を見ているような・・・変な気がした。
(私も買い物が好きで、物が捨てられない・・・気をつけなくっちゃ・・・。)
38歳で後家になり、仲の良くない舅姑の中で二人の子供を育てあげた母。
お洒落が楽しみだったから、多くさんの着物や洋服、鞄、靴、小物・・。
それも捨てればいいのに「勿体無い」精神で数が増えたのだろう。
洋服ダンスから出してはミニファッションショウーで、品定めをする。
しかし80過ぎた母の洋服は高価でも、娘や姪の年齢には地味なのだ。
古い着物を姪たちは切って使うと話している・・・それを聞きながら、まだ切って欲しくないという思いがこみ上げ、私が着るかも知れないからとしまい込んだ。
それでも好みの合う物を選んで貰い大分タンスがスッキリした。
私は、生前に欲しい紬の着物を貰っていた。その時に、泥染めの大島は世話になった兄嫁にあげたいと話していたのでそれを兄嫁に伝えておいた。靴もサイズが合う兄嫁に全部託した。
好みが合わないかもしれないし、姑の遺品を嫁が喜んで使うのかしらと言う気もするけど、とりあえず行き先を決めておいた。
食事し休憩したら、開けっ放しのタンスを尻目に昔話や近況のおしゃべりに花が咲き、結局タンス整理は中断して終った。
翌日、少し地味かなと思ったジャケットを着て工房に行った。
鏡に映る自分の姿に、この服は母が私の年代に着ていただろうと思えた。
「あらあ、あんたにぴったりだわ~」と天国の母が言ってる気がした。
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