角田和夫 「ニューヨーク地下鉄ストーリー」
全編モノクロームのストリートフォトグラフィー。
1995年~2002年のニューヨークの地下鉄を撮影している。
9.11以降の難しい時期に撮ったと思われるものもある。
いわゆるソール・ライター的なあっさりした構図。
キャンディッドもあるが、撮られている人たちが楽しそうにしているものも多い。
地下鉄の汚い床が最高の質感を伴っている。フィルムはトライxかなー?
メッセージ性を孕んだ被写体を多く撮っていて、色んな意味でニューヨークらしい。
全体的に好きなトーンだ。くっきりしているが細部は柔らかい。
ノイズの乗りがよく、白はふんわり、黒は締まっている。
地下鉄で音楽を演奏する様子を多く撮っていて、スローシャッターも多い。
その他にも映画のポスターや動く列車を背景にして上手く処理している。
水平などはあまり気にしていないようだ。良い意味でゆるい写真も多い。
恋人たちや友人たちの親密な関係を、より近い距離間で撮っている。
何枚か同じテーマの被写体を続けて載せ、数枚でのブロックを構成している。
人々を近距離で撮ったものは、表情の切り取り方が豊かだ。
日本人がこの地で写真を撮るということはそれなりのリスクがあるはずだ。
それでもこんないい笑顔を写真に収めることができるというところがプロの技。
所々で混ざる無機質な無生物の被写体。壁、ゴミ、影のみなど。
モノクロだけではないコントラストが、写真集全体で構成されていた。
ここはニューヨークなのだ。