今回は別の漫画家さんの記事です(一応初出リストの続きをのろのろ書いてます)。
以下の文章は文の都合上敬称略です、すいません。
植田まさし。
1979年にいしいひさいちと双璧を成した漫画家だ。
彼の描く4コマは初期はいしいの難解さを大衆向けに砕いたブラックな味の大人向け漫画、中期から現在はみんな楽しめるシニカルで柔らかい口溶けの大衆向け漫画となっている。
代表作は「フリテンくん」「コボちゃん」「かりあげクン」など。
その4コマ漫画の二大巨頭の一人が今日、75歳になった。
そもそもかりあげクンを書き始めた時点(1980年)で33歳であり、昔の漫画家にしてはそこそこ遅咲きな方だと感じる
だが遅咲きな事で、あのような世間を超越した目線で眺める作風が書けたのだろう。
同時期に29歳だったいしいと同じく植田ものんき君などに代表される若者目線の漫画を描いていたが、いしいがバイトくんなどのようにガッツリ若者目線で破天荒なのに対し、どこか植田は中年目線で道徳的な所が感じられた。
一応のんきやかりあげなど主人公は若者であるが、キャラの役職の殆どがサラリーマンである為バイトくんやタブチくんなどのように豪快な行動はなかったように思える。
だいたいの行動範囲が会社、家のように決まっていた。
だが、そのようなスケールの小ささが植田が大衆に受ける要因となったように感じられる。
例えばバイトくんは舞台がまず漫画のセオリーである東京ではなく大阪で、なおかつ貧乏学生でその上留年してたり学生デモをしてたりと模範になるようなキャラ設定ではない。
当然、漫画のスケールも大きくいしいの漫画は比較的まんがマニア、コアな層に人気である。
だが、植田の漫画のキャラは同じく模範になるような行動はしてないが舞台も東京で話が展開されるところも殆どが会社か家または近辺の店であり、場所を離れても海だったり山だったりホテルだったりいずれも大衆に受けるものだ。
これらが合わさり漫画のスケールは庶民的で小さく(もちろん悪い意味ではない)、一般大衆に受けている。
この間もTwitterでコボちゃんの反応ツイートがバズっていた。
その小ささはやがて「コボちゃん」や「おとぼけ課長」と言ったファミリー向け漫画で濃縮され、今では大人向けの毒素はほぼ分解され完全に大衆漫画となり、いしいと完全に別のスタイルとなった。
そういう大衆を40年近く描き、とうとう75歳になられた。
75というと漫画家の方では長生きのように感じる、ましてやその歳でまだ複数誌に連載してるのもすごい(大抵は活動規模、頻度が縮小したり全く描かなくなっている)。
ましてや月に8ページ以上、週に4コマ2本(確か)、毎日4コマ一本執筆しているのである。
この歳でこの活動量はすごい、やはり「コボちゃん傑作選(中央公論社刊)」で述べた通り健康に気を遣ってるからだろう。
これからも体調の許す限り執筆を続けていって欲しい。
長文になってしまったが、とにかくおめでとうございます。
最後にTwitterの方にアップロードした私の描いた稚拙な記念イラストを置いておきます。