いつだってティータイム

~ なぎちゃんのつぶやき part 2 ~

遺失物からのきづき

2024-11-27 01:41:35 | まばゆいつぶやき(ひとりごと)
暖かかった10月が11月に入って急激に寒くなり、奥にかけてあったダウンコートを前に引っ張り出して見た時、前の冬に劣化した布から羽が飛び出て、下に来ていたセーターが羽毛だらけになったことを思い出した。

新しいダウンジャケット買おうと思い、ネットや広告などを眺めていたが、わずかな年金収入だけのわたしにとっては、結構な高額で、今までのようには買えないと思った。

ファストファッションの店は安くて助かるけれど、色々と腹立たしい噂もあったので、ずっと不買にしていた。しかしながら、今の経済状況を考えれば、そうも言っていられない。よく吟味して、割引になっている時を狙って買いに行くことにした。最初は、インターネットショップを眺めていたが、カゴに入れても、最後の一押しを躊躇してしまい、着用しようと予定した日に配送が間に合わなくなってしまった。

それでやむを得ず一番近い店舗に買いに行くことにした。いざ出かけてみると、その店舗には扱いがないとのこと。大型の店舗か又はインターネットショップになりますと言われた。仕方なく、さらに電車に乗って、少し遠くの大きな街まで出かけると、幸いにも狙っていた商品に無事出会えた。

セルフレジで会計を済ませ、手持ちのエコバックに入らなかったため、紙の手提げ袋を購入して入れた。
まっすぐ帰宅する予定が、途中、銀行のATMがあるのを見つけ、しばらくつけていない通帳記入をすることにした。
銀行を出て、地下のショッピングモールの化粧室に並んでいる時、ふいに荷物が少ないことに気が付いた。銀行のATMの上に買ったばかりのダウンジャケットを忘れてきてしまったのだ。おそらく時間にして10分ほどだが、急いで戻ると、そこにはもう紙の手提げ袋はなかった。
咄嗟にATMの電話を取って、銀行に忘れ物の問い合わせをしたが、届けは無いとの返事。
そのまま、地上への階段を上り、駅前の交番に直行して、警察官と話し、遺失届を書いた。
登録と控えの発行を待つ間、口調の荒い若い男性が交番に入って来て、指名の警察官がいるかと確かめていた。該当者がいないらしく、居合わせた警察官一人一人を品定めするように話してはいちゃもんを付けていた。もう日没過ぎて暗くなっていたし、交番はこれからが忙しく騒がしくなるんだな、お巡りさんは大変だなぁと思った。

それから交番を後にしたのだが、なけなしのお金を使って買ったこの冬の防寒アイテムを絶望的な状態で紛失してしまったことへのショックと悲しみと自分への怒りに苛まれていたので、トボトボと力なく歩いていたと思う。やたらに人に当たったり、舌打ちしてぶつぶつ言っているような人が目の前に現れたり、いつもと違う感覚が明らかにあった。

わたしの波動が下がっているからだ

そう思い、なぜこういう事が起こったのか、この後にこの状態をどうやって打破するか、と頭を巡らせた。

わたしが悲しんでいるのは物質を失くしたから。
物質はあるように見えて、実はないに等しく、まして本来はわたし個人のものではない。
自分のものであると信じていたから悲しんでいる。
だけど、本来無いものを失って悲しむ必要はないのだ。
仮にわたしの買ったジャケットを持ち帰った誰かが、それで寒さをしのぐことができるのなら、幸いなことではないか。

わたしは、「失う」という経験を通じてこれだけのことを考えて、落ち込むだけの自分をやめた。
このプロセスから一つの考えを学ぶためにこそこの経験はあったのだろう。

更に、この状況を打破するためには、周囲に引き寄せられて来た同じ周波数を持つ人たちが気分がわるくて遠ざかるくらいに自分の波動を上げればいい。
どうやって?

こんな感じに。

もう、この悲しみは不要だ。
この怒りも、不要だ。
丸めて黒い団子状にして、目の前に広がる深い湖の底に落とし入れるイメージを何回もした。
充分に味わったから、もう要らないのだ。

そうして、うちに着く頃には、胸の痛みは消えていた。
わたしは何も持たないからこそ何も失わない。失うことは、幻想だ。
理屈だけで納得できていなかったことが、経験を通して自分の中に落とし込めた気がした。

この冬は、羽毛がはみ出す古いダウンコートをまだ着ることにした。
それでたぶん困らない。寒さはしのげるはずだから。
コメント
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